2017年04月26日

小春日和の下、お友達が訪ねてくれましたよ!


TRIUMPH RIOT の角君が皆さんを連れて遊びに来てくれました!


彼が角君。今年の4月16日に山中湖で開催した「TRIUMPH RIOT」を主催。布引クラシックスも若干の協賛品を提供させていただきました。当日は、最高の天候で大成功だったそうで良かったです。・・・今日感じたんですがね、彼はえらいですよ、オイル交換500キロ毎にやってますって!うちの顧客もこんな人多いのですが他で聞いた事ない。松枝めちゃくちゃ気に入りました。「他のバイク乗り見習えよ!」そう言いたいですね。角君のブログはコチラ


続いて1957 T100の神戸の朱チャン。彼はブリティッシュランを主催している(のかな?)。関西のみならず全国走り廻っているようですよ。彼は神戸のあそこだから私とお隣りのご近所さんです。ふらっとブリティッシュランに参加した時にはよろしくお願いしますよ!朱チャンのブログはコチラ


お次、ファッショナブルな彼はフトシ君。西脇市でバーガークレイジーと言うハンバーガーショップをやってるそうですよ。東京で修行しての開業、実に美味そうですね。今度お客さんとツーリングに予定しましょう。その時はよろしくです!バーガークレイジーさんのH.P.はコチラ


そして、ペイントショップをやってる淡河のアキヒロ君。やれた感じのペイントがウリですね。一見モノ静かな彼ですが、中々の凝り性&頑張り屋さんだと見ましたよ。


近づいてみるとこんな感じ。興味ある人多いんじゃないですか?AOZORA WORKSさんのH.P.はコチラですよ!


そして、あたらしいトライアンフのスクランブラーかな?クルマやバイクにコーティングの店を西宮でやってる西宮の横チャン。T140かなんかのタンク着いてますね。私も芦屋なので地元の同志、親近感沸きます。実は4輪車も好きなので遊びに行きたいなと思いますよ。セラミックプロさんのH.P.はコチラ


やはり、最後はこのツーショットでしょうか。このふたり結構イカレテますね。今どきのイイ感じというやつでしょうか・・・!?また、皆さん是非遊びに来てくださいよ、お待ちしてます!

※このように、布引クラシックスはモーターサイクルに熱い想いを抱いているショップの方や一般の方の来訪をウエルカムしています。わたくし松枝と話したいなと思う人は是非気軽に遊びにいらして下さいね、では・・・(090-8466-9959アポくださいよ!)  

Posted by nunobiki_classics at 21:57お知らせ

2017年04月26日

2017第三回布引流英国車講座実技編オーナーズクラス開講致しましたよ!


「Be Cool!! Be Clever!!」 「走る事に重きを置く英国車上級者たれっ!」
布引クラシックスのオーナーたる者さっそうと英国車を乗りこなせなきゃなりません。その為には、なぜモーターサイクルは停まってしまうのか?知る必要がある。更に、起こり得るトラブルを未然に防ぐ為の手立てを知っている必要もあります。英国車上級者がクールにクレバーに愛車を颯爽と乗りこなす為の講義が始まりましたよ。 


これは点火装置、エンジンに火をつける電気装置です。スターターレバーを踏み込む瞬間からマスターキーを切る迄、ずっと正常に点火しなければモーターサイクルは走らない。 「これが点火装置か…何だか良く分かんないけど、これで火が飛ぶのか、フムフム…」 


次は充電装置。モーターサイクルは自分で発電して自分で消費する。要するに外部から電源はもらっていない。だからこそ、ちゃんと発電してないと走れなくなる。 「こんな丸いモノが廻って電気を起こしてたのか…フーン…」 どの部品も自分の手で持って感触や重さを感じます。


じゃぁ、電気装置の中で英国車上級者が必ずやらなきゃならない事ってなんだ?・・・そう、それはバッテリーの管理です。バッテリー液を足したり電圧を測ったり、配線を確認したり・・・ 「バッテリー?? こんな身近なモノが一番大切なモノだったんだ…」 12.6ボルトの原則! 「点火装置が機能するためにはバッテリーからの電源が必要なんだ・・・ヘッドライトを点灯させる為にもバッテリーが要るんだ・・・充電装置が正常でもバッテリーが悪けりゃ正常に充電なんかできないんだ。何から何まで正常なバッテリー無くして機能はしないのです。良いですか?電気装置が正常に機能しなければモーターサイクルは停まってしまう。ヒューズ1本が切れるだけでも英国車は停まってしまう。・・・それは山の中でひとり突然愛車が停まってしまうことを意味する。だからこそ、英国車上級者としてバッテリーの管理を絶対にやり抜くんだ!」・・・壊れそうにない電気装置でも、自分の怠慢次第で故障と隣り合わせなんだ、そしてやるべき亊はバッテリーの管理なんだと知りました。布引流英国車講座電気の話コチラ


次はキャブレター。きちんと整備された布引クラシックス製の英国車はキャブレターの調整など殆ど不要です。そもそも、頻繁にキャブレターの調整をするなんてレベルの低い車両を布引クラシックスでは作ってません。それは各所の状態が正常でないから、エンジン、点火装置、勿論キャブレターもしっかりと整備していれば一度決めたセッティングを変える必要は殆どありません。 視点を変えましょう・・・英国車上級者としてやるべき亊は 「スパークプラグの温度を高く維持する事だっ!」 ・・・ 「はっ?なんだそれ?」 要するにキャブレターを気にするよりも自分のスロットル操作を磨けっ!こういう事です。


皆さんは既にある程度の経験が有り自身に満ちています。「キャブレター?ドーンとこうやって開けりゃいいんだよ・・・」国際A級ライダーのように言ってくれます。しかし、皆さんは下手クソです。英国車の走りの半分も生かせていません。


これは、キャブレターを後方から見た絵。皆さんが直接操作するスロットルボディーがベンチュリーの内部に鎮座します。このスロットルボディーの位置・・・その開け方。これこそが古いモーターサイクルの肝です・・・


これは布引クラシックス特製スロットル観察マシーン! 「俺って一体どんな風にスロットル開けてんだ?」 それを自分の手と目で確認致します。合わせて頭に入れる大切な事とは・・・燃焼効率の悪い、燃焼温度も上がらない我が古臭い英国車のエンジンは、高効率、希薄燃料で高温燃焼する現行車のエンジンの何倍も難しいモノなんだ!・・・上手に操作したつもりでもまだまだ足りない。上手に上手に更に上手にならなきゃ一人前にはなれない!日々修行のようなものなんだぞっ!こう頭にインプットします。


「ブォーーーン!・・・ブォーーーン!・・・」目をつぶってイメージすると自分の思っている感じと随分違う。「アイドリングから発進して・・・ブォーーーン!・・・」 プロダクションレーサーの氷見氏がイメージします・・・ 


BMW R50の山田さん 「オーッ!こうなってんのか!おもしれーっ!」 「へーっ・・・意外なもんだなぁ…」 「気化性能の低いアマル社製キャブレターだからガバガバッ開けちゃいけない。出来るだけ絞って絞って狭く開けて、時を待ってズドーンと開ける。燃料を出来るだけ薄く高温に燃やす、スパークプラグの温度を出来るだけ高く保つ事!頭に叩きこめ!・・・」 これからの走りにとっても役立つ時間となりました・・・布引流英国車講座キャブレターとスパークプラグの話コチラ


更に次はオイルの話です。もう皆さん大好きなネットの知識は捨て去りましょう。他人の言う話などもう聞かなくても良いです・・・マルチにシングルがどうの?鉱物系に化学合成がどうの?・・・そんな話ももう不要です。


これは布引クラシックス特製 「正しい英国車オイル学、習得マシーン!」 四角いのがピストン、板がシリンダー壁です。では先ず、左側を手で持って擦ってみます。因みにオイル無し、空で擦ります。「ギーッ!ギーッ!・・・ジャリジャリ!・・・」 バイク好きが最も嫌いな音がします。


そして右側です。オイルを垂らしてピストンをそろっと載せました。すると「スーッ」とピストンが勝手に動く!オイル無しとオイルを垂らした状態のこの動きの違いにぴっくりです!


次に、左がシングル50番。右がマルチ20W50のオイルを垂らしい挑戦・・・ 左は「グンッ・・・グンッ・・・」 右は「グッ・・・シュルシュル・・・」 この違いは歴然。 


彼は1964T120Rの石原さん、「オーッ!違うーっ!」 強く押してもガンとその場を逃げないシングルグレードオイル。スッス、スッスと横に移動するマルチグレードオイル。その金属どうしの距離感の違いに全員驚きが・・・


更に、実物のシリンダーにピストンが入っています。左にはシングル50番、右にはマルチ20W50を塗布。各人がそれぞれコンロッドを持ってピストン運動させてみました・・・「重てーっ!」 高フリクションエンジンの我が英国車のエンジンってこんなに抵抗が有るんだ。現行車の低フリクションエンジンとの違いに先ず驚く。 そして、右側を押すと「軽い!全然違うーっ!」 シングルオイルの隙間に留まる力強さと、マルチオイルの逃げの速さを身を持って体験。低速走行時のシリンダー背面での過酷な油膜切れ症状にどう立ち向かえば良いのか・・・自分の目と手と感触で再認識致しました。布引流オイル学 Vol.1Vol.2Vol.3
オイル必要な方はコチラ


次は、さりげなく格好良さを演出するセンタースタンドの掛け方です。ご存知のように古い英国車のスタンド類とは衝撃により摩耗変形が簡単に起き、最終的にその機能を失う、非常に貧弱に出来ています。ですから、丁寧に扱うことがこの世界では常識なのです。



各人のエンジンの始動の仕方も合わせてスタンドの掛け方をも指導。センタースタンドは持ち上げる時よりも止る時にこそ力を入れる。そっと持ち上げて・・・グッと力を入れてそろりと降ろす。これが上手なセンタースタンドの掛け方ですよ。


次に、意外に下手なのが車体の取り回し。英国車上級者として駐車スペースでオロオロするなどもっての外、サッサッサッと移動させたいもの。要はバランス感覚と経験。危険のない範囲で積極的に練習してみる事も必要ですね。更に理屈を補てん。「ハンドルを右に切ると車体は急に右に傾くぞ、ハンドルを左に切ると車体は急に左に傾くんだ。特に体から離れる右に切る時には足腰を安定させて慎重にやろう・・・」トラユニット650の岡本さんがトライ中ですね。


次はパティシエLENAさん、やはり力のない女性には辛く危険な局面が多い。このユニット650のトライアンフはそれでもかけやすい部類。車種を選ぶとき、格好良さも大事だけれど扱えるかどうかの方が大事なんだな。


センタースタンドを降ろす事も女性には一苦労だ。車体の横に立って格好つけるよりも、ブレーキに手をかけこうして座って降ろす方が転倒の危険性が少ない。又、止める場所の勾配にも気を配らないと絶対に押せない羽目になる事もある。そんな時は「すみません、手伝ってくれませんか?」って言えるのも女性の特権。笑顔を添えて大胆に頼めるようになるって事も上級者のテクニックなのかな?


そんなこんなであっという間に日が暮れてしまいました。本日の参加者の紹介です。向かって右側から1964T120Rの石原さん、続いてプロダクションレーサーの氷見さん、お隣はBMW R50の山田さん、続いてトラユニット650の岡本さん、そしてBSA A65のパティシエLENAさんです(美味しいパウンドケーキご馳走様でした!)。で、最後はわたくし松枝です。皆さんお疲れ様でした!
合わせてこちらも是非ご覧ください。布引流英国車講座上級者編その1その2その3

参加者の皆さんには布引流英国車講座限定オリジナルTシャツをお持ち帰り頂きましたよ。背中側。


こちら胸側です。このように布引クラシックスでは各回ごとに布引流英国車講座限定品を製作しています。今回は夏をにらんで白いTシャツにしてみました。次回の秋には長袖Tシャツ又はトレーナーを作ってみようかなと考えています。お楽しみに!


今日紹介した以外にも色々な知識や情報をお話ししました。英国車上級者になるって事は何も特別な事ではありません。ビギナーとの違いはそれらを意識しているかしていないかの違いです。今日、初めて手にした電気部品や初めて感じるオイルの違い。車体の取り回しやセンタースタンドの掛け方。普段出来るようで出来ないこうした事の練習はきっと皆さんの為になって行く事でしょう。是非、これからも英国車乗りを引っ張る立場で役立てて頂きたいものです。
で、今日こうして遠くから訪ねて頂いた皆さんを見ながら松枝も想いが強くなりました。英国車上級者として必要なことってなに?その答えが新たに見えて来た。それは、たくさん走るって事!。ガレージに止めているだけじゃ何時まで経っても上手くなれる訳がない。私も無性に走りたくなりました。今年は走りたい。もっともっと走りたい!今年もめっちゃくちゃ走ってやる!そんな思いに駆られましたよ。皆さんも是非々たくさん走ろうではありませんか!では・・・
2017.4.23 布引クラシックス 松枝

感想を頂きましたので紹介したいと思います。

コマンド プロダクションレーサーの氷見さん
「松枝さん先日はありがとうございました。今回もまた為になる話盛りだくさんで楽しかったです。特にプラグの温度を高く維持するためのスロットル操作、とても勉強になりました。実践あるのみですね!しっかり走り込みたいと思います。また布引ツーリング、企画よろしくお願いしますね!」

BSA A65 のLENA さん
「オイルの体験コーナー。触って感じると分かりやすいです。オイルって大事、シングルオイル?…なるほどーふむふむ…
エンジン止まったトラブル編。 なにも出来ないかもしれないけど、知ってるのと知らないでは焦り度が違う。考えるべきポイント押さえておくこと大事だと。 整備がしっかりされてるバイクに乗ってる皆さま、あまりトラブルなさそうなところはさすがですっ
いちばん楽しみにしていた最後のコーナー!実際にトライアンフに触れて、跨って❤︎ ドキドキわくわくっ初めての私はとても緊張と興奮にまみれておりました。 身をもっての体験がとても分かりやすく、すーっと体に入って理解できる感じで良かったです!」

1964 T120T BONNEVILLE の石原さん
「講習会ありがとうございました!旧車の要であるキャブ、電装系をよく知れた1日でした。古いアマルのクセ。そこがまた楽しく感じれるように乗りたいと思いました。エンジンオイル。マルチ、シングルの違い、使い分けについても身をもって体験できたのでよかったです。次回も楽しみにしています!」

ユニット650(詳細忘れました!)の岡本さん
「今日もありがとうございました。センタースタンドをかける事にも拘るのが英車にカッコ良く乗るコツですね、be coolを目指します。」

お知らせです・・・次回の布引流英国車講座実技編最終回は「身につけようクレバーな英国車走行術‼」
「俺の走り方って実際のところ、どうなんだろう?・・・」 全員愛車に乗り私と走ります。そして、各人の走りを徹底チェック!写真に動画にタンデム走行で一段上の英国車走行術を松枝が伝授しますよ。お楽しみに!
  

Posted by nunobiki_classics at 00:06布引流英国車講座実技編

2017年04月05日

1964 TRIUMPH T120 BONNEVILLE レストア作業報告


これからの高速化時代を見据え、プリユニットモデルに見切りをつけたトライアンフ社はニューモデルへと舵を切る...時に1963年、エンジンを一体化したいわゆる「ユニット650」の誕生だ。一見順風満帆に見えるその門出とは?更に現代に於いて意味するものとは?・・・皆さんと共に見て行こう…


ある日、捜していた1964モデルがあると連絡が入る。モノはそれなりだがこの年式では選んでいる暇はない。市場に出回る台数が極端に少ないアーリーユニット650では先ずは押さえる事が先決だ。


現地での評価は「Great Condition!」、こちらで言うところの「極上車」だ。それは日本の中古車で言うモノとはニュアンスが違う・・・「まぁそれなり・・・」の意味。本場欧米に於けるクラシックモーターサイクル界の常識だ。


製造から半世紀、放置される時間も桁違い。フロントフォークのシールホルダー内部を覗く…この絵の意味が分かるだろうか?


フォークを一旦沈めると上がらないのはそれだけが原因じゃない・・・サイズの合わないブッシュを強引にかち込んである亊にもよる。丁度のサイズに削ってやる。


只、古いモーターサイクルのサスペンションに現行車の様な精度を求める事はナンセンスだ。車体全体として全く面白味の無いモノになってしまう。精度の低さ、作動性の悪さ…そうしたものが相まってクラシックモーターサイクルの味を醸し出す。


最早、レストレーションではステンレス製のスポークに替える事が定石となった。けれど出来る事なら当時のモノを後世へと継承したい。赤く輝くステンレスよりも剥げた亜鉛鍍金の強烈な凄みを知るべきだ。


リムも同様に一旦分解しきれいに点検洗浄する。ここで注意すべき点はみだらに再メッキを掛けない事だ。少しの傷や薄くなった表面に神経質になるよりも、ずっと使われて来たその表情を時代の粋として受け止める事の方が大切な事なんだと知らなきゃ一人前とは言えないよ。


ミドルに使う年式違いのドラムを元のモノに戻してやる。今回は幸いにも当時モノのドラムが手に入った。それも新品だなんて笑ってしまった。


私が嬉しいのはベアリングについた当時のグリスだ。「おーっ!50年前のグリスかっ!・・・」一度も路上を走る事なく変質する、当然の事ながら潤滑材としては使えないけれど、運んで来てくれた当時の空気感だけで一日幸せになれたんだ…


次はエンジンだ。全てを剥ぎ取り内部を確認する。まぁいろいろ有るのは致し方ないが、なんの不具合も無ければ有難いと思うのが本音だ。


しかし、トライアンフのケースは良く割れる。薄い肉厚だからこうしてクラックが入る。更にこのエンジンの場合、殆どに亀裂に欠損がある。全てのメネジを手直しするなんて、こりぁ大変なんだよ…


頑固に外れないカバーを取り外すと以前に何処かで直した跡がある。左2本、明後日の方向を向いているスタッドボルトに遭遇した時、皆さんなら一体どうする?…


このヘリサートの立て方ではこの穴はもう使えない。一旦削り取りアルゴン溶接で肉盛りする。それも出来るだけ外部から修復の跡が見えないように心掛ける…


そして、エンドミルで面を慎重に削り取り・・・


慎重に確認した位置に下穴を開けた後、ヘリサート用のタップでネジ切りを行う。何れの場合も直角と強度の確保がポイントだ。


先の写真と比べて欲しい、スパッと角度が出ているのが分かるだろう。今やどこでもヘリサート加工をやる時代だが、作業者によるレベルの違いが有ると知るべきだ…


その上で体裁の良さにも配慮する。こうしたボルトナットの類を総じてファスナーと言うが、こうしたモノこそが質の高い整備に配慮すべきモノ。ステンレス製に交換されたエンジンはそりゃぁ輝き美しいだろう。しかし、古い亜鉛鍍金の残るナットで組まれたエンジンを作る事は、本来私が目指すべき道なんだ。


オイルラインを洗浄しバランスを取る。シェルは慎重に選択しメインベアリングも万全を期す。トラらしくガツーンと廻ればそれでいい?・・・そんな低次元な話しとはさよならだ。ユニット650としては古典的な廻り方をするこの時代のクランクがアーリーユニット650の粋なんだ。


インレット、エキゾースト、双方のカムにタペットも完璧に仕上げる。互いの接触面は美しく輝き、これからの長き使用に絶対的な安心感を与える。ここはこうしたエンジンの肝に当たる場所。エンジンの寿命にも大きな影響を与える大切な部分だと言っておく。


トラのヘッド廻りは弱くヘタリが早い。四つのガイドを交換しシートカットを施す。バルブステムとの擦れ具合も強過ぎず軽過ぎず丁度の塩梅に持っていく。更にシートの当たり幅にもきちっとさじ加減を決める。


ピストンは新しく、各クリアランスも私なりのさじ加減だ。この辺りの値を軽く見てはいけない。二つしかないロングストロークエンジンではその違いがてき面に出るから尚更のこと自分の値を持つべきだ。


重い鋳鉄製のシリンダーに銅製のヘッドガスケット・・・性能よりも絵柄を重視する事もある。それは絶対に外せない英国車の粋だからだ。


この時代のシフト操作とはトライアンフを語る上で特徴的で、その意味を知るべきだ。「必ず理解して走るべし!頭を使って走るべし!」それがトラ使いへの第一歩だ。


キャブレターは、1964から389となる。このモノブロックキャブは1964年製造当時のモノだ。それはそれは調子が悪かった。黒煙を吹きスパークプラグは黒くエンジンの始動も困難、アンチモン製のボディーは当然の如く既に寿命が過ぎている。「クッソー意地でも直してやるっ!」こうなったら根性論だ。


そして、快調になったキャブのフロートチャンパーに着く3個のスクリューは当時レーシングとしてオプション設定されたモノ。で、このワイヤーロックを見て欲しい。現代では2本を撚線にしてクルクル巻いて使う。けれど私はここをわざわざシングルで巻いている・・・なぜか?そう、これが時代の風情。この頼りない景色こそモノブロックの粋なんだ。(因みにこのベロシティスタックはオーナーからのリクエストだ。)


ここで1964の特徴的な箇所を解説しよう。これはリアのブレーキのロッド廻り。これがリアのショックアブソーバーの外を通るのは1963と1964だけのモノ。後のモデルはずっと内側を通るけど、それでもこれが格好良いと言い切って欲しいんだな。


この一番下のステイは先代から続くスタンドの機能を兼ねるもの。要するにダートを走る時代だからパンクが多い。すると中央のナットを緩めるとこのステイがタイヤを浮かせるスタンドに早変わり。これも1964で最後となる。こうした事も知っておくと楽しくなる。


これはご存知スミス社製の通称グレイフェイス。今までクロノで見辛いものが「ズーーンッ!・・・」と連続的な動きになり評判は上々。ユニット650での元年が1964年だと知っておこう。


1964ではこのシンプルでスリムなスロットルラバーが正式だ。そして、そのスロットルホルダーはアマル社製で開度は90度となる。これが運転操作を難しくしている。緩慢なモノブロックキャブレターを微調整しながら走らせるのには90度は狭すぎる。「スロットル操作が大切なんだよっ!」とウダウダ言う私の真意がここにあるんだ。


なんだかんだと時間を要し1964ボンネヴィルは完成した。電装系統を含め多くの作業を経て完成した。程度の良いモノが極端に少ないグリルドバッヂモデルに簡単に手を出すな。下手なプリユニットモデルよりも資金が必要なんだと皆さんには言っておきたい。そして各部を点検し明日はいよいよ試運転だ。


新規検査に登録を済ませ試運転に出掛けた。しっかりと暖機運転をおこない慎重かつ大胆に走らせる。 「ズバッバッバッバッバッ・・・チヤッ・・・ズバッバッバッバッバッ・・・」 


走りながら考えるが・・・今回の仕事は私として全く釈然としていない・・・そもそも私は金儲けだけの為に仕事をしている訳じゃない。一度しかない自分の人生の大半を占める仕事に於いて誠心誠意努力する事を目的としている。


ある意味専門性の高い英国車の世界では暗黙の「ルール」がある・・・作り手は顧客の事を鑑み親切丁寧に高いレベルの仕事をやる・・・客は古い機械に歩み寄ると共に高い技術を持つ者を敬い感謝の念を持って事に当たる・・・その上でお互いをリスペクトし強い関係を築き上げて行く・・・これが英国車の世界だ。


しかし、言わせてもらうが最近の客の質のなんと低い事か・・・(同業者なら同感する者が多いだろう) 現行車の如く「当たり前感」が甚だしく、感謝の念など微塵もない。インジェクションモデルの如く365日快調である事が当たり前だと思っている・・・何が有ったか明言は避けるが、物事に感謝する気持ちの無い者は如何なる客であっても絶対に仕事は受けない。それだけは言っておく・・・    2017/4/5 布引クラシックス 松枝

試運転の詳細
一般道走行距離・・・・・・316.1km
高速道路走行距離・・・・・20.9km
総走行距離数・・・・・・・・337.0km
使用ガソリン量・・・・・・・・・11.8L
燃費・・・・・・・・・・・・・・・・・・28.5km/L





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Posted by nunobiki_classics at 20:53作業完成報告トライアンフ編