2019年04月03日

1970 NORTON COMMANDO 750S 神戸市M様 納車です。

1970 NORTON COMMANDO 750S 神戸市M様 納車です。
ノートンコマンド750S・・・それは悲運なサラブレッド・・・彗星の如く現れ消え去った眩い名馬・・・1970年代に青春を過ごした我々の手の届かない憧れだったんだ・・・

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1969年の春から僅か15ヵ月間のみ生産され、その生産台数三千台、現存数は一千台を切ると言われる750S。その殆どがレプリカである中、本物の750Sを確保する事はコマンドに精通する私のプライドだ。

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コマンドのクランクシャフトは三分割で右下の大きなモノが中央に位置するフライホイール(振り子車)、単体で5キロを超え総重量約9.5キロ。更に重さの偏る360度クランクだ。

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現代のツインエンジンでは必ず中央部にも支持があり3個以上のメインベアリングが強固に保持する。ところが、このように側面に二個では大きく不利になる。

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当時の英国車のシリンダーは鋳鉄製故に熱の伝導率は低く夏場は辛い、その重量は操縦性にまで大きな影響を与える、現行車で言うところの悪影響だ・・・

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コマンドのシリンダーはブラックカラーだと一般的に認識されている。けれどコマンド通としての750Sではシルバー色を守るべき。それは、高性能化されていくコマンドに置き去りにされたアーリーコマンドの意地。虚弱なイメージが拭えないこのシルバー色はアーリーコマンドオーナーの声の届かない少なからずの抵抗なんだ。

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言うまでもなくシリンダー近辺で最も仕事量の多い箇所はピストンリングだ。爆発の圧力を受け止め、潤滑を維持し、熱を瞬時に伝えるなど過酷な環境の下、多くを要求される。

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これは装着時の各リングの模様だ。ここに僅かな隙間が見えると思う・・・円周上のみならず上下に前後に存在し、エンジンの性能や耐久性に大きく影響する。更にこれらのクリアランスは温度により大きく変わってしまう・・・

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こうしたピストン廻りのクリアランスを間違えるとこうして大きな不具合を招く。マニュアルがこうだからとか人が言うからとかそんな小さな器じゃ前には進めない。自分の手でやった、泣いて笑ったその経験の数だけが真実を授けてくれる。

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クリアランスを絶妙に整えたピストンリング達もそれだけでは働けない。ピストンリングがシリンダーに直接当たる訳でもない 「The ENGINE OIL」 これなくして内燃機関は成り立たない、モーターサイクルを愛する者にとって最も大切なモノ・・・

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それでも私の話をスルーしている君達に言ってやろう・・・通いなれた君の道で、トップギアで目一杯登れる急な坂を用意しな。そして君達の大好きな10W40や20W50のマルチオイルで目一杯坂を登るんだ。「・・・ズバッバッバッバッバッ!・・・」次に私の言うシングルオイルに交換した後、同じように目一杯坂を登ってみるんだ・・・

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スロットルに全神経を集中しリアタイヤの接地面を頭に描け! 「・・・ズバッバッバッバッバッ!・・・うわーっ!シングルってこんなに違うんだ!・・・」 どうだ!スロットルのかかり方が全く違うだろ!前者はパワーが抜けてくトルク感の無さ・・・後者は鼓動感が路面を掴み車体をガンガンと前に押す感覚が・・・最新型の車両を対象に進化するマルチグレードルオイルとエンジン設計とがようやくマッチングを見せるのは1980年代に入ってからだと言ったじゃないか・・・   

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実は、アーリーモデルの最大の欠点はエンジン特性の悪さだ。低回転域はトルクに乏しく高回転域の伸びも悪い。その主な原因は2Sと言われるスタンダードのカム・・・皆さんならもう分かるだろう、交換したカムのプロフィールが・・・

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コマンドの場合、余り圧縮比を上げ過ぎると良い結果は得られない。ストリート用としては9対1迄がベストだ。それを超える場合クランクケースを含めたブリーザーの加工が必要になる事、エンジンのメンテナンスサイクルが短くなる事、更に非力な人ではスターターレバーが重く始動が困難になるなどの注意が必要だ。

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こうしたバルブはエンジンの性能にとって大切で始動性や低回転域に影響する。けれども現行車に較べ耐久性が低い事は否めない。一度整備したからと言っても5000マイルも走れば十分に分解修理が必要になる。高性能なコマンドでは尚更だ。

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これはロッカーアームで、その先にはバルブステムに直接当たるアジャスティングボルトがある。右側はスタンダード、左側が通称マッシュルームと言われるスペシャル。このエンジンではカムのリフト量を大幅に増やしているので、円軌道を描くロッカーアームとバルブステムとの接触ではその移動量が増えてしまい特にステムの端面が大きく摩耗する。よって接触面積を増やし面圧を下げる事、摺動に適した形状を確保する事・・・これはチューニングエンジンでは非常に大切な事なんだ。

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エンジンの性能を左右するモノの代表格がキャブレターだ。これの適性で車体全体の性能を左右すると言っても過言じゃない。750Sではアマル社製930が標準。何も不足はなくクラシカル感満載の乗り味を演出してくれる。

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で、今回は、性能を上げたエンジンに合わせて932に変更し、更にスムースボアキットを入れている。スロットルを大きく開け始める回転域に効果絶大・・・高速道路への進入時など「なんだよ・・・おっせーなー・・・」と、他の650クラスを圧倒できる。尚、最終的には慣らし運転後に実走しての調整が必要だ。

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コマンドのギアボックスはAМC社製で4スピード、ライトサイドのシフトパターンは上から1速、ニュートラル、2速、3速、4速。ここはブリティシュならではの操作方法があるので気を付けたい。

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それはシフト操作、円弧起動を描くシフトシステム故に1速と4速、特に1速の入りが悪い。反して2と3速は円弧起動の中心に位置し入りが良い。更にヒートアップするとその傾向は顕著になる。これはどの位置でも同じ角度で操作できる現行車との違い、決して故障じゃないんだ。

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で、そのコツとは 「・・・クン・・クン・・・」 と二回の節度を感じるまで長ーく押し(上げ)続ける事。これがセレクタープレートを使うシフト装置の基本。「チョン!」で済んでしまうドラム式セレクターの現行車との違いなんだ。

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電装系統は何時ものようにメインハーネスから末端まで万全の作業を施す。皆さんなら分かっている、モーターサイクルにとって最も大切なモノは電気だと・・・

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点火装置はルーカス社製6CAを踏襲する。古い機械に乗る者には必須のモノだけど、定期的なメンテナンスを怠ると家には帰れない。

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充電装置はルーカス社製ステーターコイルで、10AのRМ21に容量を上げると同時に、レギュレーター&レクチファイアにシールドバッテリー。バッテリーの位置が奥になる750Sの場合、希硫酸から車体を守る為の工作はやる方が良い。

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コマンドの車体の最大の特徴であるアイソラスティックシステムとは、このようなラバーを複数介して車体とエンジンとを分離させる。限界を超えた750㏄ツインエンジンの強大なバイブレーションを至福の時に変換する正にマジックだ。

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ドミ系を踏襲するステアリングは御覧のような細さで甚だ強度不足。殆どに曲がりが生じ使い物にならないと言っていい。余りの強度の低さに翌1971年にコマンド専用へと設計変更される・・・ところで、このベアリングを見て皆さんは何か感じるだろうか?・・・

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コマンドのステアリングには意図的にボールベアリングが採用されている。ところが今回のオーナーは驚く事に750Sにテーパーローラーベアリングを入れろと言う。これは典型的な現行車崇拝型のリクエストだ・・・メードインジャパンに始まる1980年代からのスポーツモデル達が、なぜ反応の良さを捨てでもこうした抵抗の大きなモノを選択して行ったのか・・・ステアリングに極度の俊敏性を好むコマンドには対極的なモノだと言っておく・・・

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フェザーベット時代から定評のあるロードホルダーは数々の勝利を生む。高剛性なフォークは高剛性なフェザーベットフレームと見事にマッチングした・・・アルミ製のケースが気に入らない?・・・それこそ時代感の欠如した愚問だ。

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新しくリム組したフロントホイールに着くツーリーディング式のドラムブレーキは一般人が一般道を走るにはそれなりに効く。但し、前後のブレーキをバランスよく効かせる事が必須。フロントブレーキのレバーだけを必死で握っている姿はこの世界では滑稽であるばかりか危険だ。

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と言いたいところだがコマンドのリアブレーキはレバー比の設定が不味くコントロール性が極端に悪い。サーキットなんかでスポーツ走行する場合の改良は〇だ。但し、公道上ではそのままが良い。ブレーキの見た目のクラシカルさやオリジナル性を鑑賞する事も英国車の楽しさだからだ。

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で、プロダクションレーサー用のエアーのベンチレーションはオーナーからのリクエスト、硬いバックプレートに加工して製作する。プロダクションレーサーではベンチ穴は合計6個、対してチェーンガード装着車は必ず上側を2個とする事がポイントだ。

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タイヤとはアーリーコマンドにとって最も大切な場所。AVON社製GP3.50-19・・・これなくしてアーリーコマンドは語れない。更にクロームドされたこのチェーンガードは750Sと750Rの隠れたチャームポイントだ。

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フロントはエイボン社製のスピードマスターMarkⅡ3.00-19、決して3.25-19を選んじゃイケない3.00-19だ。そして、マッドガードにはナローとワイドの二種類のマッドガードがある。3.00にはナローを・・・4.10にはワイドを、それぞれあてがってやるのがコマンドのセオリーだ。

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コマンドのフレームは一旦振れ出すと納まりがつかなくなる。こうしてステアリングダンパーを加工し取り付ける事は、アーリーモデルでは特に有効だ。だが、アジャスティングには注意が必要、他のモーターサイクルとは違う反応を見せると釘を刺しておく。

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これが750Sと750R専用のオイルタンクなんだが、クランクケースのブリーザーシステムに設計的欠陥がある。暫く始動していない場合など多量のオイルをエアークリーナー内に噴き出す癖があり、それは他のモデルの比ではない。

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で、SとR専用の小粋なオイルタンクが私は大好きなので直接の加工はしない。こうしてブリーザー用の取り出し口を設けたり、ホースの取り回しの変更等で対処する。

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この美しいエキゾーストシステムは750Sの最大の見せ場。この取り回しなくして750Sは語れない。

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4枚のプロテクションカバーも当時モノで再メッキして使用する。そして小さなスクリューの間にファイバー製のワッシャーを入れる事で幾分かの断熱性を確保する。

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そして更なる750Sの欠点はサイレンサーのマウントにある。ラバーマウントは4個から2個にされてしまう。そしてラバーマウントを吊り下げるブラケットは構造的に薄板で作られ直に破断する。で、サイレンサーとブラケットは平行ではないからこうしてテーパー状のカラーをフライス盤で製作し取り付ける。4個全ての角度が違うカラーはラバーの耐久性に大きく寄与できる。

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コマンドの中でも1968~1970のアーリーコマンドはとにかく状態が悪い。設計的な不味さもあって皆さんが乗れるようにするにはそれはそれは手間が掛かる。上記の他にとんでもなく大量の作業を終えてコマンド750Sは完成した。神戸の陸事で並行輸入審査を終え新規検査を受ける。

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「ズッ・・・ズドッドッドッドッドッーーーン!・・・」 シングル50番を入れるエンジンを十二分に暖めた後、しっかりとクラッチレバーを握り 「スッコン・・・」 とシフトペダルをかき上げ走りだす  「ズドッドッドッドッドッドッーーーン!・・・カッコン・・・ズドッドッドッドッドッドッーーーン!・・・」 

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モディファイしたエンジンは2千回転前後の低回転域のトルクが大幅に増しているのが分かる。仮にエンジンの回転数が低過ぎても力強い粘りを見せる。これは2Sカムにはない感覚だ。

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「ズッズッズッズッ・・・」 今までの2Sカムでは、必ず後ろ髪を引かれる感覚があり元気に走ろうと思うものの常に不快感が拭えない。ズバーンと走っているつもりがどことなく両肩をお岩さんに押さえられ「何処いんくだべ~」と耳元でささやかれる感じだ。ところが今回のエンジンでは 「スッコーーーン!・・・」 と青空が抜けるが如く加速してくれる。

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皆さんはレーシングマシンのクリップオンハンドルとは操縦性を高める為のモノだと思ってはいないだろうか?残念ながらそれは間違いだ。空気抵抗の影響を受ける速度域で走らせるロードレーサーではカウルの中に身を隠す必要があるから仕方なく狭い。当然ながら幅の有る方が抑えも効くし挙動も伝わり易い。そう言った意味でこの750SのUSバーハンドルは実に楽しく走れる。

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USバーハンドルを握り、細い3.00-19の前輪を望み、幅の広いフットレストをしっかりと踏み込み、勢いよく大胆に倒し込めば 「ズドゥーーーーン!・・・」 あの重い鋳鉄製シリンダーが存在感を見せクラシカル感を演出する! 「・・・・カコン・・・ズドッドッドッドッドッドッーーーン!・・・」 重いフライホイールに89mmのロングストロークな360度クランクシャフトが「ズドドドドドドッ!・・・」 っと路面を蹴り吠えて来る! 現代では否定されてしまったこうした理不尽さがこの時ばかりと人間の感性に訴えてくる!・・・ 

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忘れちゃイケない、過酷なピストンリングの事・・・「ズドゥーーーーン!・・・・・・カコン・・・ズドッドッドッドッドッドッーーーン!・・・」 コマンドの鼓動感とは実はシングル50番のオイルあっての事。軽い車体を「ドンドンドンドン!・・・」っと蹴とばす感覚もこのオイルの踏ん張りがあっての事なんだ・・・

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時は1970年代、日本のモーターサイクル文化とはそれは未熟なモノだった。大衆四輪車の2倍も3倍もする外車なんて存在すら知られてない。・・・偶然手に入れた外国のパンフレットを手に 「スッゲー・・・なんてバイクなんだろ?・・・」 少年の目にはこれが一体どんなバイクなのか見当もつかなかったんだ。

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「マフラーが上に2本も上がってる・・・どんな音するんだろう・・・」 ネットなんて無い時代、唯一の情報源であるバイク雑誌にも載ってない。興味を持つものの通り過ぎ、かっこよくても、凄いと思っても、その存在を知る術もない1970年代の日本・・・

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それがどうした事か今、私の目の前にある。キラキラと目を輝かせてパンフレットを宝物のように見続けた当時の私。カワサキのマッハに乗り白煙をまき散らしながらもどうする事も出来なかったあの時の想い・・・モーターサイクル文化後進国の日本人が知る事さえ出来なかった遠い海の向こうの憧れが今ここに有るんだ・・・

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そして納車の前日、やはりもう一度750Sに乗って近所を走った。「・・・S、最後に乗るよ・・・ズドッドッドッドッドッドッーーーン!・・・カコン・・・ズドッドッドッドッドッドッ!・・・」
この750Sはアーリーモデル故に作業は多岐に渡ったからこそ愛着も湧く。そして設計的な不味さも750Sには有るから可能な限り対処してやろうともした・・・タンクに優しくカバーをかけ「・・・明日また来るからな・・・ゆっくり休めよ・・・」 と毎日工場を後にした。私がどれ程この750Sに愛情を注いで来た亊か・・・そんな事オーナーの彼には関係の無い話しなんだ・・・

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明日の納車の為にガソリンを入れに行く。「S・・・沢山ガソリン入れてもらえよ・・・」 私に出来る事はここまでだ。明日からは私のモノではなくなる。何だろう・・・勿論新しいオーナーの為に作っている。エンジンを開け、車体を修復し、丁寧に電装系統をやりかえ、二人で走った日本海への道 「エス・・・見ろよ、海だぞーっ!・・・」 少年のころに憧れた750Sとずっとずっと一緒に居たのに突然の別れがやってくるなんて・・・

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そして当日、神戸市内からオーナーのМさんが来てくれた。一通りの説明をしエンジンをかけてもらった。「ズッ・・・ズドッドーーン!・・・」 すぐにエンジンはかかり快音を響かせている。「ズンズンズンズンズン・・・ズドッドーーン!・・・」 
そして 「・・・走ってみるかい?・・・」 彼に声を掛け四人で軽く出掛けた。 「ズドッドッドッドッドッドッーーーン!・・・ズドッドッドッドッドッドッーーーン!・・・」 コマンド2台だからサウンドが和音となり絶妙な快音を響かせ走っている。私の相棒のロードスターも弟分の走りを優しく見守っている。私と私の愛車は共に後ろを走る750Sを脳裏に焼き付けながら淡々と走り続けた・・・

1970 NORTON COMMANDO 750S 神戸市M様 納車です。
彼の趣味は多く、四輪車や多くのモーターサイクルを所有する。好きなモノに囲まれる生活は正に男の理想像。その年令で、それはそれは立派なものだ。だが、ブリティシュをなめちゃイケない。ネアンデルタール人の如く滅び去った化石、1970年代からの常識は通用しない。手入れを怠れば壊れる。そのサイクルはイタリアンの比じゃないんだ・・・

1970 NORTON COMMANDO 750S 神戸市M様 納車です。
コマンドの魅力は奥が深い、いつの日か750Sの本当の価値に辿り着けたなら、今一度立ち止まり、何が自分の人生にとって必要な事なのか考えてみる事も必要かもしれないよ・・・人生とは自分の思うようには絶対に行かない、必ず大きな落とし穴がある。ブリティシュも人生もなめちゃイケないと私は思うんだ・・・

1970 NORTON COMMANDO 750S 神戸市M様 納車です。
NORTON COMMANDO 750S とは尊い青春の憧れ、君だけのエゴは通らない。当時の貧しい若者の無し得なかった夢をキラキラと輝かせ続ける責任が君にはあるって事、忘れないで欲しいんだ・・・
2019年04月02日 布引クラシックス 松枝

後日、オーナーのМさんから連絡頂きましたよ。
「社長今日は。本当にありがとうございました。そして社長の執念、技術力に脱帽です。 帰りしな白川まで高速と思ったのですが、楽しすぎて吉川で下りて走り慣れたワインディング行きました。 また新しい勉強になりました。 ducatiフレームフニャフニャやなって思わなくなりました。 ガチガチです。 なんなんでしょう?上手く言えませんが。人間にめちやめちゃくちゃ近いオートバイなんでしょうか?
とにかく面白い、特に3速4速が気持ちいい、 オートバイ好きやゆうて知らずに死んでいくとこでした。 Nortonに出会えて良かったです。社長無礼をお許し下さい。 オイル交換しょっちゅう行きます。早く慣らし終わらします。本当にありがとうございました!」

松枝の礼文
「Мさん、この日は寒かったので心配しましたが無事に帰れたようですね。
本当は快晴の下で納車したかったですよね‥・
コマンドって楽しいでしょ?
でも奥が深い、生涯に渡って愛用してもらいたいと思っていますよ。
また、オイル交換等で寄って下さい。
待ってますよ。
この度はありがとうございました。松枝」

試運転記録 美山編


試運転記録 往路編


復路編


参考記録
試運転その1(京都府美山方面)
一般道走行距離・・・・・104.2km


試運転その2(京都府夕日ヶ浦海岸方面)
一般道走行距離・・・・・392.5km
高速道路走行距離・・・ 31.9km
小 計       496.7km

総走行距離・・・・・・・・・528.6km
仕様ガソリン・・・・・・・・・・21.5L 
(無鉛ハイオク)
燃費・・・・・・・・・・・・・・・24.58km/L

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