2019年06月07日

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
プリユニットモデルオーナーの中でも親しくさせて頂いている神戸市N様所有のトロフィーを車検整備させて頂きました。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
このトロフィーは以前に私がレストアし(レストア作業はコチラ)、更に2代目オーナーのNさんに引き継いだ時に幾分のモディファイを行った上質な車両(モディファイの作業はコチラ)。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
同じ買うならこうした良質なモノを買うべきだという典型的なモノ。1960年辺りのプリユニットモデルとは本来ことごとく傷み切っているモノだと皆さん知るべきだ。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
だが、預かった車体を見るとリザーブ側のぺトロールタップが開いたまま・・・そしてエンジンはかからない。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
いくら通気性の高いアマル社製のキャブレターと言っても長期間ぺトロールタップを開けたままだと常時ガソリンが供給され、結果内部に酸化腐食が起こる。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
全てを洗浄し、各部を組み直し快調を得る・・・因みにこのモノブロックタイプのキャブレターをコンセントリックタイプに交換する事がベターだと言う者がいる。何を根拠に言っているのか私には理解出来ないが、モノブロックはモノブロックとして正しく走る・・・

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
そもそもこの時代の車両にモノブロックを継承する事は「らしい」走りを堪能できるからに他ならない。モノブロックモデルにコンセントリック入れて「これでOKだぜ!・・・」 ってのは、正に英国車的ナンセンスの極み、最悪の勘違いだと言っておく。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
で、オーナーのNさんに苦言を呈しよう。フロートバルブを使うキャブレターの場合、タップを閉める事はオーバーフローの危険性からも英国車乗りの基本中の基本、火災の可能性も有るのだから今回は大きく反省してもらいたい。(写真は他の車体)

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
この時代のモデルに乗るにはこのルーカス社製の各電装部品のオリジナリティーが重要だ。このリアブレーキのスイッチとてひとつのこだわりの部分となる・・・しかし、これが時代的完成度の低さを露呈している。とにかく敏感過ぎてやり難い、ブレーキペダルを調整するとスイッチの作動に即影響が出て扱いづらいったらありゃしない・・・

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
月日が経てば何をしても導通しなくなる。指示しているのは接点で真っ黒に腐食している、左にある相手側の接点も然り。分解して磨き給油もする。そして、ユニットモデル等に使われる後のスイッチを取り付けて「この方が良いんだよ・・・」などというオーナーに成り下がってはいけないぞ。不便でもやり難くてもこだわるべきところは絶対に譲らない!見栄を張りつつ使い続ける・・・それが布引流英国車乗りのわきまえだ。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
全てのオイルを交換する。布引クラシックスでは「ブラッドペン」コチラを使用する。違いが分かるから、皆さんも是非使ってみて欲しい。オイルの話Vol.1コチラ、Vol2コチラ、Vol3コチラです。で、その他各種の作業を行った上で検査受けを済ませた。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
1963年までのトライアンフに乗る魅力のひとつにこのクロノメトリックがある。機械式の作動の仕草にこの時代の微笑ましさがあって誰しも幸せになれる・・・そして、プライマリーチェーン近辺の存在を感じながらエンジンをかけ試運転に出掛けた・・・

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
「ズンズンズンズンズンズン・・・ズッウォーーーーーーン・・・」プリユニットモデルの走り出しは豊かだ。ユニットモデルの硬質な感覚との違いは明白・・・

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
「ズンズンズンズンズンズン・・・ズッウォーーーーーーンッ!・・・チャッ・・・ズッウォーーーーーーン!・・・」ユニットモデルよりも幾分の重さを感じながらも爽快に走りだす・・・

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
おっさんバイクなんかじゃないぞ!一度スロットルを大きく開ければ・・・「ズッウォーーーーーーンッ!・・・チャッ・・・ズッウォーーーーーーン!・・・」 「オーッ!キモチイイー!・・・」 

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
「ズンズンズンズン・・・チャッ・・・ズッウォーーーーーーン・・・・・・ズバッバッバッバッバッバッ!・・・」 ギアをサードに下げ徐々にスロットルを開けて猛然と加速を始めるスポーツ性能・・・この感覚は言葉で言えない正にプリユニットモデル特有の感覚。走るのか走らないのかと言えば「何言ってんだ、走るってば!・・・」 熟成されたスカッチのように角のとれた豊かさと言う表現がピタリとあてはまる。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
車体の感覚はユニットモデルに比べると総じて柔軟で、股の下に三つの箱の存在を感じながらストローク感のある動きを見せる。1959年モデルまでの低剛性感を継承しつつ、逆にユニットモデルにはない「ほんわか感」よろしく「ズンズンズンズン・・・フワッン・・・フワッン・・・フワッン・・・」と来て、時に「ズドドドドドンッ!・・・」と荒い路面の衝撃をモロに伝える素晴らしい低衝撃吸収性能(笑)。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
だが、ハイウェイに上がっても何も心配ないらない、積極的に走ればいい。「ズンズンズンズンズンズン・・・ズッウォーーーーーーン!・・・」 何処にでも行ける絶対的な安心感。そして1インチバーを握れる事の優越感も合わさって俄然強者の想いも湧き立ってくる。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
結局のところ、トライアンフに於ける1960~1962年モデルの意味とはなんだろう?・・・素人が言う「英国車は絶対に鼓動感ですよね!・・・」モノを何でも一元化してしまうそんな薄っぺらなモノじゃない。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
それは、「走る楽しみ」 「鑑賞する楽しみ」 「労わる楽しみ」 この三つが絶妙なバランスを見せる。リジットモデルのように人間の負担が大きく共に傷みを分かち合う阿吽の呼吸的乗り物の要素?・・・ユニットモデルのように硬質で攻めのモーターサイクルライフを堪能できるモノ?・・・それは双方の良質なDNAをしっかりと奥底に潜ませつつ、走る事、観る事、労わる事、そのいずれにも「愛」のオーラが漂い高いレベルで常にオーナーを飽きさせない。要するにオーナーになったならそこで車種選びは終焉を迎える・・・そんなモーターサイクルなんだ。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
それを迎えるオーナーにも相応のレベルが必要だ。「鼓動感ばかりを気にする素人など一昨日来やがれ!」 シングルからツインモデルを、リジットモデルからユニットモデルを、多くのモーターサイクルを実体験し、その上で我がプリユニットモデルの存在感を正しく認識する。真面目にモーターサイクルを考えて走って来た者のみぞプリユニットモデルの意味が分かる。

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。
懐の深さの無い者には選んで欲しくない。モノを愛する感覚の無い者に乗っては欲しくない。ここまで生き長らえて来た尊いプリユニットモデルにもう一度幸せな人生を与え、共に生きて行こうとする心を持つ者にこそ辿り着く境地・・・長く走り続けても負担に感じさせず、ずっとずっと快感を感じられる上質で微細な鼓動感は、そうした者にしか分からないんだ・・・ 2019.06.07 布引クラシックス 松枝








同じカテゴリー(作業完成報告トライアンフ編)の記事画像
TRIUMPH TROPHY SPECIAL 車検整備 大阪堺市M様 
1975 TRIUMPH T160 TRIDENT 東京都H様 納車のご報告です。
1965TRIUMPH T90SC PROJECT 兵庫県H様
1965 TRIUMPH T120 BONNEVILLE 納車整備記録
TRIUMPH TROPHY SPECIAL AMAL 389 堂々と交換致しました。
1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
同じカテゴリー(作業完成報告トライアンフ編)の記事
 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 車検整備 大阪堺市M様  (2019-04-24 21:41)
 1975 TRIUMPH T160 TRIDENT 東京都H様 納車のご報告です。 (2019-03-20 01:58)
 1965TRIUMPH T90SC PROJECT 兵庫県H様 (2019-01-17 21:24)
 1965 TRIUMPH T120 BONNEVILLE 納車整備記録 (2018-11-06 23:31)
 TRIUMPH TROPHY SPECIAL AMAL 389 堂々と交換致しました。 (2018-07-22 20:43)
 1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様 (2018-05-31 19:04)