2015年11月21日

布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その6

布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その6

引き続き、年代別の説明を致します。
1970年代前半の英国車
「突然現れたメードインジャパンにお客を全て奪われた英国車のあせり」
人間の使いやすさを追求したメードインジャパン。設計思想重視の旧態依然としたメードインイングランド。
ホンダに全顧客を奪われた各英国車メーカーたち。吸収合併を繰り返し存続するだけで精一杯。下降の一途をたどる経営状態に首脳陣は頭を抱え、遂には英国政府も支援に乗り出してくる始末。だが、1960年代に熟成した機械的な各システムは、基本的にこの時代も踏襲され続けた。変えようにも、もはやそんな体力などどこにもなかったというのが本当のところだ。そして、モデルチェンジアがあったり、5スピードギアボックスがオプション設定されたり、シフトレバーが左になったりと、英国車としては劇的な変更を断行するも、その殆どが的を得ない悲しいものばかりだった・・・。
「要約します・・・機械的に更に安定度を増し皆さんに最も適した時代。外観的なこだわりよりも、実際の使い勝手や機械的な安定性を望む人にはうってつけの年代です。最初の英国車として最もお薦めだと私は思います。」

布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その61970年代後半の英国車
「なにをやっても功を博さない悲しい英国車の運命」
市場から相手にされない悲しい現実。メードインイングランドに存続の力なし。
血相書いてメードインジャパンに巻き返しを図ろうと、ディスクブレーキを取り付けても、シフトレバーを左にしても、アメリカンモデルを出してみても販売増にはつながらない。あれをやっても、これをやっても、何をやってもダメ。焦る気持ちが募るばかりの悲しい時代。そして、セルモーターを取り付け、多気筒化を進め、アルミ製のホイールを取り付け、キャブレターも日本やイタリア製を真似てみた。もはや新しいモデルを作るだけの体力もなく、既存モデルにデコレーションするだけでは誰も振り向いてくれない。この時代に世界を混乱させたオイルショックの影響も拍車をかけた。そして、ついに悲しいブリティッシュモーターサイクルの歴史の終焉の時を迎えてしまったのです・・・そうです、倒産したのです・・・
要約します・・・この時代のものは、基本的に直線的なデザインが多くなり、車体も1960年代のものより一回り大きく丈夫になりました。セルモーターがついたり、左シフトの5スピードギアになったり、前後ディスクブレーキになったり(効きは変わらない)いろいろと近代的な仕様も増え実用的になったと言えるでしょう。ですのでビギナーには最適な年代だと私は思います。しかし、この時代の英国車を批判する輩がいることも事実です・・・でも、私はその意見には真っ向反対です。この時代の英国車は、当時のメーカーで働いていた方達が一生懸命時代の流れに逆らって、もがきながらも造られた作品なのです。給料未払いで不安になりながらも一生懸命に組み立てたものなのです。だからこそ、現代の我々が大切に扱っていくべきじやありませんか!皆さん!英国車に乗ると言う事は時代を大切にすると言う事なのです・・・また、話が脱線気味にになりました。戻りまして・・・ですから、皆さん、良く吟味しましよう。スタイル、エンジン、使い勝手などよーく観察して検討しましょう。そして、それを気に入ったならば、堂々と購入致しましょう。自分が気に入って買うのだから、何も遠慮することは有りません。私が太鼓判を押してあげますから・・・。しかし!相も変わらず手入れが必要な事は変わりませんよ!バッテリー液や、オイルの量や、プラグの交換やなんだかんだといろいろとあります。
なので、古い当時の英国車に熱い思いと、優しい愛情を注ぐ事ができると断言できる方!そんな方のみ私が乗る資格を与えましょう。それ以外の面倒な事が嫌いだとか、手が汚れるのがちょっと苦手かも・・・とか言ってやがる今時の君たち!どーぞ、そこいらのディーラーさんへ足を運んでくださいな・・・

布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その6
1980年代の英国車
「そして終焉を迎える結末。そこは英国車たちの墓場」
全てが発展した時代に、なにも残らない英国車の痕跡。
私にとっては筆をとりたくない時代とも言える。見るも無残な廃墟のような時代。実質的に英国車メーカーは無く、英国内のみならず世界中でメードインジャパンが走りまわる。この時代に、トライアンフとして唯一生産されたパーツを集めて作られたご存じデポンボンネビル。これについては私も言いようがない。否定も肯定もし辛いと察してほしいです・・・おまけにノートンなんてロータリーエンジン車を発売してしまう。更にロータックスのエンジンを積んだマチレスなんてどうなのか?必死で起死回生を狙ったとは思うが、世間の目は冷めきっていた。街の外れには、山のように積まれたトライアンフの残骸が鉄クズになる時を待ち、民家の納屋には既に役目を終えた英国車達が放置され、輝くメードインジャパンのその奥にゴミのようにうずくまっていた。当時の顧客である若年層にはその存在すら意識されない、冷ややかで寂しいそよ風がゆらりゆらりとそよぐだけの、そんな時代になっていたのです。

布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その6
1990年代のモーターサイクルたち
「世界を席巻したメードインジャパン」
極一部のエンスージャスト達の英国モーターサイクル文化としての継承活動。
そして、1960年代頃から研究されてきたコンピューターもやっと実用化されるようになり、1990年代前後から自動車業界にも普及する事となる。そして古典的なな英国車にとっては全てが違う方向に向かっていきメードインジャパンを中心に加速度的に進化していく。一方、ドイツ製は堅実に我が道を進み、イタリア製バイクは相も変わらず経営が不安定。倒産の危機と突然のヒットを繰り返していた。面白いのは今大流行のアメリカ製のハーレー達。本当に流行らなかったんですよ。当時はハイウエイパトロールを真似たおじさんたちが隊列を組んで走るか、衰退したヒッピー達(ヒッピーって知ってますか?)がこじんまりと乗っているだけで、重く走らない鉄の塊を誰も相手にせず、アメリカ以外では殆ど普及しない時代でした。それが今や世界中の老若男女が乗る時代です。経営手腕が称えられる見事な販売戦略。たまげます!そして世の中は自動車製品と共に家電製品から一般工業製品まで何から何まで大量消費の時代に突き進む。そんな中、勤勉にモノを作り続けた日本の果たし役割は大きく、まさしく技術革新は日本を中心に進んで行くのでした。そんな使い捨ての時代に、もはや高品質である必要性はありませんでした。ステンレスとプラスチックとシールで出来上がるモーターサイクル達は、時代のニーズに見事なまでにマッチして大量に生産されていく。速くて、安くて、使いやすくて、寿命だけは短い(回転率向上の大原則)。そんな時代が大河のごとく世の中を呑みこんで行ったのです。今になって考えると、当時世界中に販売された日本製バイクの種類と量から言って、現代に世界から認められる名車と言われるモノの数は余りに少なすぎます。(お断りしておきますが、私個人は英国車だけを愛するそんな小さな男ではありませんよ。日本製のバイク達にも素晴らしいものがあると充分に認識していますから。)しかし、当時の勢いを考えるともっと評価されてしかるべきでした。ですが、時代が世界レベルとしての品質の高さなど求めていなかった・・・それは、使い捨ての大量消費の時代に於ける違った意味での副産物かもしれませんね・・・でも、日本製バイクを愛するエンスージャストの皆さん、皆さんは未だましです。我が英国車メーカーはそれどころか、完全に消滅したのですから・・・

布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その6
2000年以降
「多様化する趣味としての英国車」
パーソナルコンピューターが一般家庭に普及する時代。殺伐としたストレス社会の中での英国車の存在。
世の中の全てのものが多種多様化して多くのものに目を向けられるようになる時代。悪く言うと何でもありの時代になりました。中国製品の溢れるこの時代でもモーターサイクルに限っては made in USAの時代です。某アメリカ製Vツインバイクに乗って風を切れば、どんな体裁の悪いお兄さんだって様になる(ごめんなさいよ!)。ボタンを押せば全自動。アンダーパワーで刺激が無くてもドカドカ言えばそれでよし!どうして、こんなバイクが流行るのか分かりますか?答えはひとつ、乗るのが簡単でしかもカッコイイからです。バイクはファッションで乗る時代だそうです!それにひきかえ、私のやっている英国車、セルスターターのボタンもないし、燃料計もないし、デジタル時計もついてない。ガソリンコック?ティクラー?タイミングレバーって何のこと?乗っても下手だと調子が悪くなるし、足で蹴らなきゃエンジンが掛からんって?!おまけに「ドゥォーンドゥォーン・・・」ってうるさいし・・・でもね、皆さん。騙されたと思って一度乗ってごらん。私と一緒に丹後半島に行ってみれば、一生忘れられない思い出になりますよ・・・話がまたずれてしまいました。戻します・・・

現代では、目前に電動バイクの時代が控えています(本当の話なんですよ)。世界的な環境問題が言われる中、日本にも国際的なCO2削減のノルマがあります。なので国土交通省は排気ガスの出ないクルマやバイクの社会の創造に既に舵を切っています。財務省と組んで古い排気ガスの出る我々のようなクルマの税金が高くなる仕組みをとっています。メーカーでも、もうガソリンエンジンなんて本気で開発なんかしていません。あの由緒正しきマン島のレースにも日本人が電動バイクが走らせているなんて・・・そして、環境問題の諸悪の根源である排気ガスを出しまくる我々の愛するクラシックモーターサイクルなどは、地球が真っ二つに割れても二度と生産されることはありません・・・・半世紀も前に作られた古い車体を大事に大事にコツコツと美しく磨きあげながら使うしかないのです・・・時代が築き上げたブリティッシュモーターサイクルカルチャー。もう二度とこのようなものは世の中に出てくる事はありません。今や人と話すよりも、スマートなんとかやアイパッド?とか何とか言う板の方が大事なんだそうです。正直そんな社会、私はまっぴらごめんです。しかし、こんなデジタル社会に生まれた皆さんも、社会のなかでいろんな壁にぶち当って苦労を重ねたその後に、もっと人間らしい生活がしたいなぁ・・と思う時が来るのです。こんな殺伐としたデジタル社会の中で人類が心を休められる唯一の空間・・・ホッとできる瞬間は・・・それはアナログな時やものだけなのです。社会が急激に進歩しても、何も変えずに自分の道を進んで行った英国車達。誰も振り向いてくれなかった時代の遺物。しかし、私はそこに人類の本来進むべき方向と時の流れる速さがあったのではと思っています。私のこうしたクラシックモーターサイクルに乗ろうじゃないかと言う意味のひとつを、少し分かって頂けたでしょうか?つづく・・・



同じカテゴリー(英国車講座ビギナー編)の記事画像
布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」最終回
布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その13
布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その12
布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その11
布引流英国車講座「君も英国車に乗ってみないか?」その10
布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その7
同じカテゴリー(英国車講座ビギナー編)の記事
 布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」最終回 (2015-11-22 11:46)
 布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その13 (2015-11-22 11:36)
 布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その12 (2015-11-21 14:36)
 布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その11 (2015-11-21 14:36)
 布引流英国車講座「君も英国車に乗ってみないか?」その10 (2015-11-21 14:35)
 布引流英国車ビギナー講座「君も英国車に乗ってみないか?」その7 (2015-11-21 14:34)

Posted by nunobiki_classics at 14:31 │英国車講座ビギナー編