2018年05月31日

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
1960年代、アメリカの荒野を駆け抜けたTRIUMPH T120TT, T120C, TR6C, T100SC・・・何れもオフロードを存分に走る為に作られたコンペティションモデル達だ。

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こうした競技専用車両達は今で言うモトクロッサーやエンドューローマシンだと言えば分かり易い。それ故に数年で廃棄処分され現存数は極端に少ない。

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そうした入手困難なオリジナルモデル達を布引クラシックスが忠実に再現する・・・それが「NUNOBIKI SPECIAL」 だ ・・・

・・・お願い・・・ 
コンペティションモデルに興味のない人はここで立ち去りましょう、全く面白くないですから・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
ではマニアックな皆さんと共に見て行こう・・・先ずステアリングのトップラグ。通常モデルではラバーマウントされ振動に対処する。握ってもフラフラし何とも納得し難い。しかしコンペではこのようなに一体型で、ガチンッ!っと固定されオフロード走行に寄与する。高まる剛性感とダイレクトな感触が頼もしい。

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ハンドルバーも専用のモノで形状に幾分の違いがある。バイブレーションが気になるとは思うがそれは逆だ。私個人的にはラバーマウントよりも数倍の快感を得られる。皆さんも是非試すと良い。

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照明装置を持つモノにはホーン&ディップスイッチがクランプオンされロードモデルとは違う。更に、ACイグニッション車にはエンジンストップのプッシュボタンスイッチがクランプオンされ、照明装置を持つものではそれがヘッドランプシェルに装着されたりする。コンペモデルと言ってもハンドル廻りの仕様は多岐に渡るけれど、それぞれツボを押さえる事がコンペマニアの快感につながる・・・

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ロードモデルのヘッドライトの多くはこの時代7インチだ。そして、コンペモデルで照明装置を持つモノには6インチのモノが与えられる。Lucas社製のMCH66がその形式でリフレクターは575だ。間違っても7インチを着けてはイケないんだ(1965年までのCモデルやSCモデルは7インチだったりする)。

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そして、コンペの大きな魅力のひとつがシングルのメーターだ。勿論それはレヴカウンターでスピードメーターなど着かない・・・しかし、残念ながら日本の公道ではそれは出来ずスピードメーターのみを取り付ける。断腸の思いってやつだな・・・
因みにハンドルクランプにあるボルトの様を見て欲しい。亜鉛鍍金のザラザラとした表面にムラのある腐食感は年月が経たないと得られない大切な景色。これを決して再メッキしてはイケない。大切に大切に時々ウエスで手入れして使い込む。それが英国車オーナーの嗜みだ。

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これも粋なアクセサリーなんだ。アンダーシールドと言って車体下部を保護するガードだ。多くの場合、整備性が悪いと捨てられる。コンペ好きならば宝物になるのにさ・・・

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只、フロント側のマウントは相当いい加減な作りで全く固定できない、なのでうちでは新たに作り直している。これは正解だ。そして、本来コンペモデルにはセンタースタンドは着いていない。

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エキゾーストシステムはそれぞれ違う。TTモデルのように太めの直管が下がるモノ、このように両サイドに振り分けるモノ、左一本にまとまるモノ・・・どれをとってもコンペモデルのエキゾーストパイプは美しく満足度100%だ。

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
1966のスタンダードモデルやイーストコースト仕様のコンペではマッドガードはスチール製になりペイントが入る。それがウエストコースト仕様になるとアロイ製、つまりアルミニウム製になる。スチール製の鉄板は厚く前後共に数キロの重さを持つ。しかし、アロイ製は超軽量で数百グラムだ。それこそ指でつまんで振り回せる。走った途端に軽さが実感で出来るコンペモデルの最も主張するべき場所だ。
更に、良く見て欲しい・・・なんだかタイヤとマッドガードの間が歪に開いていないだろうか?・・・ここがコンペティションモデルの一番の見せ所なんだ!(ロードモデルと較べてみよう。誰も知らないコンペマニアだけの裏知識…笑)

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そして、ボトムのステーも大切な見せ場。ここのマッドガード側の固定にはセンターにナット1個が使われる。しかし、コンペは両サイドにボルト2個だ。更にボルトにはラウンドヘッドと言って専用のモノが使われる。その辺りを徹底すると全くもってカッコイイ!ステイと言い、歪な隙間と言い、ボルトの頭と言い、興味のない者にはチャンチャラ可笑しい位にどうでも良い話なんだけど、絶対に譲れないコンペを象徴する大切なモノなんだ・・・
そして、オフロード走行を支えるタイヤはエイボン社製のトライアルユニバーサルで、フロントが3.50-19或いは3.25-19。リアが同じく4.00-18だ。リムは英国ダンロップ社製のWM2-19にWM3-18になる。まぁ、当時も実際には皆ノビータイヤを使う事になるんだが・・・。

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後ろもアロイ製だ。当然のこと、現行車のようなコーティングはされないから時間が経てば白く酸化する。よって定期的に磨く習慣を持つ事が必須だ。ホームセンターに行ってピカールとワックスを買って来なきゃいけないよ・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
だが、良い事ばかりじゃない。ACモデルでは問題にならないが、DCモデルには希硫酸の入ったバッテリーが着く・・・これが先にも言った無垢のマッドガードには大敵だ。この車体では既に仕様を変えているのでシールドタイプのバッテリーに換えた方が賢明だ。
ついでに主張すると、このシート下は製作者の腕の見せ所。珍しいツールトレイにシートを止めるワイヤーにそのスクリュー。配線にブリーザーの配管に全てに渡って当時を再現する。ここが分からなきゃトライアンフに乗る資格など無いんだな・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
そして、フロントフォークのスプリングはバネレートに違いがあって飛び跳ねるコンペモデルは高くなる。ストロークさせればそれは分かる。元々ロードモデルのバネレートは低過ぎるからコンペのモノを入れる事は有効で、皆さんも一度試してみると良い。

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
ぺトロールタンクは微妙で、初期の頃ではスタンダードと何も変わらず、後に行くと2.5や2.0ガロンタンクになる。しかし、西海岸と東海岸などの地域の仕様によっても違うので定義づけが難しく決めつけちゃいけないって事なんだ・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
人任せに出来ない大切なペイント作業、布引クラシックスでは自社ペイントだ。1966年のカラーはロイヤルブルーにホワイトにラインはゴールド。ラインの太さや位置はインチサイズで忠実に再現。見るからに当時の風景が浮かんで来るような見栄えを再現する事が大切なんだ。

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
そして、エンジンの仕様、キャブレター等には違いがあり当然のことながら出力を上げている。特に10~11.25対1に上げられたコンプレッションは凄い!けれど並の日本人なら始動もままならなくなる。なので、エンジンに限っては乗り手の腕に合わせる事が賢明だ。

ざっとここまでコンペティションモデルの特徴を大雑把に解説。ここからは、通常通りの個体の説明さっとしてみたい。

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
コンペモデルだからと、中身に手を抜いたりは絶対にしない・・・エンジンは、大切なクランクシャフト、コネクティングロッド、クランクケースにカムシャフトは万全の作業を施す・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
ピストンにシリンダーも同様、完全な仕上げを・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
弱いシリンダーヘッド廻りも各作業施工済み・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
クラッチにはスラストベアリングも入りプイマリー系統も万全・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
前後のホイールは、スポークの亜鉛メッキ加工にバランス取りにホイールベアリングもシールドタイプとする。エンジン、車体、電装系統と走る為に必要な箇所へ質の高い整備を施すことは布引クラシックスでは最も重要と捉えている。いつもの通りだ・・・

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
そして、試運転に出掛けた。何時も走る訳だけど、こうしたコンペティションモデルを引っ提げて走る快感はまた違ったモノになる。言ったように固定されたハンドルからはダイレクトにバイブレーションが伝わる。けれど、それがエンジンの様子や路面の感触をグッと体に伝えて来るようになる。走る事が好きで、少し走りに経験のある者ならば 「・・・オーッ!・・・リジット・・・イイじゃないっ!・・・」 と必ず感動する・・・間違いない!

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
車体の軽さは直ぐに分かる。元々軽い車体が更に軽くなると俄然自信が湧いてくる。特に中心から遠い所が軽くなるのは分かり易い。
幅の有るUSハンドルバーをドーン!と偉そうな感覚で握り、広いフットレストラバーを踏みつければ荒野を走る達人になれる。

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
アップライズされたエキゾーストシステムは魅力的だ。ズボンの当たりを気にしながらも堂々と走れる・・・只、容量の少ないサイレンサーだから、そのサウンドはロードモデルよりも幾分固く乾いた音がする。今回は新品だから尚更その傾向は強い。それも走らせる度に変わって行き段々と深みが増して来る。そんな違いを気にしながら走る事も楽しみのひとつなんだ。

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様
どんなモノでも、極端な思想の下で作られたモノは美しい。更に、時代感覚を大切に当時のコンペティションモデルに思いを馳せる事は少し高貴な感覚。自由にモノを作る時代だからこそ、私は当時の思想をリスペクトし1960年代の当時に戻り躍動していたあの時代のトライアンフ達を再現したい。只単に荒野を速く走れるモーターサイクルが欲しいと泥まみれになって走り続けた当時の若者の実際に迫ってみたい。だからこそ、今手に入らないコンペティションモデル達をこうして再現する事はまんざらでもないんだ。皆さんも一度コンペモデルのハンドルを握って思い切り走らせてみると良い。それも忠実に再現されたホンモノの姿で走らせてみるがいい 「・・・オリャーッ!・・・ドリャーッ!走ってやるーーーっ!」 こうしてアップライズされたエキゾーストシステムを引っ提げて汗する事はクラシックモーターサイクルの醍醐味だったんだと必ず思い起こすはずだ・・・
2018/05/31 布引クラシックス 松枝

1966 TRIUMPH TROPHY SPECIAL 兵庫県西宮市 K様


試運転コース


参考記録・・・

一般道走行距離・・・・・・・・・・198.5km
高速道路走行距離・・・・・・・・13km
総走行距離・・・・・・・・・・・・・・208.8km

使用ガソリン(プレミアム)・・・8.48L
燃費・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24.61km/L

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この記事へのコメント
中川様
この時代には低く短いUKバーハンドルとこのような高く広いUSバーハンドルの二種類が主なモノです。現在USバーハンドルは在庫有り、UKバーハンドルは取り寄せです。クランプ部分の直径は7/8インチでSRと同じです。
尚、購入の場合はinfo@nunobikiclassics.com までメールにて問い合わせください。個人情報等が公開されますので。では、宜しくお願い致します。
布引クラシックスクラシックス松枝
Posted by nunobiki_classicsnunobiki_classics at 2019年05月26日 19:24
ご返信ありがとうございます。ハンドルの名称などありますか?トライアンフではなくSRにつけたいと思っています。
Posted by 中川 at 2019年05月26日 18:21
中川様 T120R,TR6R等の車種を教えてください。松枝
Posted by nunobiki_classicsnunobiki_classics at 2019年05月26日 17:05
こちらのハンドルは売っていますか?
Posted by なかがわ at 2019年05月26日 16:06