2020年01月07日

布引ファミリーの皆さん「阿蘇山ツー」絶対おススメです!


「休み取ったので九州行きましょう!」 布引ファミリーのМ氏から突然連絡入り、いざ南国九州へ!…


大阪南港から新門司港まではこの「阪九フェリー」さん、神戸、大阪方面から一番遅い時間に出港します(平日18:30出港→翌7:00着岸)お勤めの方は便利。 そして、料金が安く船はきれい、雑魚寝のツーリストならバイク込みで片道9300円、博多、佐賀、長崎方面行くなら断然お得。阪九フェリーさんは→コチラ


旅の友は布引ファミリーの鬼軍曹松山氏、二十歳からトロフィー乗ってる生粋のトラ乗り・・・


昨夜、神戸六甲アイランドを出航、強烈な寒波が押し寄せ、普段波の無い瀬戸内海でも結構揺れた。それでも新門司港に無事着岸、いよいよ阿蘇山目指します。


と、思ったら突然目的地の絶景ポイントの「長者原」へ着いちゃいました、あれっ?・・・「やまなみハイウェイ」の道が余りに素晴らしく一気に走り切っちゃいました!・・・なので写真ないんです。 
噂には聞いてましたが実際に走って納得 「絶景スポットなんてどうでもいい、この道走らなきゃオトコじゃねえ、オリャー!・・・」 「ズバッバッバッ・・・カコン・・・ズッドゥーーーーン・・・ズバッバッバッ!・・・」 二人でコーナー満喫してしまいました、トホホホ・・・

やまなみハイウェイの良さの理由
理由その1・・・120度以上回り込むコーナーが何度も連続している!
理由その2・・・車体の動きやサスペンションの状態が確実に体感できる!
理由その3・・・コーナーリング中のエンジン特性を改めて感じ取れる!
理由その4・・・一度ミスっても繰り返し反復練習できる!
「こんな半サーキットコースみたいなとこ皆さんの近所にありますか?」

やまなみハイウェイの短所
短所その1・・・折角の景観が全くない事になってしまう…
短所その2・・・地元に対するリスペクトを時々忘れてしまう…
短所その3・・・年甲斐もなく走り込んでしまう自分が滑稽…
「充実した走りとは裏腹に人間の醜さが垣間見える…」

やまなみハイウェイのプチ結論
プチ結論その1・・・景色を見たくても結局見ない素晴らしい道だ!えっ?
プチ結論その2・・・一般人でも車体エンジンの状態を考察し放題な夢の道!
プチ結論その3・・・自らのライディング技術の立ち位置を確認できる!

最終結論・・・
「俺ってこんなに下手クソになってたんだ…」 結局、自分のウデの低下にショックを受け落ち込む魔の道・・・いえいえそんな事ありませんよ、素晴らしいところです!

「大観峰」付近での松山氏の走りは→コチラ

地図で確認してみましょう・・・

第一コースコチラ ←最初のここが最も楽しいです。
第二コースコチラ 
第三コースコチラ
折角訪れるやまなみハイウェイです。なんとなくタラタラと走っちゃもったいない。このみっつのコースを予め頭に叩きこんで走ってください。美味しい何処取りできますから・・・


初日の宿はペンション「南阿蘇 高原の家 ノア」さん。ここは素泊りで食事も風呂も外でその分格安料金、風呂は近くの外湯で「阿蘇白水温泉 瑠璃」さん、料金400円で温泉って安い!暖まりました・・・(ほっこり)
で翌朝、準備して出発と思ったら「火山灰降ってるのでこれで・・・」 と言ってペンションのオーナーさんがご親切にホースを貸してくれました。見ると車体にうっすらと火山灰が積もってる。「今日は多いから行く方向に注意してくださいね・・・」 と、アドバイスを、兵庫にはない火の国熊本の日常を学んだ瞬間でした・・・(オーナーさんありがとうございました。)
高原の家ノアさんは→コチラ白水温泉瑠璃さんは→コチラ
ノアさんと白水温泉瑠璃さんの位置関係コチラ


暫く走るとご覧の通り火山灰の雲が・・・これ、写真以上に凄まじい灰で黒のジャケットがグレーになりました(びっくり!)。予定していたミルクロード経由の左回りルートを断念、右回りルートに変更。で、途中の国道265号線にも良い道ありましたよ。特に北側のコーナーの連続はまるでジェットコースターのよう、兵庫県にはこんな道存在しません。まぁとにかく皆さん一度本気で走ってみてください。(ここも走りに没頭して写真なし、ごめんなさい!)
布引流快走路九州265号線編コチラ



そして、阿蘇山の中でも有名な絶景スポットの「大観峰」。ここもその名の通りの大絶景・・・


走って満足、停まった景色もまた素晴らしい・・・


松山氏の走りも段々と熱くなって行くのです…


(ここで補足・・・火口から火山灰が…さっきはあの噴煙の下に居た訳ですね…)

で、違う側面から見た布引流やまなみハイウェイ&プチミルクウェイガイドです・・・
・火山灰を想定して複数のコース設定を用意せよ!
・ここは地元の幹線道路、交通量の少ない早朝を狙うべし!
・コーナーの深さは特筆もの、是が非でも倒し込めフルバンク!

布引流快走路九州大観峰編は→コチラ

次に来る時の目標・・・
・次は、ミルクロードにケニーロード行きます!
・名の無い県道に良い道あるはず、開拓するぞっ!

布引ファミリーの皆様に更なるお願い・・・
こうした素敵な土地にも地元の車両や農耕車両もおられます。あくまで県外者の私達、謙虚な精神を持って事にあたらなきゃイケない。安全運転は勿論の事、いろいろなマナーにも気配りお願いしたいと思います・・・

・・・そして阿蘇の道を堪能した後、一路宮崎目指し移動しましたよ。
 

そして三日目宮崎の朝。この日はスケジュールの違いでふたりは別行動。松山氏は大分からフェリーで大阪まで。松枝は鹿児島志布志から芦屋を目指しました。で、ここは南国宮崎の日南海岸・・・


前日の阿蘇山とは打って変わって穏やかツーリング。ここではコーナーも何も必要ありません。只々海があればいいんです・・・


「ザバ~ン・・・シュワシュワシュワ~・・・ザバ~ン・・・遠くまで来たなぁ・・・」 空を見上げて芦屋をさがしてみたら、ひとかけらの気配すら感じない・・・「そうか、もうすぐ鹿児島に入るんだ…」 同じ日本の道なのに何故に異国と感じてしまうんだろう…来れた嬉しさと一つまみの緊張感を感じつつ走ったんだ・・・(涙)


「名前知らないんだけど…」 こんな素敵な花も見れましたよ。その昔波乗りやってた若かりし頃、ハワイで見た花と多分一緒、こんなの普通に咲いてるし・・・芦屋には絶対ない、とっても懐かし&超嬉しい出会いでした・・・


ところで、「愛のスコール」って皆さんご存知ですか?松枝実はスコールが宮崎県産だと言う事も知ってる程のマニア。気になってコンビニ覗くと 「オーッスッゲー!・・・」見つけてしまいました。「スコール 乳酸菌 ナタデココ&白桃」 これは兵庫県にはありません、流石の松枝もわくわく初体験です。(横は九州産クリームチーズ使用のパン)「チュー・・チュー・・」ストローで飲んでみました・・・「・・・えっ???…んっ??…分からん…ナタデココって必要あるのか?…白桃いらんわ なんか味が混乱しとるぞ・・・」 と、言う訳でスコール製品初の「ボーツ!」いくらスコールでも松枝 大却下です! 
松枝の現時点でのランキングトップ飲料「ひらひらミルピィ」は→コチラ


そして延々と続く海岸線を走ってみました・・・覗くと海が超きれい・・・


「寒気で雲が多いんだけど、なんでこんなに海きれいなんだろ・・・」


男のひとり旅、「・・・ズバッズバッズバッズバッズバッズバッ・・・俺って一体どこに向かって生きてんだろう・・・」 時には、人には言えないいろんな事考えて、この土地とは縁のない話しがグルグルと頭を駆け巡ってしまう事もある・・・「やるしかないさ・・・」 いろんな事に思いを馳せて走っていました・・・


そして、最後に突然寄ってみました都井岬、ここには野生の馬さん達がいるんですよ・・・


見えますか?山の斜面に、まるで奈良公園の鹿のようにいる馬さん達が・・・馬好きのマツエダが思うに木曽の馬さんとは目つきや仕草が違う。一見優しそうなんだけど、実は怖くて人間にも全く無関心・・・やっぱり野生ってのは強いんだなぁ…思いました。


で、沢山写真撮った後、帰ろうと走りだしたら、なんと道端に馬さんの親子が・・・ねっ、野生だから観光客100%無視状態そして・・・


急いで写真撮ろうとバイクに跨ってるからこっちは身動き取れない。「寄って来たらこえーなぁ…」と、そろりと通り過ぎようとしたその瞬間、前横切って来たのです「えーっ馬さん、マエとーるのーっ!」 そして、「ガーーーンッ!」と、ガードレールを飛び越えちゃう 「コエーッ!」 もうマジで怖いよ、大迫力でした・・・


まあ、そんなこんなで帰宅の途となりました・・・帰りは鹿児島志布志港発→大阪南港着のさんふらわあ。2017年位の新造船、この船大正解でした・・・


船に上がると係員さんが縛ってくれます。「こんにちは!」他にも大学院生のツーリング中の人とかホンダのカブで帰省する人とかとごあいさつ。船って社会の縮図、人それぞれいろんな事情があって精一杯生きている。「みんな頑張ってほしいなぁ・・・」思う訳です。


で、以前のフェリーとは重油の匂いと不快な音に振動、嫌いな人も多かったと思います。ところがこの新造船、きれい、静か、臭くない、揺れ少ない、船内の装備も充実と、これまでのフェリーにはない快適さなんですよ、皆さんおススメです。・・・只、ひとつ気になったのは食事。2000円のランチバイキング分かるけど内容が伴っていない。旅慣れた方はご自分で買い込んだ弁当やらおかずを広げて美味しそうに歓談…なるほどなぁと思いました。   さんふらわあさんは→コチラ


と言う訳で皆さん「阿蘇山やまなみハイウェイ&ミルクロード」マツエダ的には「星3っつ!」でした。とにかく道がイイ!景色が素晴らしい!(←お前に言われたくない?)本当は美味しいモノ沢山ある!三拍子そろった阿蘇山に皆さんも旅してみては如何でしょうか・・・ 2019.12.25 布引クラシックス 松枝
  

Posted by nunobiki_classics at 14:05旅をして来ましたよ!

2019年11月28日

嬉しい顧客からの便り…TRIUMPH T160 TRIDENT 東京都世田谷区Hさん


「先週末に久し振りの泊りがけツーリングにいってきました!」 2019年、今年の3月にレストア作業が完成したトライデント750。オーナーのHさんから連絡が・・・そして、「2日間で650km、長野の諏訪まで中央道でいってその後国道157号を南下、途中峠を混ぜながら浜松までいって東名で帰るコースです。天気に恵まれ紅葉も見事で最高でした!」 と・・・。


思い返せば・・・エンジンも丁寧に組みました・・・


英国ボーグ&ベック社製のクラッチ・・・かっこよかった・・・


リフト量の多いスペシャルカムシャフトに合わせたキャブレターのアジャスティングにギア比の選択・・・古臭さを感じさせない高速巡航性能をと考慮するも・・・


「ズゴォォーーーーーーーンッ!・・・ズゴォォーーーーーーーンッ!オリャー!・・・」っと、スピード出る出る・・・ 「・・・ちと、やり過ぎたかな?・・・まぁそれもいいや・・・彼なら大丈夫だ・・・」ってな話もあったような無かったような・・・ 


納車では、「取りに行きます!」っと540キロ先の東京世田谷まで帰ってくれた。それは正に布引スピリッツ・・・「来年、信州一緒に行こう!・・・」と、お誘いしましたよ。「これからもよろしくねHさん、トライデント大切にね、いつもありがとう・・・」 彼のレストア作業は→コチラ
2019.11.28 布引クラシックス松枝
  

Posted by nunobiki_classics at 12:57旅をして来ましたよ!

2019年11月04日

2019.11.01-03 信州こっそりツーリング、㊙報告です。


秋晴れの下、憧れの信州をこっそり走って来ました…


「車検出すのに東京から走って行きます!・・・」Y氏の依頼に「では、待ち合わせはROCKで!」 これがこの旅の始まり。松枝は兵庫芦屋からY氏は東京都足立区からそれぞれ自走で集合です。


ここは清里萌木の村にある「ROCK」、今やこんなに立派になったけど、当初は車輪のついた小さなログハウスでカウンターとテーブル席少しの小さな店。20代の頃訪れて食べたカレーの味とコーヒーは今でも忘れられない松枝の大切な思い出。久し振りにここのカレー食べさせて頂きました!ん~っ感動しました・・・(涙)。でも、ちとボリュームあり過ぎかな?感極まって意地で全部食べたら後で死にそうになりました!「ROCK」は→コチラ


11月のビーナスラインも春の陽気、「天空へ突き抜けるぞー!」って・・・


富士見高原辺りではこの景色!・・・兵庫県ではあり得ない雄大さ・・・「はぁ~気持ちいい・・・」


ここは八ヶ岳高原ライン、県道11号。松枝はこうした標高の高い雰囲気が好きなんです・・・


木立の感じが兵庫とは全然違うほどにオシャレ!「六甲山もいいんだけど、やっぱ違うよなぁ~信州いいなぁ~」なんて・・・でも、こうした自然も誰かが守っていてくれるからなんだ、静かに穏やかに走らせてもらう心を忘れちゃイケない「ありがとう、森を守っている人達、そして住人である動物たち・・・」


こうした信州の道って非日常的だから、なんだか走っていてもロマンチストになってしまう・・・


都会ではまだなのに、やっぱりここはもう秋なんだ・・・


ホンモノの牛さんにも会えました(後ろに小さく写ってる)・・・
※・・・今回使用させて頂いたストバイバック、とっても重宝しました!旅に便利なストバイ製バックは→コチラ)


そして、今回の旅のハイライト! 動物好きの優しい心の持ち主の松枝は馬が大好き。見てくださいこの愛らしさ!それでもつながれているのが気に入らず「ヒモを外して放してやりたいなぁ・・・」思います。


備えてあった「ポニーのおやつ」中身は切ったニンジン、300円を箱に入れて「ポリッポリッ!」と、彼に食べてもらいました・・・どんなモノに人生がある。人にもモーターサイクルも、そしてこの愛らしいポニーにも・・・あさって11月4日を最後にこのビーナスラインも閉鎖される。そしたら「もうこんな事しなくていいんだよ・・・」 優しい目の彼とお話ししましたよ・・・


そして1000キロを超える旅に、Y氏の愛車1955年のR50君もちゃんと走ってくれましたよ・・・ 彼の過去の作業その1→コチラ、その2→コチラ

そして機械式の点火装置にオリジナルの電装系統の純スタンダードなA65Tも頑張りました・・・


今回、少し時間を頂いて憧れの信州まで旅をさせて頂きました。機械式のモーターサイクルでもしっかりと整備すればこうして1000キロを超える旅にも悠然と頑張ってくれる・・・オーナーと愛車が正にひとつになれるのがこうしたロングツーリングであると実感させられた旅でした。皆さんも如何ですか?モーターサイクルを好きだと思うなら愛車と共に長い旅に出てみては・・・2019.11.04 布引クラシックス松枝

  

Posted by nunobiki_classics at 14:00旅をして来ましたよ!

2019年08月09日

マツエダ 39年振りに富士スピードウェイ行ってきました。


今は古いモーターサイクルの修理屋やってるマツエダも、実は10~20代の頃、全日本選手権目指してこうしたサーキットコースで走っていました。二輪はヤマハのTZ250で、四輪はフォーミュラーカーで走っていましたよ。


当時の1980年代には私のような存在が星の数程居ましたね。一つのカテゴリーに何と2~300台ものエントリーがあって僅か40~60台程度のグリッド目指してしのぎを削っていました。


私もそんな星の数のひとり、昼間は自動車整備の仕事して夜は筋力トレーニング、休みには月に1~2度の貴重な練習走行。毎日がレースの為の生活・・・「決勝に出たい!チャンピオンになりたい!」 ところが現実は予選落ちばかり・・・


それでも次第に予選通過ラインをウロウロし始めて決勝に出れるようになってくる。「やっだぞ、遂に俺様の時代が来たか!」・・・がんばって決勝進んでもいつも後方争いの常連組み「・・・まだまだおせ~な~・・・次がんばるぞー!」


そんな私が何を間違えたのか調子こいてトップ集団が見える位置まで走れるようになる・・・「オリャーッ!ドリャーッ!」 只本能のままに走らせる、「パァーーーーーン!・・・パァーーーーーン!・・・」 目で見たモノがそのまま直接手足に伝わる単細胞状態?!(写真は1970年後半の鈴鹿サーキットのコースイン、正面が私。廻りの人の服装が70年代!)


そんな時、不思議と音が聞こえない「・・・シーーーーン・・・」幾ら耳を澄ませてもエンジンの音が少し聞こえているものの風の音も何もない無音状態 オートメーションの機械のようにブレーキを踏み、ヒール&トゥーでダブルクラッチを踏み、超敏感なステアリングをあて込み、大きくアクセルを踏み続ける・・・本当に速く走っている時ってなにも聞こえない無の世界だと次第に知ったんだ・・・(これはFL500を走らせている私の写真。)


いつしか2位争いのグループなんかに混ざって走れるようになってからのあるレースで、自分だけが進んで行く状況にはたと気が付いた。まだまだ余力を残して最後に行くぞと走っていたのにグングン進んでトップが見えてしまった!「オッリヤーッ!表彰台いったるぞーっ!・・・」 馬鹿な事に調子こいてセーブしてたの忘れてもう全開状態。二位集団抜けて更に行ってやるぞといつもの根性出してしまった・・・すると、「パァーーーーーン!・・・・ガシャン!ドカン!・・・」 またもや自分を見失い得意技のクラッシュなんぞを・・・集中している時こそ無音状態の冷静沈着な空間の中で戦わなきゃイケないとそう学んだのに・・・本能だけで走る愚かな行為の典型だった・・・(鈴鹿のヘアピンで愛車のTZ250を走らせる私、結局今でもこの後方排気のTZ250が自分にとって生涯最高のモーターサイクルになる。)


それでもポイントを取るようになり最終的にクラスを上がったりもした・・・それは本当に一生懸命で今思うと人生を掛けていた。「全日本の有名なレーサーやライダーに俺もなりたい!」真面目に思ってました・・・ひとつの予選で250台余りが予選落ちする世界・・・私みたいな凡人には所詮無理な世界でした・・・


諦めてレースをやめた時、「なんて俺って格好悪いんだろう・・・」 夢を目指してやって来たのに何の結果も残せない自分が無様で穴があったら入りたい。だから人にはレースをやってたなんて絶対に言いたくなかった・・・


必死で走った鈴鹿サーキットに岡山のTIサーキットにこの富士スピードウエイ・・・惨めな自分を思い出したくもない・・・だから、やめたあの日以来どこのサーキットコースへも行かなかったんだ。


あれから39年、この日は東京出張の時間調整で、何となく富士のゲートへとハンドルを切ってしまいました・・・段々と近づいて鼓動が高鳴ってくる・・・いい年こいて 「行くのよそうかな・・・やめようか・・・いや・・・」


辿り着いた富士スピードウエイは余りにも変わっていました・・・ススキだらけの田舎のコースが近代的な超一流コースに・・・なにもかも整備され立派になっていた・・・


現役の頃には決して来る事のなかったグランドスタンドでひとりサンドイッチを食べてみた。「ファーーーーーーーーン!・・・」富士の長いストレートを眺めていると、四輪で昔のグランチャンマシンみたいなレーサーが走っていた 「俺ならアレがいいなぁ、やっぱりハコよりレーサーだな…」 ・・・


更に昔のコースとの違いをいろいろ捜したりして「変わったなぁ…こんなシケインみたいなの出来てるんなら突っ込み方変わるよなぁ…」 もう2度と走れる訳はないけれど、ちゃっかりその気になっている・・・


レースの世界は凄い。自動車整備士として、ひとりの社会人として、どれだけ私を成長させてくれた事か・・・あの何とも言えない緊張感の中、立ち向かえるだけの強さを無理やり仕立てて挑もうとしていた若かりし頃の自分・・・瞬時に物事を判断し絶対に失敗は許されないあの空気感の中で私は人間として大きく成長して行った・・・「あぁ~来て良かった。やっぱりサーキットっていいなぁ・・・」39年経った今、純粋に私は思ったんだ。


惨めで恥ずかしくて誰にも胸を張って言えない自分の崩れ去った青春。それでも今、四輪をドリフトさせて鈴鹿のS字を駆け抜けてブラインドのデグナーへ突っ込んで行った自分が・・・ヘアピンを抜けて5速全開で後輪が流れ更に前輪がアウトに流れ始めるスプーンコーナーへのアプローチ・・・シケインも何も無く只全開で耐えていた富士の最終コーナー・・・あの時走っていた自分が今、走馬灯のように蘇ってくる・・・「格好悪くなんかないさっ、結果はどうであれ、君はがんばったじゃないか!…」って、富士が言ってくれた気がする。勝手に目頭が熱くなるってのも久し振りの事だったんだ・・・   2019.08.09 布引クラシックス松枝  

Posted by nunobiki_classics at 21:02旅をして来ましたよ!

2019年05月26日

布引ファミリースパルタツー行ってきましたよ。


いつもブログでやってる布引流英国車講座、今回は実技編として実施。「英国車の性能を更に引き立てる走り方とは一体なんぞや?」・・・少数精鋭の布引ファミリー対象にいつもと違ったツーリングをして来ましたよ。(布引流英国車講座 ビギナー編中級者編上級者編実技編)


前回の淡路島ツーでは「モーターサイクルってのは後輪で旋回するんですよ!」…「前輪ってのは後輪に追従するんであって決して前輪で曲がるんじゃないんですよ!」…「だからこそ後輪を支配できる位置にしっかりとお尻を置かなきゃイケないんですよ!」…これを学びました。 淡路島ツーはコチラ


参加はトロフィースペシャルのМ氏とT90SC(500改)のH氏。もう教える事ないくらい上手に走れるお二人ですがそこは原点回帰。基本に立ち返って頂きました。


H氏のお尻の位置…分かりますか?この位置がコーナーでの旋回性に寄与する。タンクにへばりついてイキガッテいる貴方、次回からコーナーが見えたらここですよ!世界が変わります・・・


М氏の場合、エキゾーストパイプが股の間にあるのでスタイルが制約される。彼の場合は長身で足も長いからまだ良い方。足の短い人は、自分を良く考えてルックスを選択しなきゃいけませんね。


今回のコースは兵庫県民であるマツエダが楽しいコーナーのある道を厳選致しました。出来るだけ旋回時間の長いコーナーを選びましたよ。


ここは生野銀山のおひざ元、銀山湖。対向車に気を配り、その範囲で楽しませてもらうには絶好の場所。春の新緑、秋の紅葉…モーターサイクリストを楽しませてくれます。お近くの方、是非一度訪ねてみては…


そして、今回のお題は…「フットレストワーク!」 折角後輪寄りに移したお尻でも、只単にドテッと座ってるだけじゃ不安定極まりない!・・・それはフットレストワーク、皆さんの足の裏を如何にして使うのか?…お尻よりも分かりにくい足の裏…実はこれが楽しいライディングのカギなのです。


「いいかお前たち!コーナーの旋回ってのは足の裏だっ!そして内ふくらはぎ!ヒザ!肘の感覚!でマシンをホールドしろっ!・・・要するに下半身で支配するんだそ!…」 「ドデンッと座る奴があるか、中腰だぞチュゥゴシッ!」  マツエダが熱くゲキを飛ばし皆を促します。「フットレストを踏む???…こうか?…こんな感じか?…中腰ってこんなのか?…」 コースの途中でコーチングです。


H氏の足の裏が強くフットレストを意識している事が分かりますか?・・・そうです、コーナーを旋回する時に皆さんはシートをお尻で強く押し付けようとします・・・それは最終的に間違いです。強く押し付ける場所は「フットレスト!」、そしてお尻は中腰で下敷き一枚スッと入る程度に浮かし気味にし、あくまでフットレストに強く載せ車体の重心を下げる事が本当なんだ。


こうしてコーナーの手前になると後輪側に着座しフットレストに体重を載せる意識を持ち身構える事が大切。安全に楽しく走る為の基本です。


で、「布引流英国車上級者たる者、クレバーになれ!」・・・ここからがミソです・・・これはトライアンフのユニット650の車体の中枢部分、スイングアームの取付部です。プリユニットモデルならこの状態のまま、メインチューブに十字型についているだけの華奢な構造…ユニットモデルになってここに補強するプレートが着いて剛性を補うようになるものの、ボルトで締結する事が主な低剛性フレーム。


先の補強用にプレートはそれ故にボルト穴に密に接触する専用の穴とボルトを使う事と配慮され、プリユニットモデルから劇的な性能アップを遂げた。


そのプレートの管理はユニットトラの所有者の知るべき大切な場所。写真のボルト&ナット類が正規のモノで布引製のユニットトラには正しく取り付けられている。それは穴との接触面にネジ山の無いフラットな面がある正規品、更にはこれらの向きにも意味がある。1965年辺りではこれが正しい取り付け方だ。


トライアンフのユニットモデルでは、きつめのコーナーや段差など比較的低い速度域で症状が出る。スイングアームはもとよりメインフレームとリアフレームの締結部に捻じれが出る。


そして、剛性の極端に低いフロントフォークは曲がり、元々の動きの悪さと無いに等しいダンパー性能故に路面からの衝撃とはチグハグな動きとなり暴れだす。


更に、制動性能も低く前後のバランスを上手く取り損ねると俄然停まらなくなるから違う意味の緊張感も要る・・・現行車からすれば製品化さえ全くもって難しいレベルだけれども、こうした一連の動きが悪いと言うのならとうの昔にトライアンフなど消滅している…世界中に愛好家が絶えないその理由とは、この軽量且つ低剛性さが実用速度域で限界を見せてくれる事…且つ一般人にこそ扱い易いシロモノである事…それによって忘れていたモーターサイクル本来の醍醐味を呼び覚ます事が出来る事…そしてその根源とは細いパイプにボルトで締結された弱いフレーム、要であるスイングアームの取付部のモロな貧弱さ等による低剛性設計からもたらされていると知って欲しい。


対してこれが A65の同じ場所。歴代のBSAの車体構造は溶接(又はロウ付けもある)で強固に接続され幅の広いメインフレームにスイングアームがガンッと取り付けられる高剛性フレーム・・・トライアンフとは全く対照的な構成に思想。一見なんて事ない景色に見えるが…


そのA65の走りとは・・・これがトライアンフとは全く違った景色を与えてくれる。剛性の高いエンジンを剛性の高いフレームに積むが故に走りの神髄が見えて来る。自分のスロットルワークが見事なまでにリアタイヤの接地面と直結するかの如く支配できる。ゴールドスターに始まるBシリーズにこれらAシリーズが目指した共通のコンセプト。・・・しっかりとしたエンジンに車体、いやがうえにも着座位置を後方に取らせるその車体レイアウト。一度スロットルを全開にした時には「オーッ・・・なるほどーっ!・・・」高いレベルの上級者であればある程、断然納得できる世界がそこに広がっている…


皆さんが考えている以上に低剛性なトライアンフ、皆さんが気がついていない超高剛性なBSA系フレーム。どちらが良いとか言ってる訳じゃない。トライアンフは低剛さ故の至福の時がそこにはあり、スロットルワークの妙がA65にはある。結局のところモーターサイクルってのはどんなモノでもそれぞれに良さがあって、どれも楽しいモノなんだと言いたいんだな。


で、今回のおさらいを致しますよ。「モーターサイクルとは後輪で旋回するモノだ!」 これ前回の淡路島ツーで言いました。そして今回は「コーナーリングとはフットレストに体重を載せ中腰で旋回するべし!」 先にも言ったように今回の話は分かりづらい。けれど、このレベルの高い二人ならソロで走っている時にも「はっは~この事か…」と何れ気が付くはず。その時の礎になる日が今日なんだ。


では、皆さんにもお願いしよう…ルックスに気を配る事も大切だけど、自分の愛車をもう一段深く見つめ直すことも必要じゃないかな?…「フレームは他とどう違うのか?…エンジンってどう積まれているのかな?…フレームがボルトオンと溶接の違い…電気溶接とロウ付けって…スイングアームの取り付け方も違うのか…」 


私はそもそも愛車を溺愛しろ!と皆に強く言っている。その中には洗車も保管もあるけれど愛車の得意不得意を把握してやる事も含まれている。人間にも得手不得手があるように英国車にもそれぞれの特徴がある。トライアンフの強い部分に弱い箇所、A65の強い部分に弱い箇所…古いモーターサイクルだからこそ愛車の不利な面は守ってやり、得意な部分を共に楽しませてもらう…それがクラシックスモーターサイクリストの基本中の基本。自分勝手に走っちゃイケないといつも言ってるだろ?


どうだい?次の休みには愛車を磨いている合間に少し構造を理解してみては?ブリティシュが好きだと口だけで言う人間にはなってはイケない。隅々の特徴を理解した上で積極的に走らせる事…それを愛車は待っているんだ… 「布引流英国車上級者たる者クレバーになれ!」是非お願いしたいと思いますよ…2019/05/26 布引クラシックス松枝



  

Posted by nunobiki_classics at 13:39旅をして来ましたよ!

2019年04月21日

2019春の布引ファミツー「春の淡路島」行って参りましたよ。


今年最初の布引ファミリーツーリング・・・当日は兵庫北部が雨模様のため、再び淡路島に変更致しました。


今回は早めに昼食をとり、午後の走りに備える作戦・・・もうおなじみのあわじ市大磯港にある「渡船食堂」さんへと向かいました。


そしたら、なんと「本日解禁!あわじ名物生しらす丼」 って事になってました・・・朝一に行ったにも関わらず大勢のお客さんが来られてましたよ。


大衆食堂には欠かせないおかずの棚、好きなモノ選んで「チンッ!」します。(ここから3枚は2014年の淡路島ツーの時の写真です。)


都会の京阪神地区に住む我々の食卓には無い新鮮な魚はやっぱり美味いですね!


但し、店内狭いのと、女将さん声デカくて怖いのと上から目線的営業方針が・・・でもこれでイイんです、この荒々しさがまたイイんですよ。渡船食堂さんはコチラ、以前の渡船食堂さんはコチラ


今回の布引ファミツーのメンバーは、トロフィースペシャルのМ氏。ガンガン走る切り込み隊長。彼の作業はコチラ、試運転はコチラ


プロダクションレーサーのH氏。彼も走ります、放っておけばスクリーンに身を伏せてズッドーン!っと行ってしまいます。彼の作業はその1その2その3、試運転はコチラ


BSA A10RTのH氏。高級住宅街の帝塚山で大きな顔してる彼も走ります。「噂の全開ライダー」おとなしいA10に鞭を打ちこちらも勝手にズッドーン!と行ってしまうのです。彼の作業はコチラ


今回初登場のコマンド750SのМ氏。彼も乗り物好き、コマンド以外にも二輪四輪共にいろいろ持っていて、とにかく走るの好きなんですね・・・彼の作業はコチラ


そして最後にマツエダの5名。真ん中のが松枝のスペシャルコマンド。理不尽なアーリーコマンドを松枝のノウハウを随所に投入し楽しく走れるモノとなってます。エンジンは「ズッドーン!」 車体は「ズドゥーン・・・ズドゥーン・・・・・・シャーん☆彡・・・・・・ズバッズバッズバッズバッ!・・・」 だけれども英国車らしさはドンと居座っている・・・一見すると全くのスタンダードなんだけど、超快感マシンとなってますよ。(内容は㊙)
このような少数精鋭のハイレベルなメンバーで構成される布引ファミリー・・・走りも大胆且つ繊細なジェントルマン達・・・質の高い一日を過ごしました・・・

という訳で、皆さんも是非近場のショートツーリングとして兵庫県民の青春の島・・・淡路島を訪ねてみては如何でしょうか?・・・

※・・・次回は5月24日(金) 青い海を見に行きますよ。詳細はコチラ。では・・・2019年4月19日 布引クラシックス 松枝




  

Posted by nunobiki_classics at 13:21旅をして来ましたよ!

2016年04月16日

亀八食堂行って来ましたよ!


「あした、亀八行く?」 突然の誘いに 「行きまーす!」 急遽プチツー行ってきました。参加者は「布引クラシックスゴージャス倶楽部」会員で参加可能な4名です。


今回のテーマは我が英国車各メーカーを倒産の危機に追いやった張本人 「ホンダCB750を囲む会だっ!」 オーナーの原田氏を囲んでいじめてやるぞっ!始まりました。


参加車両はもちろん全車快調!快適に走行しています。 そんな中 「松枝さん! 原田さんのホイールになんか挟まってる!」 隊長松山氏が私を追い越しお知らせを。良く見ると原田氏のホンダのチェーンに大きなビニール袋が結構な勢いでガツン!と挟まってる! そこでメンバー全員で 「ざっまーみろーっ!」 皆でいじめてやりましたよ!


快晴の名阪国道を走り、途中伊賀辺りで地道の国道25号線に降りローカル駅 「関西本線 加太駅」 に立ち寄ってみました。写真は二十歳そこそこからこのトロフィースペシャルに乗るご存知トラ野郎の松山氏、直近の作業はコチラ 試運転はコチラ


コマンドのプロダクションレーサーにT90SCを所有。それ以外に四輪車を含め多数の車両を所有のゴージャス氷見氏。バイク車の所有とモータースポーツ参加…趣味多すぎ! 以前の修理作業はコチラ


こちらは本日の主役、CB750Kを所有の某広告会社代表取締役社長の原田氏。松枝と高校生から走り廻っていた噂の「全開ライダー」。4シリンダー4本マフラーのホンダサウンドが大のお気に入り。太いホンダサウンドを残し今日もスロットル全開ですよ!納車整備はコチラ

そして、これが布引クラシックス社長のわたくし松枝。いろいろ所有してきましたが最終的に今はこの1970年のコマンドに。エンジンもスペシャル、車体もスペシャル。オリジナル性を大切にしながらも素晴らしく楽しいコマンドに仕上げてますよ。

 
同い年の私と原田氏が知る当時の加太駅周辺は当然の事「SL」が煙をモクモクと吐いて走ってましたが、とっくにそんな景色は無くなりました。シーンとする誰も居ないホームを歩いていると 「カンカンカンカン・・・・」 そこに偶然列車が到着 架線が無いから当然ディーゼルカーか? なら「ガラガラガラガラ・・・」 黒煙上げてくれるのかと思いきや 「シュ―――――」 っとホームに進入。 「ヒュルヒュルヒュルヒュル・・・」 と発車して行く・・・昔と打って変わって排気音も随分と洗練、黒煙なんて一切出ませんでした。ん・・・これも時代の流れなのか、ちと寂しいかな・・・

そして国道1号線を走り目的地の「亀八食堂」に到着(写真は前回のモノ)。新しくなった店。どこもかしこも汚い昔の店が懐かしい・・・そう思うのは私だけでしょうか?・・・亀八食堂の紹介はコチラ

「トンテキ8人前!ホルモンB3人前!白玉うどん3人前!ごはん大×3ヶ!小×1(松枝用)、豚汁4人前!キムチ白菜きゅうり各一!」 これが大人4人分の完璧な注文の仕方!是非参考にしてくださいね。牛肉頼んじゃダメですよ!

そして、午後の走りを楽しもうと思ったら、突然の気温低下・・・夏日を予想していたメンバーを真冬並みの 「鈴鹿おろし」 が襲います。もう、ツーリングどころの話ではありません。写真なんて撮れる訳がありません。 「寒い―ッ!」 「死にそーっ!」 そのまま大阪神戸方面へと一路家路を目指して「帰るぞ―ッ!」 なんと 「CB750を囲む会」 は結末を迎えずお開きとなりました!? (後で調べると気温5度でした!)と言う事で今回は中途半端な報告になってしまいましたよ。次回はもう少しマシな報告をしたいと思います! で、とりあえず皆さん 「亀八食堂」 今年は仲間を集めて必ず一回は行ってくださいね!めっちゃ美味いですから・・・では!松枝

走行距離(兵庫県芦屋市から)   271.4km
使用ガソリン          計測出来ず
燃費             計測出来ず

往路のルートは以下です。


復路のルートは以下です。
  

Posted by nunobiki_classics at 16:39旅をして来ましたよ!

2012年11月22日

三重県亀山市 亀八食堂と青山高原の旅


春の快晴の日に、ローソクで有名な三重県亀山市を目指した。
ここは新名神高速道路の土山サービスエリア。
朝8時頃に神戸を発って阪神高速道路神戸線-名神高速道路-新名神高速道路のルートでここまで来た。
空は快晴。寒い冬もすっかり終り暖かで気持ちがいい・・・

今回同行のトラ乗りは、常連の松山氏。トラに乗って10数年。
トロフィーをこよなく愛するナイスミドル(こういう言い方って古い?)だ。
彼のトラは、1968年のトロフィー。
ボンネヴィルではなく、トロフィーにこだわっているところがイカシテいる。
走りも熱い。私も相当走れるが、彼も上手い。
うちの顧客は皆さん上品な人が多く、モラルを守ってくれて紳士的だ。
彼の振る舞いも礼儀正しくとってもクール。それが有り難い・・・。

ここが「亀八食堂」だ。建て替えられている(タララ~♫)・・・ひどくショック・・・
正直きれい過ぎて80年代の往時をしる者としてはびっくりだ。昔の暗くて汚い方がよかったかな。
当時の店の壁にはビール会社のお姉さん達のポスターがバンバン貼ってあって(最近めっきり見なくなった・・・)、肉やタバコの煙がモウモウと充満し向こうの客が見えなかった位だった。
だから決してきれいな服では入れない!
あの雰囲気が懐かしい。

それでも中身は変わっていなかった。鉄板も四角い以前のままだ(うれしい!ヤッホー!)。
ここは、赤みそ文化圏内。八丁みそのタレが旨いっ。
常連の通は肉を豚肉に限定するらしいが、ここは普通にロースとカルビを注文。理由はこうだ。
普通焼き肉屋の場合肉の旨さを売りにする。我が地元だともちろん神戸ビーフだ。
しかし、亀八食堂の場合肉はマズイ!(笑)
何の肉だろう?国産牛でないことは確かだ。で、見た目も悪いし更に焼いてしまうと肉の違いが分からなくなる。それくらい味が不鮮明。
だからホルモンAとかホルモンBとか壁に書いてあっても、あえて怪しい肉は頼まない。いや頼めない!
なんか恐ろしいものが出てくるような気がする(この時自分が小心者だと気付いた・・・)。
そして大量のキャベツ(野菜とタレとかは自動でついてくる)に隠れて見えないがドロっとしたこげ茶色のタレと固形の白いラードが大量に入る(体に悪そー!)。
次はお茶碗の白いご飯。焼き肉の醍醐味とは白いご飯に肉を乗せてかきこむ事!
しかし、ここのご飯はメッチャまずい!!そこいら辺りの古米を使用し噛めば噛むほどまずくなる!
だから私は嫌いなのについ頼んでしまう・・・
その上が有名な白玉うどん。もう何十年もこのブランド。けど、ただのゆでたうどんで味もしない。
最後に残ったタレと絡める。中華麺もあって、ご飯を混ぜる技もあるようだ。
下の味噌汁はぬるいし味も薄い。豚汁の方が具があって少しましかな・・・。
左上の四角い小鉢は白菜のキムチ。これも辛くなくてキムチ好きには普通の漬物か?
右下の半分見えているのは水のコップ。
例のカップ酒の空き瓶にセルフで入れるやつだ。大丈夫、水は普通に水だ。
結構悪口を言ったが心配する事は無い。
こんなにまずいものがあの黒い味噌だれと大量のラードと共に掻き混ぜて焼くと一瞬にして絶品の旨さに変わる!
これが亀八食堂の凄さだ!

ゴルゴ13のオヤジさん(みんな知ってる)がドサッーと全部一気に入れた途端、みんなで掻き混ぜる。
これがここのルール。理由はタレが味噌なので一瞬にして焦げるから。
とにかく忙しく混ぜる。
「まぜる! まぜる! まぜる!」 
火が通ったらコンロをセルフでとろ火にして・・・そして食べる。
「美味い!」
具を例のごはんに乗せて口一杯にかき込む。
「美味ーい!」「カメハチ サイコー!」
なんだかんだとほぼ食べつくしたら白玉うどんを入れる。
個人的には早めに入れてしまうが、ゲストと一緒の時には慣例のごとく最後に入れる。
これも焦げるので「まぜる!」
そして…喰う・・・「美味い!」
これは、何となくまったりと舌に絡んだ今までと違う食べ物だ。
これもやたらと美味いので食べ過ぎる。
ラードの量も半端じゃないので、はやる気持ちを押さえて少なめに頼むことがポイントだ。

そして全て喰い尽くしたら、帰りにレジでこう言おう。
「お姉さん、チューインガムちょーだい!」きっと生き返るはずだ!

食べるのに予定外の体力を使ってしまった亀八食堂を後にして、関西の軽井沢青山高原に向かう(その昔やたらとコマーシャルしていた。ほんとかよ!)。
何気ない県道を走っていくが、やたらに気持ちがいい。
景色も良く、直線と緩いコーナーの組み合わせがモーターサイクルの周波数とシンクロする。

途中のガソリンスタンドで給油をするも、スタンドのお兄さんと何やらバカ受け。
内容はすっかり覚えていないが、やたらと楽しいひと時だった。
「店員さん、ありがとう!」

そして、青山高原到着。ここを走ったのはおおよそ25年も前になる。
昔は有料道路だったはずだ・・・
今は、料金所もなく、路面も荒れて寂れていた。
すがすがしい風が妙に寂しさを運んできた・・・
当時サーキット状態だったこの道も、走るバイクも、クルマすらいない。
林立する風車になんだかタイムスリップしているような感覚にさせられた・・・

今日の目的の「亀八食堂」で食した満足感は120%。
ゴルゴ13のおじさんも健在だった。
新しい新名神高速道路も走れた。
寂れた青山高原道路には多分な憐れみがあった。
楽しいガソリンスタンドのお兄さんにも出会えた。
私のコマンドも、松山氏のトラも健気についてきてくれた。
小さな旅であるけれど、大切な私の財産になった。
大きな事をするよりも、こんな旅を少しずつ重ねていきたい・・・
春の陽気にのせられていろんな事に感謝の気持を抱いた。
そんな大切な旅となった・・・

ルートを地図で確認したい方、こちらをご覧ください。
題名のところをクリックしてください。
  

Posted by nunobiki_classics at 14:20旅をして来ましたよ!

2012年10月11日

ずっと気になっていた奈川村の小さな店


長い間、ずっと気になっていた一軒の店がある。
長野県奈川村、乗鞍の麓にひっそりと佇む小さな店 「手打ち蕎麦こばやし」


25年前、私はテントひとつ積んで愛車と共に一人旅した。上高地から乗鞍高原を訪ね、初夏の深い山々を散々走り倒した。
喉は渇き、腹は減り、疲労困憊、時に走り過ぎてしまう一人旅…そんな典型的な状況に私は陥っていた。
乗鞍の山を下ってどうしようかと、とにかく一旦コーヒーでもいれて休もうか・・・・そう思った矢先、突然この店が私の目の前に現れた。


エンジンを止めると辺り一面静寂に包まれる。酔いしれていたたサウンドも、ここでは只のノイズだ。
申し訳ない気持ちと共に店の中に入ると客は私ひとり。暫くすると店主が注文を聞いてくれた。蕎麦を喰うならせいろだ。しかし、冷えた体にそれはできなかった。待つ事30分、そばを打ち茹でる時間に丁度だ。冷たくなった手のひらをぴったりと器に合わせ、つゆをすすった。
「ズッズズズズ・・・・・・・」
一杯のそばがこれほどまでに美味いと思った事....一杯のそばにこれほどまで感謝した事....それは私にとって生まれて初めてのことだった。
そして、また必ず来ようと何の裏付けもないままに店を後にした....


あれから25年後の今日。私はその「蕎麦屋こばやし」を訪ねようと愛車を走らせた。いつものようにひとしきり走りそのブリティッシュなサウンドとバイブレーションに陶酔した。
「ズバッバッバッバッバッバッバッバッバ・・・・・」
途中、お気に入りの場所に立ち寄った。私の大好きな日本海、福井県の越前海岸だ。ずっと続く海岸線…海に沈む夕陽は文句無い絶景だ。


碧い海、白い雲、香る潮風 日頃の雑踏を忘れるための役者は揃った。これからどんなシーンが待っているのか・・・心が踊る。だが、古いモーターサイクルでの旅では、自分勝手に楽しんではいけない。ソロのツーリングで自分を守ってくれるのは跨る相棒だけだ。
「今朝の調子はどうだ?....何かあったら.....俺に任せておけ.....」愛車を労わり、そう言葉を掛けながら走る、それが英国車乗りとしての心得だ。


陽も高くなったので昼食をとることにした。福井県と言えば越前そば、中でも知れているのがこの「森六」さんだ。昼も過ぎていたので、迷わず入る。そして、越前そばと言えばおろしそば。辛み大根に鰹節が乗り、つゆを掛けて食べるあれだ。ここでおろしそばを喰わずして何を喰う。扉を開ける前から決めていた。ところが・・・・


一応、品書きを見ようと目を通すとあらぬものを見つけてしまう。
「スペシャルせいろ・・・・?」と書いてある。
店の女性の方に尋ねると「この地方の特産の薬味がつくんですよ・・・」薬味好きの私には酷な選択だ。
あれだけおろしそばと決めていたのに、結局このスペシャルを頼んでしまった・・・・。優柔不断ではなく苦渋の選択と言わせて欲しい・・・


店内とスペシャルせいろ。薬味にねぎとわさびと柚子とウニがつく。のど越しの良いそばと各種の薬味。特に柚子は風味も爽やかで抜群に合う。この地方特産の固めのウニもいい。ひとしきり美味い蕎麦を堪能した・・・・・
しかし、どうしてもおろしそばが脳裏に残る。「・・・・帰りにもう一度寄って、おろしそばも喰うか!」適当に納得させた。けれども帰りに寄れるはずもなく、結局喰わずじまい。「初志貫徹!」一度決めた事を変えた自分が悪いと反省しきりだった・・・・。


さあ、食事も終えて意気揚々と出掛けよう!「森六」さんを後にして飛騨高山を目指した。いよいよここからが本番、この旅の始まりだ。そして通るこの国道158号線もなかなかのナイスロード。大野市街のバイパスも完成し山間部にダイレクト。特に九頭竜ダムを越えてからの道は適度なカーブと山の雰囲気がその気にさせてくれる。更に岐阜県側の国道156と158号線も素晴らしい。ひるがの高原の辺りは高所の雰囲気も気に入った。この後、宿に向かうため少しペースを上げて走り続けた・・・・


そして最初の宿、飛騨高山の「山久」さんに着いた。時間は夕方5時半頃。ここは、一人での宿泊が可能なのと、愛車を屋根のある駐車場で保管してくれると言うので決めた。一昔前の宿では一人だと断られ公共の宿やキャンプしか手立てがなかった。不景気の副産物、恩恵を授かろう。
そして、宿の人が言う場所に愛車をそっと運んだ。 「ここなら安心だ…ゆっくり休めよ…」 静かに横たわる愛車を見届けて部屋に向かった。


コンパクトな部屋だが、一人には充分だ。窓の景色も高山の街並みを見おろし風情あり。結局、今日の走行距離は420キロ。アマルのツインキャブレターに乗る同士なら、その右手の疲れが想像されよう。早く風呂につかり自分の体も癒してやりたい・・・。


風呂の後は食事だ。写真の右上のものは、朴葉味噌で味付けされた飛騨牛のなべ。そしてこの他に天麩羅とめしがつく。写真では大したことは無いかもしれないが意外に量が多い。折角作ってもらったものだからと完食しようとするが、結局天麩羅には手もつけられなかった。申し訳ないと思いつつ 「板前さんご馳走様、ありがとう・・・・」 造って頂いた心に感謝した…


そして、就寝までのこの後の時間が私はとても好きだ。今日の一日を回想する。道のひとつひとつ、風景の一場面ずつを心に思い返してみる。コマンドのグッドバイヴレーションにグッドサウンドをもう一度心の中で楽しんでいる。こうして日暮れの様子を見ていると心が洗われる。今日一日を愛車と共に無事に過ごす事が出来た。明日は、どんな一日になるんだろう・・・・弾む胸を抑えて眠りに着いた…


生きている証を求めて走り続けた飛騨の山々。それは自分を見つめる大切な作業なんだ。
飛騨の朝は冷たく、身の引き締まる思いと共に宿を後にした。地図では何の変哲もない国道も私にとっては大切な思い出の道。アスファルトの一枚一枚を、走り去る景色の一場面一場面を心に刻みながら乗鞍の高地を目指した。すると突然見たことも無い立派なトンネルが現れる。私はブレーキを掛け止まった。 「こんな道、通る為に来たんじゃないさ.....」 そして、旧道を捜そうと記憶を辿るが思い出せない。暫くして 「あーっここだ!」 私は、スロットルを大きく開け、細い小道を掛け上がった。


今は通れない乗鞍スカイライン
着いたのはここ。乗鞍スカイラインのゲート手前。昔は通れたこの道も、今はもう一般車両通行止めとか。高地特有の低く白い雲と爽やかな湿度のひんやり感がヘルメットをとる頬を包む.....自然環境保護の下で、こんな爆音と排気ガスを撒き散らしていては洒落にもならない。お前の来るところじゃないんだよと、山の神様の声がする。だからゲートまでは行けなかったんだ。


穂高の北アルプス大橋
そして、穂高を目指した。知る人ぞ知る北アルプス大橋に着いた。さすがに高地の天候はめまぐるしく変わる。雲が掛かっていたと思うと突然晴れる。荒い迫りくるような斜面に標高の高さが伺える。植物をも受け付けない険しい山々。見ているだけでジーンとくる。


橋を横から見るとこんなだ。写真よりも断然大きく、よくもこんな秘境の地にこんな巨大な構造物を作ったものだと感心する。この橋の向こうにはヘリポートがあって、恐らく冬山の遭難救助に使うんだと思う。こんな険しい山の中で、救助活動をするなんて、凄まじい仕事に就いている人もいるんだなと思うと.....自分の仕事など、容易い事なのかなぁと思えてしまう.....


路に寝そべって空を見上げることの素晴らしさ。普段忘れたことが見えてくる。
橋の袂の路面に仰向けになって早い動きの雲達を眺めてる。日常では有り得ない風景を何も考えずに見続けた。25年前の自分では、いつも何かに葛藤していた。いつも何かと戦っていたと言った方が良い。それは今でも変わらない。けれど、多少なりとも人生経験を積んだ分、幅や奥行きが見えてくる。 「どうせなら、質の高い人生を送りたい。」 手間の掛かるブリティッシュに乗る事もそれだからだ。
ひとしきり物思いにふけリラックスした後、穂高の山を再び見た。すると必然的に思うんだ。 「いけないなぁ....ちゃんと見られてんだよなぁ....」 日頃の己の邪念の多さに、自分を戒めた。


忘れ去られた安房峠は今も輝いていた。ずっと変わらない私の大切な路。
再び国道158号線に戻り、安房峠から平湯温泉に向かう。ここがまた私の大好きな道なんだ。今は有料道路ができトンネル一本で峠を越せる。だが例のごとく、昔の道を頑なに走りたい。また入口を捜して、目指した細い国道を掛け上がる。中に入ると何も変わっていないと直ぐに分かった。 「あーっここだっ 」私は俄然嬉しくなった。森林浴ではない何か凄いものが降り注いでくる。太陽の強い陽射しのようにキラキラと輝いた何かが私の視界を支配した。 「ズバッバッバッバッバッバッバ.....」 何にも代えがたい時間を今過ごしているんだと強い気持ちをもって走った.....
暫くして、愛車を止め廻りを良く見ると、木々が薄く色づいている。 「あーっ紅葉もこれからだなぁ....」 こうして度々立ち止まって、度々景色を見るものだから全く先に進まない。でも、それでいい。走る為だけに来たんじゃない。大切なものを求めに来たのさ....


白樺峠。険しい山々が一望できる大切な場所。
その昔、黒く尖った山を見るのが好きだった。同じ景色を見ようと楽しみにしていた。 「ここ、ここっ!」 勇んで愛車を降りる。しかし、前に生えている木々が大きく成長して何も見えない。それは只の雑草の中だった。 「そりゃぁそうさ。木も成長するよな....」 期待外れも旅の粋。楽しさを持って先に進もう!
再び走りだしてから、随分長く同じような峠道を走っている。 「しかし、遠いなー」 すると、やっとのことでこの林道が終わった。 「この辺りだったかなぁ」 意外に記憶と合わない。段々と鼓動が高鳴っているのが分かる。 「どこだったんだろう?」 捜しても捜しても見つからない。ずっと捜し続けたその最後に、はっとあの面影が飛び込んできた。


なぜだかずっと心に残っていた「手打ち蕎麦こばやし」
目の当たりにすると緊張感が走った。腹が押され胸の奥で息を呑んだ。

「....やっと来たんだ.....」

顔を上げ見渡すと何も変わっていない。店も、扉も、前の道も、廻りの景色も、何もかも変わっていない。勝手に変わっていないと信じていたけれど、本当に変わっていないなんて思いもしなかった。25年、四半世紀も経っているのに.....まるでタイムマシーンの中に居るようだった。


「.....」 エンジンを止め、ゆっくりと近づと、人の気配はない。生活感のない扉の中には「本日休業」と札が掛けられていた。「あの時の店主は健在なんだろうか?」 旅立つ前から、気になっていた。 「今でもそばを打っているのかな?それとも.....」 いろんな事を思っていた。


今の時代だから調べれば簡単に分かる。けれど、25年前の出会いを私は大切にしたい。突然出会った店だから、ずっとそうであるべきだ。蕎麦を喰えなかった事なんかどうでもいい。自分の記憶だけを頼りにやっとの想いで訪れて、たとえ休んでいてもそれでいいのさ.....出会いとは、思い出とは、そうあるべきだ.....と、私は思う。暫く無心になって、当時の事をずっと回想した… 
「おじさん、また来るよ!」 顔すら憶えてもいない店主に勝手に挨拶する自分に失笑しながら店を後にした。


その時がどうであっても、必ず戻ってくると約束した。
私は景色も見ずに、只淡々と走っていた。 「いやっ、きっと元気なはずだよ!、次がどうであれ、また来ればいいさ!.....さあ行くぞっ。この路がまた良いんだよ!」 私は気持ちを切り替えてスロットルを大きく開けた。
「ズバッバッバッバッバッバッバッバッバッ.....」
私の右手の動きに輪を賭けて、相棒が一段と力強く路面を蹴ってくれている。
「そうか.....お前も分かるんだなぁ......ありがとう....」

そう、奈川村から野麦峠を通り361号線に通ずるこの県道は変化に富んだ素晴らしいところ。途中狭いところも多く大型車がいない。普通の四輪車にも殆ど出会わない。因みに二輪車にも全く合わない。独り占め状態の中、山を、空気を、景色を、脳裏に叩き込んだ。


観光地にはしたくなかった野麦峠
ずっと走り続けてやっと野麦峠に辿り着いた。その昔、テレビで有名になって出来た立派な記念館には閉口する。それよりも、こんな細い山道を昔は歩いていたんだ。 「小さな少女たちが、こんな細い道を歩いて、遠い山を越えて行ったんだなぁ....」 モーターサイクルに跨り簡単に来るようなところじゃないんだよと、その重みを感じた。


こんな山の奥地でひっそりして居られる事の不思議
そして、振り返ると私の大好きな風景が広がる。野麦峠から見る御岳山だ。残念ながらこの日は朝から天候が悪く、こうして多少でも覗けて良かったと喜んだ。誰も居ない野麦峠。人に邪魔されずにいるこの時間が、体に滲みる程に大切なものだと思う。都会の生活では、全く考えることができないくらいの山中で、こうして愛車と佇んで居られる事に不思議な感じがずっとしていた。突然の事で、さすがに写真は撮れなかったが、この付近でツキノワグマと鹿にも出会った。気軽に訪れている山々も、本当はこの子たちのものなんだ。そう実感する。 「邪魔してごめんよ....」 私はそう言って、静かに立ち去った。


優しい表情の暖かな景色も、私の旅には欠かせない。
野麦峠を後にして、細い山道を変わり続ける景色を楽しみながら走り続けた。そして361号線に出て景色も変わる。こうしたコスモス畑も秋の風物詩。ちょっと見ようと立ち止まったりした。険しいものだけが良いのではなく、こうした暖かな気持ちにさせてくれるモノが旅には必要だ。


自分を守る、自分を守ってくれる。大切な相棒にも人生がある。
ここはもう秋だから、こうして稲が干してある。道の端には、名も知らぬ花が咲く。白い雲と碧い空と、木曽の清々しい流れる風が、私を少し高めてくれた気がする。
私の相棒の顔を見て欲しい。この活き活きとした表情を.....私は、彼が例え鉄の塊だとしても、人間として扱っているんだ。彼の喜んでいる顔....彼の悲しんでいる顔....彼の苦しそうな顔....私にはそれが全て分かる。皆さんにも大切な愛車の表情が、愛おしい相棒の声が、分かっているはずだ.....今日も彼は安全に私を乗せて走ってくれる。これからも大切に守り続けたい心の支えだ。


この旅の最後に、大切にしていた場所を尋ねた。私にとって偉大な山
奈川の「手打ち蕎麦こばやし」に会いに出掛けた今回の旅。帰りにもうひとつ大切な場所を尋ねた。

私が是非とも訪れたかった場所。それがこの木曽の御岳山だ。標高3067m、無骨で荒々しい男の山。中々その表情が見れない高い山だから、朝から不順な天候だから、きっと見えるはずなんかない。走りながらそう高を括っていたのに、直前にこんなにも晴れてくれた。

「凄いっ、見えるよ........」

心の中で押し殺すようにつぶやいた。余りの絶景に時間を奪われたかのよう.....そして、暫くして気がつくと何も聞こえない。私は、視線だけを動かして聞こえるはずの音を捜した。間違いなく風が吹いているはずなのに....草や木々が清々しく揺れているのに....けれども、幾ら耳を立てても、辺り一面静寂なままだった。


「..........」 誰も居ないこの場所で、私はずっとこの無骨で美しい山を見続けていた。ここを発てば、この旅も終わる。後は幹線の国道を走り高速道路に上がるだけ。思えば、神戸を発っていろんなところに行き、いろんなものに出会った。昔に訪れた景色を今自分の目と体で確認できた。それぞれの土地の空気を吸い込み、それぞれに輝いた光を見た。こんなにも沢山の、こんなにも素晴らしい、こんなにも上質な感動を、与えてくれた飛騨や木曽の山々に私は感謝したい。


「沢山の感動をありがとう.....本当にありがとう.....」

ベタな言葉ではあるけれど、ずっと続くバイブレーションの中で私は思っていた。傍から見れば、単なるツーリングなのかもしれない。でも今の世の中で、こんなにも人の心の中に突き刺してくるモノが他にあるだろうか?走らなけりゃ腐っちまう。何もしなけりゃ駄目になる。人生への自問自答、見えない何かへの出来得る限りの我が抵抗なんだ。

「走るって俺の全て…生きてる証なんだ......」

ずっと私を守ってくれた愛車に底無しの感謝をしよう。頑張った自分を褒めてやろう。こんなに素晴らしい世界を与えてくれた何かにありがとうを言おうじゃないか。

「ズバッズバッズバッズバッズバッズバッ・・・カコンッ・・・ズバッズバッズバッズバッズバッズバッ・・・」

帰って来たさ、遠くに都会のネオンが見えたさ。それでも私はずっとずっと大きくスロットルを開けていたいんだ.....

                   2012年10月 布引クラシックス  松枝




参考データ
総走行距離          1138km
高速道路の走行距離     461km
一般道の走行距離      677km  
燃費               27.4km/L

今回のルートは以下です。
乗鞍御岳山の旅その1をクリックしてください。


今回の走りましたルートはコチラです。
また、データの容量の関係で分けています。ご了承ください。


その3のルートはコチラ
更に容量オーバーのため、帰りが京都辺りで終了していますが、実際には神戸市中央区が到着点となります。
  

Posted by nunobiki_classics at 13:55旅をして来ましたよ!