2017年10月29日

1970 BSA A65L Lightning 納車報告

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
今回直輸入したA65L、開梱すると47年前にタイムスリップしたような姿に唖然とする・・・実走行たったの2500マイル、機関から配線から1970年そのまま・・・あくまで時代感を保存するかの如く作業を始めた。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
早速、クランクシャフトを調べる。振れもオイルラインの汚れも無くほぼ未使用状態。そして、スマートな形状のカウンターウエイトを持つ反面フライホイールは巨大だ。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
実のところA65は75mm×74mmのボアストロークを持ち、他社の650㏄ツインエンジンとは一線を画す。360度クランク、短いコネクティングロッド、ショートストロークレイアウト、重いフライホイール・・・これがA65の特徴だ。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
このピストンは勿論オリジナル品で一度の焼き付きもないグッドコンディション。無論リプレイス品よりも古典的であるけれど、熱的変化を感じ取る事や、オイルの焼ける匂いを知るって事は英車乗りのとして大切な財産になる。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
一度のボーリング加工も受けてないシリンダーの摺動面はメーカー出荷時の粗いホーニングラインが残る。そして、底面が広くどっしりとした形状は上下の振れに圧倒的に強い。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
シリンダーヘッドには必ずバルブを保持するバルブガイドがある。これがどの英国車も弱く、少ない走行距離でもガタが出る。4本共に抜き取り、100分の1mm単位で丁寧にリーマー加工を施し完全なクリアランスを持たせた。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
バルブの当たりは意外にも粗く現行車から見るとやってないも同然だ。只、廻ってしまえばその影響は実感し辛く平然と走れる。只、実際に作業するとなると、これがどうしても正確に当たりを出してしまうんだな・・・

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
A65のギアは素晴らしいぞ。部品の多くを分解せずに脱着出来るカートリッジ式でその出来栄えも良い。但し、シフトシステムは古典的でストロークも長く剛性も低い。この辺りは使う者が機構を理解した上で操作したい。

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ギア間の接続は、このように大きなドッグを用いトライアンフとの差別化を図る。各メーカーが勝手気ままに設計した時代に終わりを告げ世界標準に進もうとする非常に興味深い箇所なんだ。

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これはエンジンのタイミングサイド。各軸間の距離が近くなり、更に各々の壁が厚くしっかりと出来ているのが分かるだろうか?

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
こちらがドライブサイド、クランクケースの全てを舐めるように見てみよう・・・他の英国車に比べて剛性の高さは一目瞭然、これがA65の特性の源だと知っておこう・・・(※一番大事なところ)

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右側はクラッチ、左は発電用のルーカス社製RМ19。それをつなぐのはスリーロウズのプライマリーチェーン。この容量の大きなチェーンと軸間の短さに高剛性なクランクケース・・・これが味噌なんだ・・・

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このピボット部は大切だから入念に見る。全てを洗浄しガタを確認し新しくグリスを入れ替える。賢いモーターサイクリストならステアリングとここの働きを理解して走らせている・・・さて、皆さんは如何なものだろうか・・・?

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
これは50年物のフロントフォークオイルで粘度はシングル20番だ。水分や空気と混ざり正にエマルジョン状態、もうオイルとは言えない代物だ。だが、笑っている場合じゃない。皆さんはフロントフォークのオイルを何時換えた?定期的に交換すべきモノだと知っているだろ・・・

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ここはモーターサイクルの要、リジットであろうがチョッパーであろうが、どんなモーターサイクルでも車体の要だ。・・・コーナーが近づいてくる・・・車体をスッと傾けた時・・・ここのベアリンクがどう動いているのか?・・・自分の感覚で感じ取ってみよう・・・きっと新たな境地を見い出せるはずだ。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
これがA65のフレームだ。車体中央部の剛性がすこぶる高められているのが分かる。エンジンプレートを屈指して軽く最低限度の剛性を確保するトライアンフユニット650とは対照的に車体自体で十分な剛性を確保するA65。正にこのガンとした強さを是非とも記憶してもらいたい。

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そして、1970年製のA65Lライトニングがようやく完成した。エンジンの中から車体に至るまで恐らく世界中で最も状態の良い部類だ。流石の私も手元に置いておくべきだったと後悔する・・・そして、新規検査登録を受け試運転の準備をする。「ズッズッズッズッズッズッ・・・ズッウォーーーーーン!・・・」 サウンドは他のブリティシュとは異質で、それでいてバイブレーションは良い意味で強烈だ。

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スロットルを開けて走り出すとその感覚の違いが魅力的だ。ショートストロークのストレスない吹け上がり感も素晴らしい。 「ドゥォーーーーーン!・・・んっコンッ・・・ズッウォーーーーーン!・・・んっコンッ・・・」 シフトチェンジシステムは古典的でストロークも長く剛性も低い、速くやろうとするよりも逆に大らかに操作する事がコツだ。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
そしてA65の上手な走り方とは「全開走行あるのみ!」だ。タラタラ走るとかトロトロ走るなんぞもっての外!「ドゥォーーーーーン!・・・」 好きなだけスロットルを開けて走るべしっ!

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
緩い登坂を見つけたら練習してみよう。先ずは「1速2速とスロットル全開で走れっ!」次に、「3速全開したらフライホイールの勢いに意識を移せっ!」 そして、「4速全開!どんどんとフライホイールに勢いをつけろっ!」最後は、「後はハンドルしっかり持って、突っ込まないように注意しやがれっ!」・・・・・こうするとフライホイールの動きが良く分かる。自分勝手にスロットルだけをあおっても駄目だ。素早く徐々に可能な限りフライホイールの回転数を上げて行く亊・・これが出来れば君も一人前のA65乗りだ。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
次にコーナーもやってみよう。A65はトライアンフに比べて嫌でも後ろに座る事になる。これが味噌。更に意識してお尻を後ろにずらす・・・コーナーでは終始この位置を意識しよう。要する後輪の真上に座っている感覚で走る事が大事だ。更に頭の位置を下げ、タンクやフットレストを積極的にホールドする。これが出来れば苦手のコーナーリングも好きになれるさ。

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「ドゥォーーーーーン!・・・んっコンッ・・・ズッウォーーーーーン!・・・んっコンッ・・・」このように、他の英国車と違いA65は全くの別物。高い剛性を持つエンジンと車体が、性能の良いエンジンのパワーを効率良く路面に伝えてくれる正に 「The British Dynamite!」 次世代を睨み先進的設計を備えた世界をリードすべきモデルのはずだったんだ・・・

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
そんなA65と旅に出る事は素晴らしい。久し振りに晴れた秋空の下、青い海を求めていつもの丹後半島へとやって来た。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
皆さんは一人で旅に出るのだろうか?・・・たまにはひとり、遠くへ行ってみると良い・・・そんな時には海を目指して走ってみると良い・・・綺麗な夕陽を眺めに行こう・・・何処までも夕陽と追いかけっこをしよう・・・この美しい景色を見るだけの事がとっても大切な亊なんだって・・・

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
都会の交差点を走る事も良いけれど、遠くに行かなきゃ絶対に夕陽には会えないから、やっぱり行くべきなんだ・・・ブリティシュに乗って行く旅ってそんなに行けないから沢山行くべきなんだって・・・

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私は今回渾身の力でこのA65を整備した、願わくばずっと幸せに過ごして欲しい。誰よりもオーナーと一緒に走ってもらって・・・誰よりも大事に洗ってもらって・・・誰よりもオイルを替えてもらって・・・それが私の心からの願いなんだ・・・「ありがとうライトニング・・・ここまで残ってくれて・・・」 私はそっとライトニングに頭を下げたんだ・・・             2017/10/29 布引クラシックス 松枝

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
そして、季節もすっかり変わった師走、オーナーのUさんが甥っ子さんと一緒に引き取りに来てくれました。甥っ子さんは刀1100に乗ってるとの事。国は違えど同じ旧車乗りとは親近感沸きますね。

1970 BSA A65L Lightning 納車報告
店で基本的な筝を説明の後、実際に走ってもらいました。右側に変わるシフトレバーと減速時のシフトダウンのやり方を重点的にアドバイス・・・しかし、どうですか皆さん?初めての英国車とは思えない程イイ感じで走ってますよね。加速の仕方も上手だし、後は減速時のシフトダウンを自分のモノにすれば大丈夫。春には3人で走りに行こうと約束もし、有意義な時間となりましたよ。 2017/12/11 布引クラシックス松枝

参考データー
一般道走行距離   270.6km
高速道路       15.8km
総走行距離     286.4km

ガソリン使用量     11.4L(プレミアムガソリン)
燃費         23.7km/L

燃料タンク容量     9L(2gal.)

試運転コース    





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Posted by nunobiki_classics at 18:57 │作業完成報告 BSA