2019年10月14日
1975 NORTON COMMANDO 850 Mk3 Roadster プチ報告その4
コマンドのステアリングには2タイプあって左側が1971年以降のレイターモデル用、右側が1970年までのアーリーモデル用だ。アーリーモデル用は前モデルのドミ系そのままでステム径が細く強度的余裕はない。
それを1971年モデルからコマンド専用のモノに置き換え、以後コマンドのステアリングに対する不評はなくなる。1980年代を念頭に入れたモーターサイクル開発の素性として重量が重い点を除けば素晴らしい出来栄えと言える。
モーターサイクルの要であるステアリングのベアリングとは、ボール&レース式が使われ1980年代頃からスポーツモデルにはテーパーローラーベアリングが採用され始める。しかし、コマンドにこうしたモノを使うと操縦感覚を損ねる。シールがついているので分かりづらいがコマンドのステアリングに使われているモノは単なるボールベアリング、ここがコマンドの「ツボ」。仮にあなたがコマンド通だと自負するなら「コマンドはボールベアリングじゃなきゃいけないよ・・・」っと、既に理解しているはずだ。
前回完成していたフロントフォーク。マッドガード用のスタッドボルトが折れ込んでいる・・・
通常、それ程難しいモノじゃないが今回は言う事を聞かない。で、溶接し肉盛りすると熱によってもネジが緩み簡単に外れる事が多い。しかし、何をしてもこいつは外れない・・・
そうした場合は頭をサッと切り替える。ケースを単体にしてきちっと取り外す事にする・・・この転換が大切だ。先ずは、垂直を出す。モノが楕円形なので正確にアングルを出す・・・
折れ込んだ端面は歪だからドリルのキリが当たりづらいので、先ずはフライスで面を出す・・・穴径をフライスのゲージに当て込んで正確にセンターを出さなければ後で厄介になるから正確に測る。
で、折れ込んだボルトは1/4インチだから、その分をキレイに取り除く太さのドリルでもんでいく・・・
で、ネジ山の再生にはヘリサート加工するので、それ用に太さの穴を再度開ける・・・
更にヘリサート用のタップでネジを切る・・・
最後にヘリサートの玉を挿入する・・・これで、意地でも外れないと折れ込んでいたスタッドボルトが正常に使えるようになった・・・最も、皆さんはこんなちっぽけなスタッドボルト1本など興味を示さないだろうし、ここにこうした手間暇が掛けられているなんぞ知る由もない。それでもやはり正確に直さなきゃならない・・・「はぁ~」後に残るむなしい倦怠感・・・これがわびしい自動車整備士の悲しい性なんだ・・・
これで、MarkⅢのステアリングにロードホルダーが完成した。コマンドは皆さん知っての通り前モデルのドミ系よりも格段に走行性能は上がっている。それ故にこうしたステアリングにフォークが重要になる。走りの良さや旋回性能を問う場合、特にフロントの制動性能を上げたモノなどでは、どうしてもレイターモデル用のステアリングが必須になる。しかし、ドミ系そのままの細い細ーいステアリングステムそのままのアーリーモデルでは、頼りない走りに挙動が乱れても、そこに時代の味や古いモノを扱う醍醐味が含まれる。個人的にはアーリーモデルの味が好きだけど、少なくとも850MarkⅢではレイターモデル用でなければ走れない。つづく・・・
Posted by nunobiki_classics at
21:40
│作業中車両のプチ報告