2019年09月27日

1973 NORTON COMMANDO 850 Mk1A 兵庫県Kさんプチ報告その2


スロットルとはモーターサイクルにとって最も大切な装置。楽しく走る為の操作性と命を守るべく安全性が同居する要の部品。オリジナルのスロットルはもう耐用年数を超えて危険だから交換する。ところが新品と言ってもそのままでは使えない。アンチモンのボディーにはバリが出ていて引っかかりが有るなど操作感が至極悪い場合が多い。「スーッ・・・スーッ・・・」と納得の状態に持って行く。


ホイールベアリングも交換、雨風しのげるシールドタイプとしメンテナンス性を上げる。


実は、1971年以降のコマンドのプロップスタンドとは実に困ったモノ。50センチを優に超える長さ故、使うととつけ根がひん曲がってしまう。で、直す為にはプライマリーチェーンケースを取り外さなきゃならない。


丁度クランクシャフトの下あたりにスタンドのベースがあ。今、アセチレンガスをあてて曲がりを修正したところ・・・


下から見たところで、ここに長ーいスタンドがつく・・・


これが正式な状態。これでは1970年までのアーリーモデルのスタンドの方が全くもって理にかなっている。モノが正しい方向にばかり進化するとは限らないのが英国車。で、レイターモデルのプロップスタンドを使う時にには「そっと・・・そおーっと・・・」 と言って念じる事が原則だ。


そして、インターステイト用のグラブレールも装着・・・これ新品です。


マスターシリンダーは最近オーバーホール済みであるものの納車前にフルード交換、パッドも新品です。更にエンジン、プライマリーチェーンケース、ギアボックス、フロントフォーク、全てのオイルを交換。


これ何だか分かりますか?皆さんが最も操作する回数の多いクラッチレバーのピボットボルト。良く見ると左の古い方が摩耗していますね、交換しました。(些細な事だけど大事です)


で、こうした操作する箇所は人間の感覚に直結するモノなのでより丁寧に仕事します。レバーを外して軸受け部分を清掃して給油する・・・更にクラッチ、スロットル、リアブレーキ等々各部のケーブルを入念に給油します。構造に素材に全てがシンプル故にこのひと手間が大切になるのです・・・


「ズドゥーーーン・・・ズンズンズンズン・・・」 そしてここは魚崎浜にある神戸の陸事、新規検査受けて来ました。そしてこの後、試運転残すのみとなりました。帰ってきたら改めてご報告したいと思います・・・松枝
  

Posted by nunobiki_classics at 20:29作業中車両のプチ報告

2019年09月25日

1964TRIUMPHT120R BONNEVILLE 沖縄県Kさん 車両直輸入プチ報告その1


先週、沖縄県石垣市のKさんのボンネヴィルが神戸港に入港・・・そして今日、朝から通関手続き&通関検査受けて来ました。


ここは神戸税関ポートアイランド出張所、後ろに見えるのは北埠頭駅。潮風香る港町、以前の布引クラシックスはこの目と鼻の先、よくここまで試運転に来てましたね、懐かしいです・・・そんな話はどうでもいいんですが・・・


朝一の九時から初めてなんだかんだと終わったのが正午2分前。晴れて保税地区から解放され自由に搬出できる身となりました・・・(保税地区内は写真撮影禁止なので写真ありません。)


お腹が空いたので税関の職員食堂でランチ。このカツカレー最高に不味いんです!・・・でもこれだけ不味いと逆に気にならない「職員食堂ってこんなもんよ・・・」これで済んじゃうんですね。 「神戸税関ポートアイランド出張所職員食堂」 皆さんも次のデートに如何でしょうか?・・・


さて不味い食事の後、慎重に走り工場に搬入致しました。昔は木の梱包が今ではスチール製になって、簡単軽量になりましたよ。


このね、開ける時って相当ワクワクしますよ。もう何回したか分かりませんがいつも感動するんです。


そりゃあそうでしょう・・・アメリカやイギリスから海を越えて遥々とやってくる。連れて来られたこの子たちを立派にする義務がある・・・沖縄の石垣島から注文くれたKさんの心中とは・・・いろんな想いが込み上げてくる。「最高の1964年を作ってやるぞ!」 そっと誓いましたよ・・・松枝
「布引流英国車直輸入のご案内」・・・→コチラです。
  

Posted by nunobiki_classics at 19:56作業中車両のプチ報告

2019年09月20日

1969 NORTON COMMANDO 750 東京都T様 車検整備プチ報告その1


二年前にフルレストア作業をおこなった1969年のファストバック。東京のTさんから嬉しい車検整備の依頼を頂き、早速ご自宅へ愛車を引き取りに伺いました・・・


前回私はその状態の悪さから、あえてステンレス製のスポークを組み込んだそのホイール・・・以前のレストア作業は→コチラ


今回、引取の時に「スポークをスチールに変えてくださいよ…」なんだか上から目線で言われましたね・・・ 早速バラシました。両側のモノがステンレス製、内側がスチール製の亜鉛メッキ。下のニップルは左側がステンレス製だ。


組み替えたホイールは二方向の振れを一旦とる・・・


おおむね1980年代以降のバイクでは、片側の高さを正確に記録し再度その通りに組み直せば車体に於けるセンター性は維持できる。


ところが英国車のような古いモーターサイクルの場合、部品の誤差やその都度の事情などで寸法が微妙に変わる。どんなに過去のデータ通りに組んでも数ミリの違いが生じ再度やり直す羽目になる。私のコマンドと彼のコマンドが同じ数値だと思ったら大間違いだ・・・


もともと英国車の場合、意外にもタイヤとマッドガードとの隙間が狭い。ステアリングのライン上に来るように・・・将来誰かが太いタイヤを入れた時のマージンは・・・後の作業者がケガをしないように・・・その他様々なシチュエーションを考慮し正しく仕上げてやる。


リアの場合、チェーンガードとの隙間はゼロに等しいから厄介だ。で、そもそもホイールと車体とのセンターは合致していない。スイングアームも含めて左右対称にはない・・・重量的な配分もそこにはある・・・


そんな中でも理想の位置へ持って行こうとするが、過去のデーターはやはり役に立たない。個々の事情に合わせて・・・自分の経験をもってして・・・この車体の将来をも鑑みて・・・何処の位置にセンターを持って行けば良いのか・・・僅か数ミリの話しなんだけど神経集中させ真剣に作業する・・・スポークの1本々にニップルのひとつ々に・・・その想いは込められている・・・


クラシックモーターサイクルの世界ではこうしたホイールバランスは余り重要視されない。しかし、車体剛性の低い英国車、特に車体の振れに弱いコマンドの場合必ず適切に取るべきだ。そしてこの時代のタイヤとて重量的に形状的に真円を出せてはいない・・・精度の低いリムに、個々違う位置、タイヤの精度も低い状況だからこそコアとなるホイールをベストに持っていく。大径のホイールだからとか…リアはとっても仕方がないとか…生意気な話しはよせと言いたい・・・


で、肝心の材質の話し、やはりコマンドにはスチール製が似合う。奥がステンレス製で手前がスチール製・・・この違いは歴然。だが本当は亜鉛メッキのそれってお世辞にもきれいだとは言えない。どんよりと鈍い輝きなんだけど、なぜピカピカ光るモノよりも断然の美しさを放つ!ここが正に古いモーターサイクルのおもしろさなんだ・・・


そして亜鉛メッキは弱い・・・やがて薄くなり錆も出る・・・だけれどもウエスを持って労わるようにそっと手入れしてやろう・・・愛車の足元が傷んで来たならやさしく撫ででやろう・・・競走馬のスネを拭ってやるようにそっとそっと触れてやろう・・・それがクラシックモーターサイクル愛ってものなんだ・・・


そして、フロントフォークのオイルを抜いた・・・


これが2年間走り続けたオイルだ。


「英車ってサイコーっすね!・・・」皆さんはブリティッシュで走る事は楽しいと言う・・・・


だが、ここは100mmものストロークを「ガッツン!ガッツン!」と伸縮させられる。ブレーキをかけられ、コーナーを曲がり、ドーンと加速されまくる・・・そんな酷い仕打ちを受けているフロントフォーク、それを守れるのはこのオイルしかないのさ・・・


リアショックアブソーバーもしかりだ。この狭い筒の中にでもオイルは酷使されている。知らないうちに温度は上がり気泡が混ざったりもする・・・それでも楽しいからとガンガンに走らされ酷く摺動させられている・・・クラシックモーターサイクルだからサスペンションは無視していいなんて話はどこにもないんだ・・・松枝
  

Posted by nunobiki_classics at 22:21作業中車両のプチ報告

2019年09月16日

1973 NORTON COMMANDO 850 Mk1A Interstate 兵庫県Kさんプチ報告その1


兵庫県Kさんに購入頂いたインターステイト。納車に向けた整備を進めてます。今回のコンセプトは「大人に向けた英国車のあり方」・・・若かりし頃にブイブイいわせて走り回っていたものの、今回リータンして乗るのがなんと古い英国車!・・・そんな無謀な行動に応える為の仕様!・・・なんだかおもしろい事になりそうです・・・


英国車デビューとなるKさんの求めるところは絶対的な安定性・・・その中でも最も大切なモノは電装系統。で、その要がメインハーネス、人間で言うところの中枢神経、根幹から信頼性を築きます・・・


その電装系統の中でも核となる部分が充電系統。レギュレーター&レクチファイアも刷新、必要なプレート等を製作します・・・


で、余剰な電気エネルギーを熱エネルギーに変換し放熱するのがこの仕組み。なので可能な限りフレッシュな風に当たる位置に取り付ける。


たかがバッテリーとおっしゃいますが、バッテリーとは大型のモーターサイクルにとって大変重要なモノ。何度でも言うけれど、バッテリーがなければエンジンには基本的に火は飛ばない。エンジンをとめて、さぁスターターを踏み込んでもバッテリーに十分な電圧がなければ家に帰る事は出来ないんだ。・・・大切な電気の話は→コチラ


で、Kさんの場合はバッテリー液を補充したり定期的に補充電をする事は非現実的な話し。なのでメンテナンスフリーバッテリーを搭載。更に、使用頻度の下がる季節にはトリクル式充電器を接続するためのカプラーも取り付けている。


これはコマンドでは陰の重要部品。丸いモノはグロメットで、中を通るモノを振動から守る為のモノ。長い間使われているとゴムが変質し硬化する、更に振動で破れてしまう・・・


で、リアブレーキペダルの下にはブレーキスイッチがあって、その為の長い配線が通る。しかし、それは高温のエキゾーストパイプと平行するため非常に危険だ。なにが危険か?・・・当時の英国車ではヒューズが一系統しかない。万が一、この配線がエキゾーストパイプに触れるとショートする
→ヒューズが飛ぶ→エンジンを含めた全てが停止する。走行中にエンジンが止まった場合、不慣れな者なら驚き慌ててしまう・・・その原因がたった一個のグロメットだとしたら・・・皆さんが全くもって気にもかけないこうした小さなゴム製パーツこそ正しく整備しなきゃならないんだ・・・


1970年代の英国車を代表するヘッドランプと言えば、ルーカス社製のP700系。見栄えはいいけど実際には前は殆ど見えません。バルブをH4やなんかに交換しても基本見えません・・・悪い事にコマンド850は走ります。走ろうと思えばガンガンに走ります・・・しかし、それでは危険過ぎる。Kさんには夜でも前方を見えるモノにしなきゃイカン!・・・で、取り付けたのはクラシックな凸レンズでありながら60/55WのH4バルブが入りシャープにカットの入るちゃんと見えるレンズ。嬉しい事にちゃんとポジションランプも入ります・・・で、この場合、凸レンズを死守したところがミソ、いくら集光性が高いからとフラットや凹レンズだけは入れちゃダメ、コマンドが台無しになります・・・


今回は大切な電装系統についての作業でした。元々トライアンフなどに比べてコマンドは電気的に安定性の高い回路となっていますが、更に信頼性を上げる作業を施しました。これで英国車デビューとなるKさんの為の電気廻り整ったわけですね、良かったです・・・次は車体整備なんかをご報告する予定です。つづく・・・松枝

  

Posted by nunobiki_classics at 11:44作業中車両のプチ報告

2019年09月10日

1975 NORTON COMMANDO 850 Mk3 Roadster プチ報告その2


「ズッドゥーーン・・・ズバババババッ!・・・」 コマンド850の走りは楽しい。ブレーキをかけコーナーに進入しアウトに駆け抜ける時の得も言われぬ爽快感・・・何を言ってもそれが「コマンド エイトフィフティー」の魅力なんだっ!


で、そんな走りを支える「名品 ロードホルダー」 だがそれは英国車の常、その殆どが分解すらされずにいる。 だが、私は絶対にスルーはしない。楽しい走りを支える大切なモノだからこそ全てを分解し洗浄し精査する必要がある。


フロントフォークには二通りの働きがあって、その一つが衝撃を和らげる「緩衝装置」。このアロイ製のボトムケースと鋼鉄製のスタンチョンが丁度「単眼鏡」のようにスライドし、それをコイルスプリングが受け止め路面からの衝撃を緩衝する働き。


もうひとつは、いわゆる「バウンド」を押さえる働き。先のコイルスプリングとは一旦跳ねるとどうしてもそれを繰り返す特性がある・・・で、このカートリッジ式のダンパー、空のままだとスカスカに動くが一旦オイルで満たされるとぬた~っと意地でも動かない構造になっている。それを利用してスプリングの反動を押さえ込むモノだ。地味だか無くてはならない大切な装置だ。


当時のスタンチョンはぶ厚く強そうに見えるが現行車と比較すると弱く曲がり易い。よって多くに曲がりがあるから必ずこうして測定し修正する。


こちらはオイルダンパーのロッドで、これも同様だ。皆さん知らないがこれに曲がりがあると、てき面サスペンションとしての性能が落ちる。アロイ製のキャップとのクリアランスや摩耗にも大きく影響するから絶対に曲がりがあってはイケない。


これはボトムにあるオイル用のドレーンプラグ。長年の使用に山が変形している。これでは後のオイル交換時に支障を来す・・・


オイルシールやブッシュの交換に加え、こうしたプラグや紙やファイバーのシール材などの些細なパーツを丁寧に交換する・・・こうして主要構成部品を精度高く修正し消耗部品を交換し全ての動きが1975年らしく復元された。コマンド850の走りの良さはこうした地味な作業の上に成り立っているんだ。


因みに、こうした時にコンパウンド等でアルミをひと磨きしてやるといい。


左が今磨いて初めて輝いた瞬間・・・で、皆さんにはこの「輝き初め」を重んじて欲しい・・・鏡面仕上げでは余りにも悲しい、せめてこの程度に抑えるべきだ。 そうだろう?…考えて欲しい1975年製造当時のショールームを…店の奥に鎮座するロードホルダーは決して過度に輝いてなんかいない…メーカーから出荷されたままのそれは鈍く灰色のアルミニウムがキラッと幾分の輝きを見せる程度だった…それが丁度「輝き初め」のこの状態と同じだ。英車好きならそうした時代の情景に思いを馳せる事が真にブリティッシュモーターサイクルを愛する事だと私は思うんだ・・・松枝






  

Posted by nunobiki_classics at 20:54作業中車両のプチ報告

2019年09月07日

「神戸トルコライスさん」 行ってみませんか?


神戸市兵庫区の国道428号線有馬街道沿い、神戸大学医学部附属病院前にある「神戸トルコライス」さん。ここにはいろいろなシキタリがあって、なんだか楽しい店なんです・・・


ランチタイムは超満員、忙しいのに注文する時にはいろいろ言わなきゃならない。「カツ?大?ダブル?ソース多め?タルタル倍???・・・」お店のお兄さんが続けざまに聞いてくる。で、こっちは「はっ???・・・」って、そうなんです、迷っている暇なんてないんです。


「カツの脂身が多め、普通、少なめ、なし?・・・」 「エビカットにタルタルにキュウリ抜き?・・・」 「テイクアウト可能でドリンク持込可ってなんで?・・・」 「店内にフリーコーヒーあるけど忙しい時ダメ!」 とか、とにかくいろい決まりがあって初心者は大慌て!


いつもメニューに迷うことなくスパッと注文する松枝でも「ななななんの事?・・・」それでも「カツトルコ並!ソース多め!カツ脂身なし!」っと一発注文完了!・・・それがこれです。特に脂身は、その量から無しまで指定できるなんて苦手な私には嬉しい限り・・・


ある日には、「ミックストルコかつ&エビの並!ソース多め!カツ脂身なし!」って、注文しましたよ。全くの余談ですが、何を隠そう実は松枝隠れエビフライ好き、加古川の「ラッキー食堂さん」でもついついエビフライありを頼んでしまうんです・・・ラッキー食堂さんは→コチラ

「神戸トルコライスさん」 ご利用ガイド・・・
・メニューは予め決めておく→即オーダーして常連客ぶる!
・ランチタイムは混むので避けるとゆっくり味わえる…
・しかし、混んでいる時のスリル感も刺激があっていい。
・不定休なので行ってもシャッター閉まってる事ある。その時のショックは大きい・・・
 そんな時は元町の「丸玉食堂」で私の好物「春巻き」にがっつく!(100%火傷する)→コチラ

まとめです・・・
超満員なのに注文時に決める事多過ぎて、訳が分からなくなる難易度大のオーダーシステム・・・聞いてくるお兄さん、職人さんみたいでカッコイイけどちと強面・・・なのに店内のテーブルとかお洒落チックでカワイイらしさもあったりと・・・何がって一言で伝えにくいけど何かがおかしくて笑ってしまう・・・そんな楽しい店なんです。そして忘れちゃイケないトルコライスのお味は当然〇!、訳も分からずあっと言う間に店を出てきたら「ウマいな…また来たいな…」 そんな「神戸トルコライスさん」 次の休みに是非訪れてみては如何でしょうか・・・   2019.09.07 布引クラシックス 松枝
  

Posted by nunobiki_classics at 11:24芦屋近郊地元グルメガイド

2019年09月05日

1958NORTON DOMINATOR 長野県Tさんプチ報告その7


もう小姑のような話しはしたくないからスルーするつもりでいたものの、やはり話を巻き戻す。これは88のフロントのアクスルシャフト・・・再びマツエダ怒り心頭、爆発寸前です。


皆さんの命を載せているホイールの中心にはベアリングとシャフトがある・・・この写真を見てなにか感じないか?


一番下がフロントのアクスルシャフトで真ん中が新しく取り寄せたモノ。良~くみると旋盤加工の粗い跡があって右側よりも左側が細くなっているのが分かるだろうか?・・・


この軸受けの内径は17mm、それに挿入するシャフトの外径は当然17mm以下。モノが正確に機能し自然に挿入できる為に各々その隙間が決められている。で、この場合のそれは最大100分の5mmだ。にも関わらず実物は10分の3mmもある・・・いいですか100分の3mmではありませんよ、10分の3mmですよ・・・これは実に設定の6倍もの値、競技用としての基準を100分の3mmに設定したとすると実に20倍の差があるって事ですよ・・・


この絵を見て何とも思わないかい?・・・


解説しよう・・・シャフトが錆びて体裁悪いからクロームメッキをかけた→厚みが厚すぎてシャフトが入らない→なら、旋盤でメッキを削ろう→ところがシャフト自体を削ってしまい、おまけに斜めに削ってしまった→細くなり過ぎてガタガタする→もう、やりよう無いからそのまま取り付けた・・・これがその真相だ。


そしてこれはリアのアクスルシャフト、ベアリングの内径は17mmであるもののカラーが入りシャフト径は14mm。だがフロントよりも更に隙間が大きい事が分かる・・・


このリアはもうひとつ悪い・・・フロント同様に旋盤で削り過ぎたものの、どうしようもない位に細くしてしまった→そうだ、もう一度クロームメッキかけよう!→それでも厚みがまだ足りない→もういいや、そのままつけちぁえ!・・・これがリア側の真相、これじゃもうめちゃくちゃだよ。


最も私は馬鹿じゃない。この88のオーナーのTさんとは、別にクラシックカーレースに興味もなければイギリス車にそんなにこだわっている訳じゃない。只々カッコイイ乗り物に乗りたい触れていたい只それだけの人。彼のガレージに行けば私も大好きな超有名なアメ車のマッスルカーが置いてある。そこにフェザーベットフレームの粋なレーサーを加えたいだけの人。だから、過度の整備は必要もないし安全快適に走れるようにすればイイだけの話し、そんな事は百も承知だ。


だが、残念ながらこれはそれ以前の話しだ。自動車整備士として自信を持って渡す事など絶対に出来ない危険なモノだ。・・・まぁ昔と違い今は多様性が認められる時代、何でもうけりゃイイじゃん!って時代らしい。それでもやって良い事と悪い事があるだろう?・・・更にこんな車体を買ったTさんにも責任がある。だからこそ徹底して修理するって訳だ。


さて、皆さんも分かっているかい?この下劣な整備の根本的な間違いがどこなのかを・・・それはメッキの選択なんだよ。精度を保ちたいネジ部や接合部には本来切削研磨したままにするもの。但し、どうしてもメッキを載せたい場合は薄い皮膜のメッキを選択する、それが当時の亜鉛メッキだ。それを何を血迷ったのか装飾用のクロームメッキをかけてしまう、精度が必要なアクスルシャフトのネジ部から軸から全てにぶ厚いクロームメッキをかけたところが間違いの始まりだ。


そして、今は前後共に薄い皮膜のメッキに包まれた新しい正規のシャフトが入っている。真っすぐについたフロントフォークに、水平に取り付けられたスイングアームに、それらに対して正確な角度の車軸を維持している。世のモーターサイクルの歴史を塗り替えた名品「フェザーベットフレーム」・・・古いモーターサイクルとてこの程度の精度は出ているさ。誰しも認める名品だからこそ、こうした内容の伴ったカタチじゃなきゃイケないんだよ・・・  松枝

  

Posted by nunobiki_classics at 13:00作業中車両のプチ報告