2019年09月20日

1969 NORTON COMMANDO 750 東京都T様 車検整備プチ報告その1


二年前にフルレストア作業をおこなった1969年のファストバック。東京のTさんから嬉しい車検整備の依頼を頂き、早速ご自宅へ愛車を引き取りに伺いました・・・


前回私はその状態の悪さから、あえてステンレス製のスポークを組み込んだそのホイール・・・以前のレストア作業は→コチラ


今回、引取の時に「スポークをスチールに変えてくださいよ…」なんだか上から目線で言われましたね・・・ 早速バラシました。両側のモノがステンレス製、内側がスチール製の亜鉛メッキ。下のニップルは左側がステンレス製だ。


組み替えたホイールは二方向の振れを一旦とる・・・


おおむね1980年代以降のバイクでは、片側の高さを正確に記録し再度その通りに組み直せば車体に於けるセンター性は維持できる。


ところが英国車のような古いモーターサイクルの場合、部品の誤差やその都度の事情などで寸法が微妙に変わる。どんなに過去のデータ通りに組んでも数ミリの違いが生じ再度やり直す羽目になる。私のコマンドと彼のコマンドが同じ数値だと思ったら大間違いだ・・・


もともと英国車の場合、意外にもタイヤとマッドガードとの隙間が狭い。ステアリングのライン上に来るように・・・将来誰かが太いタイヤを入れた時のマージンは・・・後の作業者がケガをしないように・・・その他様々なシチュエーションを考慮し正しく仕上げてやる。


リアの場合、チェーンガードとの隙間はゼロに等しいから厄介だ。で、そもそもホイールと車体とのセンターは合致していない。スイングアームも含めて左右対称にはない・・・重量的な配分もそこにはある・・・


そんな中でも理想の位置へ持って行こうとするが、過去のデーターはやはり役に立たない。個々の事情に合わせて・・・自分の経験をもってして・・・この車体の将来をも鑑みて・・・何処の位置にセンターを持って行けば良いのか・・・僅か数ミリの話しなんだけど神経集中させ真剣に作業する・・・スポークの1本々にニップルのひとつ々に・・・その想いは込められている・・・


クラシックモーターサイクルの世界ではこうしたホイールバランスは余り重要視されない。しかし、車体剛性の低い英国車、特に車体の振れに弱いコマンドの場合必ず適切に取るべきだ。そしてこの時代のタイヤとて重量的に形状的に真円を出せてはいない・・・精度の低いリムに、個々違う位置、タイヤの精度も低い状況だからこそコアとなるホイールをベストに持っていく。大径のホイールだからとか…リアはとっても仕方がないとか…生意気な話しはよせと言いたい・・・


で、肝心の材質の話し、やはりコマンドにはスチール製が似合う。奥がステンレス製で手前がスチール製・・・この違いは歴然。だが本当は亜鉛メッキのそれってお世辞にもきれいだとは言えない。どんよりと鈍い輝きなんだけど、なぜピカピカ光るモノよりも断然の美しさを放つ!ここが正に古いモーターサイクルのおもしろさなんだ・・・


そして亜鉛メッキは弱い・・・やがて薄くなり錆も出る・・・だけれどもウエスを持って労わるようにそっと手入れしてやろう・・・愛車の足元が傷んで来たならやさしく撫ででやろう・・・競走馬のスネを拭ってやるようにそっとそっと触れてやろう・・・それがクラシックモーターサイクル愛ってものなんだ・・・


そして、フロントフォークのオイルを抜いた・・・


これが2年間走り続けたオイルだ。


「英車ってサイコーっすね!・・・」皆さんはブリティッシュで走る事は楽しいと言う・・・・


だが、ここは100mmものストロークを「ガッツン!ガッツン!」と伸縮させられる。ブレーキをかけられ、コーナーを曲がり、ドーンと加速されまくる・・・そんな酷い仕打ちを受けているフロントフォーク、それを守れるのはこのオイルしかないのさ・・・


リアショックアブソーバーもしかりだ。この狭い筒の中にでもオイルは酷使されている。知らないうちに温度は上がり気泡が混ざったりもする・・・それでも楽しいからとガンガンに走らされ酷く摺動させられている・・・クラシックモーターサイクルだからサスペンションは無視していいなんて話はどこにもないんだ・・・松枝
  

Posted by nunobiki_classics at 22:21作業中車両のプチ報告