2019年08月13日

1958NORTON DOMINATOR 長野県Tさんプチ報告その6


長野県はTさんのドミ、前回はスタンド関係のご報告を致しました。そして今日、いよいよ車体の基本作業 の完了です。


1950年代、ダートな道路事情から本格的に実用化されたスイングアーム。フェザーベットフレームではピボット部を可能な限り広げ剛性を確保している。軸受けにはスチール製にブラス製と複数のブッシュを使うが、その調整は少し難しい。如何なる場合にもガタつきの無さとスムーズな動きを必ず与える。


残念ながら今回も 「仏のマツエダ怒りの心頭節」 的話になってしまいますね・・・これはリアブレーキのバックプレートとドラム。過去に軽量化の為か大胆な穴明けがされている。競技に於いて軽くする亊自体は大賛成だがそのやり方に全く技術的根拠が無い。特に右側のドラムに開けた複数の小穴と大きく開いた三つの穴は論外だ。モノを加工する場合、どこに加工すれば最も効率的か?力がどの方向に掛かるのか?そうした亊を考える事は常識中の常識。「なんでこの場所に?なんでこの形に?・・・」 皆さんだって私の言ってる意味が分かるはずだ・・・


当初、リアショックアブソーバーの取付に嫌気が差したと言ったが、それがこれだ。この作業者は大切なショックの取付ボルトを交換している。下のへクスキャップボルトがそれで、上が私が用意した正規品だ。そもそも軸受けとは上に下に横にと大きな力を受ける・・・正規の場合、通常の3/8インチ径よりもブッシュとの接触部分を太くし密着性を高めた工夫がある・・・なのにどうしてこんなものに変えてしまう?・・・


こちらはそのボトム側で、5/16インチ径で例の太めの加工の有るボルトを使う。それが8.0mm径の単なるミリネジに・・・へクスキャップボルトがカッコイイ?・・・パーカーライジング加工が強そう?・・・ないんだからしょうがないじゃん?・・・冗談も休み休み言ってくれ・・・


で、ここは元々バックプレートのと間が狭く接触寸前の位置にある。しかし、ボルトには例の加工があるのであの面を必ずブッシュ内で使いたい。なのでカラーを旋盤で引く際、それが許される範囲内で移動させる寸法とした。因みに、手前のスプロケット固定用のボルトもへクスキャップのボルトに交換されている。これにも言いたい事があるが・・・


次はフロントフォークで、フェザーベットフレームを支えた名品 「ロードホルダー」 だ。


これはフォークのボトムのケース、ここにもいろいろとやってくれている。


上側がアクスルシャフ締結用のボルト&ナット。上が換えられていたモノ、下が正規のモノ。これもリアショックアブソーバー同様の話があるにも関わらずこうだ。そして下側はフォークオイルのドレーンボルトで左が正規品で右が換えられていたミリネジのへクスキャップボルトだ。


で、この作業者は全て金鋸による手切り。しかも切った後の端面を絶対に修正しない信念の持ち主だ。


メネジを良く観察するとねじ切りの具合が良くない。ヘリサート加工をしたいがヘタするとケースが使えなくなる恐れがある。要は斜めにタップを切っているから始末が悪い。正規のドレーンボルトのフラットチップ加工はロードホルダーの美しき景色。残念だけどこの場合もうあっさりこのままだ。


ここには本来マッドガードのブラケット用に1/4インチのスタッドボルトがある。それを片方は元の1/4インチ、反対側にはミリネジが。これではマッドガード一枚外すのに工具を二種類持たなくてはイケない。競技の世界では一分一秒を争うのになんでこんなことになるのか?・・・ミリネジを1/4へとヘリサート加工し一本のレンチで作業出来るようにした。


今回のフロントフォークの作業で最もイケない部分がこれだ。内部に取り付けられるカートリッジ本体は、こうしたボルト類でボトム側から締め付けられている。


こんな感じで・・・で厚みのあるアルミ製故に幾分の長さが必要になる。距離的にも理想的にネジ山として10個分前後は最低嵌って欲しい。で、一番短いモノが今回取り付けられていたボルト。どう見ても山が三~四つ程度しか掛かっていない、何故か?・・・理由はカートリッジ側のメネジが錆び等よってボルトが入らない、よってモノ同志が締まらない、だからボルトを切ってしまおう・・・するとケースとカートリッジは見かけ上固定される・・・呆れて薄ら笑いになった私の顔が皆さんにも浮かぶだろう・・・最終的な理由はウイットウォース規格のタップやダイスが無いからだ。


とにかく古いモーターサイクルのレストア作業では、こうしたネジの痛みはつきものだ。だからと言って自分の持っている工具や部品の範囲内で処理してしまおうとする短絡的な発想には全くもって閉口する。


想像はしていたけれど、想像通りの状態。ここには書いていない事が山のようにあって「社長って相当変人だなぁ…」と思われても困るので随分と話は省略したつもり。


だがしかし、言わなくちゃいけない事もある。今、イギリス車を整備している諸君!とにかくネジの規格は守れと言いたい。「ウイットウォース規格はウイットウォース規格で!ユニファイ規格はユニファイ規格で!意図あるボルトは必ず元の状態に戻せ!・・・」 タップやダイスやボルトを用意出来ない位なら始めから英国車の修理が出来るなんて勘違いはやめろと強烈に釘を刺してやる! 松枝  
  

Posted by nunobiki_classics at 17:44作業中車両のプチ報告

2019年08月09日

マツエダ 39年振りに富士スピードウェイ行ってきました。


今は古いモーターサイクルの修理屋やってるマツエダも、実は10~20代の頃、全日本選手権目指してこうしたサーキットコースで走っていました。二輪はヤマハのTZ250で、四輪はフォーミュラーカーで走っていましたよ。


当時の1980年代には私のような存在が星の数程居ましたね。一つのカテゴリーに何と2~300台ものエントリーがあって僅か40~60台程度のグリッド目指してしのぎを削っていました。


私もそんな星の数のひとり、昼間は自動車整備の仕事して夜は筋力トレーニング、休みには月に1~2度の貴重な練習走行。毎日がレースの為の生活・・・「決勝に出たい!チャンピオンになりたい!」 ところが現実は予選落ちばかり・・・


それでも次第に予選通過ラインをウロウロし始めて決勝に出れるようになってくる。「やっだぞ、遂に俺様の時代が来たか!」・・・がんばって決勝進んでもいつも後方争いの常連組み「・・・まだまだおせ~な~・・・次がんばるぞー!」


そんな私が何を間違えたのか調子こいてトップ集団が見える位置まで走れるようになる・・・「オリャーッ!ドリャーッ!」 只本能のままに走らせる、「パァーーーーーン!・・・パァーーーーーン!・・・」 目で見たモノがそのまま直接手足に伝わる単細胞状態?!(写真は1970年後半の鈴鹿サーキットのコースイン、正面が私。廻りの人の服装が70年代!)


そんな時、不思議と音が聞こえない「・・・シーーーーン・・・」幾ら耳を澄ませてもエンジンの音が少し聞こえているものの風の音も何もない無音状態 オートメーションの機械のようにブレーキを踏み、ヒール&トゥーでダブルクラッチを踏み、超敏感なステアリングをあて込み、大きくアクセルを踏み続ける・・・本当に速く走っている時ってなにも聞こえない無の世界だと次第に知ったんだ・・・(これはFL500を走らせている私の写真。)


いつしか2位争いのグループなんかに混ざって走れるようになってからのあるレースで、自分だけが進んで行く状況にはたと気が付いた。まだまだ余力を残して最後に行くぞと走っていたのにグングン進んでトップが見えてしまった!「オッリヤーッ!表彰台いったるぞーっ!・・・」 馬鹿な事に調子こいてセーブしてたの忘れてもう全開状態。二位集団抜けて更に行ってやるぞといつもの根性出してしまった・・・すると、「パァーーーーーン!・・・・ガシャン!ドカン!・・・」 またもや自分を見失い得意技のクラッシュなんぞを・・・集中している時こそ無音状態の冷静沈着な空間の中で戦わなきゃイケないとそう学んだのに・・・本能だけで走る愚かな行為の典型だった・・・(鈴鹿のヘアピンで愛車のTZ250を走らせる私、結局今でもこの後方排気のTZ250が自分にとって生涯最高のモーターサイクルになる。)


それでもポイントを取るようになり最終的にクラスを上がったりもした・・・それは本当に一生懸命で今思うと人生を掛けていた。「全日本の有名なレーサーやライダーに俺もなりたい!」真面目に思ってました・・・ひとつの予選で250台余りが予選落ちする世界・・・私みたいな凡人には所詮無理な世界でした・・・


諦めてレースをやめた時、「なんて俺って格好悪いんだろう・・・」 夢を目指してやって来たのに何の結果も残せない自分が無様で穴があったら入りたい。だから人にはレースをやってたなんて絶対に言いたくなかった・・・


必死で走った鈴鹿サーキットに岡山のTIサーキットにこの富士スピードウエイ・・・惨めな自分を思い出したくもない・・・だから、やめたあの日以来どこのサーキットコースへも行かなかったんだ。


あれから39年、この日は東京出張の時間調整で、何となく富士のゲートへとハンドルを切ってしまいました・・・段々と近づいて鼓動が高鳴ってくる・・・いい年こいて 「行くのよそうかな・・・やめようか・・・いや・・・」


辿り着いた富士スピードウエイは余りにも変わっていました・・・ススキだらけの田舎のコースが近代的な超一流コースに・・・なにもかも整備され立派になっていた・・・


現役の頃には決して来る事のなかったグランドスタンドでひとりサンドイッチを食べてみた。「ファーーーーーーーーン!・・・」富士の長いストレートを眺めていると、四輪で昔のグランチャンマシンみたいなレーサーが走っていた 「俺ならアレがいいなぁ、やっぱりハコよりレーサーだな…」 ・・・


更に昔のコースとの違いをいろいろ捜したりして「変わったなぁ…こんなシケインみたいなの出来てるんなら突っ込み方変わるよなぁ…」 もう2度と走れる訳はないけれど、ちゃっかりその気になっている・・・


レースの世界は凄い。自動車整備士として、ひとりの社会人として、どれだけ私を成長させてくれた事か・・・あの何とも言えない緊張感の中、立ち向かえるだけの強さを無理やり仕立てて挑もうとしていた若かりし頃の自分・・・瞬時に物事を判断し絶対に失敗は許されないあの空気感の中で私は人間として大きく成長して行った・・・「あぁ~来て良かった。やっぱりサーキットっていいなぁ・・・」39年経った今、純粋に私は思ったんだ。


惨めで恥ずかしくて誰にも胸を張って言えない自分の崩れ去った青春。それでも今、四輪をドリフトさせて鈴鹿のS字を駆け抜けてブラインドのデグナーへ突っ込んで行った自分が・・・ヘアピンを抜けて5速全開で後輪が流れ更に前輪がアウトに流れ始めるスプーンコーナーへのアプローチ・・・シケインも何も無く只全開で耐えていた富士の最終コーナー・・・あの時走っていた自分が今、走馬灯のように蘇ってくる・・・「格好悪くなんかないさっ、結果はどうであれ、君はがんばったじゃないか!…」って、富士が言ってくれた気がする。勝手に目頭が熱くなるってのも久し振りの事だったんだ・・・   2019.08.09 布引クラシックス松枝  

Posted by nunobiki_classics at 21:02旅をして来ましたよ!

2019年08月07日

1958NORTON DOMINATOR 長野県Tさんプチ報告その5


英国車に於けるプロップスタンドは飴のように曲がり壊れますよ。 このドミの場合も徹底的に破壊され二本あるはずのスタッドボルトも片側しか無くブラブラな状態「これで良く倒れんなぁ…」思います。


こうした類のモノは全周均一にアタリがあるからこそ締結できるのに、こんな状態ではイカンだろう?・・・


この場合、亀裂が起こらないように必ず火で炙り修正だ。こうした厚みのあるモノの場合決して冷間で曲げてはイケない。


乱暴に曲げられたモノだから変形も歪になっている。更にメインパイプにも幾分のダメージを負っているから正論的に曲げ直しても無駄。よって真円的な治具を作っても役に立たない。現物のパイプに沿うようにそれこそ飴細工のように変則的に修正する事が必要だ。


で、このスタッドボルトに歪みがある・・・よく観察するとこれは単に後から曲がった訳じゃない、新品の時からの歪だ。


これは鋳物であるが故に型による歪みを修正せず斜めに歪んだ面を基準にネジを切っているからだ(言葉では理解が難しいかな?)。なので、歪んだ面をフライス盤で削り正しい面を出し、これを元に改めてネジを切り直す・・・


で、このスタンドはUNF規格のネジで近年再販されたモノなので、新たにウイットウォース規格のヘリサート加工を施す(これで正しいスタッドが取付可能になる)。分かり易いようにボルトを差してみると、新たに作った基準面を元に正しく垂直が出ているのが分かる。


横から見てもこの通り、スッとボルトが平行だ・・・


ブラケットを塗装して正しいウイットウォース規格のスタッドボルトを取り付けてみた。手前のスタッドにはスプリング用の掛けがついているのが見える、これが正規。


で、良く見て欲しい。塗装はしても接触面や可動域にはネタを塗っていないところを・・・ここが教科書には載らない大切なポイントだ。先に言ったようにモノが締結される場合、その間に樹脂である塗膜は有っちゃイケないって事・・・いいかい?塗料は樹脂だと言う事。


だから・・・メインパイプの塗料もその部分だけは遠慮なく塗装を剥がす。おまけにこのフレームの塗装はクラシックモーターサイクルの天敵であるパウダーコーティングだから塗膜のなんと厚い事、憎しみを込めて剥がしてやった・・・(作業の進行上プロップスタンドはここまで、取付は後日。)


次は、前回に塗装を施したセンタースタンド。取り外されていたモノを私は復活させた。


今までグラグラなプロップスタンド一本で頑張って来たドミ。これで長い長野の冬にもシャンとしていられる。


更に、この納まり方キレイだと思わないか?レーサーのイメージが強いけれど、この美しい納まり方は実はフェザーベットフレームの陰の美学なんだ。
で、今回はスタンドの話を長々としたけれど、皆さん興味の無い事は分かる。しかし、スタンドに不具合が起こった場合、ピーピー言うのは君達だ。それから考えてもやはりスタンドとはストリートユーザーには大切なモノ。エンジンを掛けるとき、整備する時、そして保管する時にも無いよりも絶対に有る方が良いし常に正しく機能しなけりゃ困るんだ。ルックス的な事ばかり考えるのも良いが、本当はこうした縁の下の力持ち的な部品に守られているんだと再認識するべき・・・どうだい?明日から愛車のスタンドをそっと掛けてみては如何だろうか?・・・松枝






  

Posted by nunobiki_classics at 01:11作業中車両のプチ報告

2019年07月28日

梅雨明けですね、塗装作業再開致しましたよ…

1966TRIUMPH T120R Kさん、1959TRIUMPH T110 Wさん、1958NORTON Domi Tさん、今回は合同報告会塗装編でございます。

湿度の高い梅雨の時期…出来映えに影響するこの季節は塗装作業をしたくない。やりようはあるものの本当のところです。そして、近畿地方の梅雨明けと同時にペイント作業再開しましたよ。(この辺り1966T120R山口県はKさんのボンネヴィルです。)


下地作業…穴埋めや亀裂の溶接修理に板金作業にネジの再生とかやりまして、サンドブラストかけたりパテにグレージングパテにペーパー水研ぎを一生懸命に致します。地味な作業が延々と続くトンネルのような作業です・・・で、やっとマスキングして準備整いました。


で、当時を偲ぶクラシックモーターサイクルは現代塗装の概念とは違っています。先ず、部品にプラサフなどの下塗りは致しません!分かりますね?いきなり黒を塗るだけが本当です。しかも上塗りもしないのが本当です!・・・(えっ?…って聞こえますが本当です。)


下塗りを行うのは、ぺトロールタンク、オイルタンク、サイドパネル、マッドガード この四点だけです(フレームはまちまち)。写真は薄めにブラックを塗り、塗膜で凹凸を埋めないように気遣いながら塗ったところです。


下塗りもしない、上塗りもしない、塗料も悪い・・・なので当時のショールームでは新車なのにポロポロと塗装が剥げてたりした訳です。しかし、そうは言っても今の時代にガソリンがついただけで変質したり簡単に剥がれるのは忍びない・・・適切にアレンジします・・・必要と判断した所にはこっそりと下塗りのプラサフを…上塗りも状況に応じた質感にしてサラリと塗る・・・ポイントは塗膜の総厚みを可能な限り抑えて金属の質感を損なわないように塗る事。なので、上塗りも下塗りも塗ってないような感じだけど実はちゃんと考えて塗られてる…みたいな。


けれど、一般的な塗装屋は出来るだけ艶を出してやろう!厚みをつけてやろう!そう張り切ります。しかしこれがクラシックモーターサイクルに大敵。先に言ったぺトロールタンク等の外装部品以外に厚みをつけちゃイケない!過度な艶でテカテカにしてはイケない!なもんで巷で大流行の「パウダーコーティング」お願いだから英国車には使わないで欲しい!私の切なる願いです。
布引クラシックス塗装作業のご案内はコチラ 
ところで超お手軽倶楽部のKさんのボンネヴィル、予算無いのにこんな手の込んだ塗装しちゃダメなんだよなぁ本当は・・・


これは東京都Wさん、ワンテンのリフティングハンドルとプロップスタンドですね。激しく追突され無残な姿になってしまったけれど段々と美貌と取り戻しつつある。塗装の残りはぺトロールタンク、前後のマッドガード、オイルタンクにツールボックス等ですね。


これは長野県Tさんのドミのセンタースタンドです。思いのほか状態が悪かったドミも着々と進行中・・・因みに右のブレーキレバーはわたくし松枝のコマンド用でレバー比を変更してみましたよ。では、塗装作業進行しましたらご又報告致します。松枝
  

Posted by nunobiki_classics at 19:03作業中車両のプチ報告

2019年07月23日

1968 BSA A65T THUNDERBOLT 大阪市S様 納車整備報告

「布引お手軽倶楽部」1968 BSA A65T Thunderbolt 大阪府S様 完成のご報告です。

「・・・すみません、黒のBSA欲しいんですけど・・・」 エストレアに乗る彼はこれが初めての英国車だ。上背も標準的で一見物静かな彼に適した諸々を吟味する・・・そして相談の結果車両はBSA A65Tとなり、その予算は、「布引お手軽倶楽部偉いぞ堂々の200万円コース!」に決まった。


ここで「布引お手軽倶楽部」のご説明・・・
ここで言う200万円とは、諸費用税など全て込みで200万円と言う明朗会計。で、このコースの場合の車体価格は約170万円程度になる。この170万円の車体価格の枠の中に布引クラシックスとしての安心感を如何に詰め込んでいくのか・・・?ここがポイントだ。 ※お手軽倶楽部はコチラ


そして半年後、オリジナル度の高い上質なサンダーボルトが海を越えてやって来た。「・・・これは良い・・・素晴らしいぞ・・・」開けた途端に感動の出会いだ・・・ ※英国車の輸入販売はコチラ


エンジンは直ぐに始動しそこそこ安定している。電装系統も車体も実用上問題はない。普通ならこのままナンバーをつけて納める事が定石、それなら170万円でも利益が出る。


しかし、A65の場合、必ず見るべき場所がある・・・「大端部のガタの出方が悪いなぁ・・・」 やはりエンジンのボトムが疲労している。重いフライホイールに良く回るエンジンの負荷がここに集まる・・・


比較的ダメージの少ないコネクティングロッドの小端部にもガタがある。日陰の存在的なここもしっかりと交換&修正する。


これはメインベアリングのアウターレース側、シリアルナンバーの入るケースを絶対に傷めてはイケない。必ず十分に加熱し接触面に負荷を掛けずに脱着を遂行する。


ここには大容量のローラーベアリングが使われている。重いクランクシャフト&回転数に耐えるためのA65必須の装備だ。


これはタイミングサイドのメインベアリングで、ここはブッシュで構成される。これを旧式とみるのか先進的とみるのかは皆さん次第だ。


ピストンは75mm径と、このクラス最大の大きさ。焼き付きの跡も無くクリアランスも規定値内である事から各部の修正で対応する・・・


クリアランスの幾分広めのガイド及びバルブもピストン同様に再使用する。シートカット及び擦り合わせを丁寧に行う・・・ピストンにバルブ、これらは170万円に納める為の策だ。


皆さんはエンジン内部の動きには興味はない・・・「グォーーーーーン!」重いフライホイールを持つクランクシャフトがガンガンに廻り続ける・・・「シャカシャカシャカシャカ!」カムシャフトは長いプッシュロッドをこれでもかと突き上げ・・・「カチャカチャカチャカチャ!」ロッカーアームは反力の強いバルブスプリングと戦い・・・「シャーーーーーーー!」75mmの大径のピストンが毎分何千回転と上下運動を繰り返す・・・


しかし、どんなに古い時代に於いてもこれらが正確に作動する事は実は非常に大切な事なんだ。その意味でA65のシリンダーは偉いぞ。この底面の広いどっしとりした鋳鉄製シリンダー、上下で勝手に暴れ廻る部品達の腕を掴み「絶対に離さねーぞっ!」と、微動だにしない・・・これが後に私が語るA65の楽しい走りに直結する要因のひとつなんだ・・・


エンジンの性能を大きく左右するキャブレター、アマル社製930が1968年から採用された。このサンダーボルトはシングルでライトニングはツインキャブとなる。誰しもツインキャブレターが良いと思っているが、本当にそうだとしたら余りにも悲しい。


これはライトニングの930のツインキャブレター。一気筒に一基のそれは主にスロットル開度1/2~全開までに威力を発揮しA65の高性能さに寄与する。しかし、リターンスプリングも倍になりスロットルホルダーを廻す力も倍必要になる・・・要するに重い訳だ。そもそも私はスロットル操作こそモーターサイクルライディングの基礎だと皆さんに言ってきた。そして、その進化から現行車ではスッカンスッカンに軽くなる・・・その観点から倍になったこの重さは不利であるばかりか正確さや楽しさをも奪い兼ねない。


対してこれはサンダーボルトのシングルキャブレター、勿論走りはおとなしいモノにはなるもののスプリングの反力は半分とすこぶる軽い。これが正確なスロットル操作を実現し楽しい走りに直結する。手の小さな日本人が重いスロットルを握りしめ高性能さを求める事も英国車の楽しさ?・・・対して走り始めから夕方の帰宅迄、常に楽しく且つ緩やかなスロットル操作が可能なサンダーボルトの走りもそれに変わらず価値あるモノ?・・・どちらに優劣があるとは言ってない。何れにしも個人の目的に合わせて車種を選択すべし!これが大切。英国車の場合、キャブレターの個数を変える時にはシリンダーヘッドも同時に交換する必要があるからだ。


小さくまとめると、今回のサンダーボルトを170万円に納める為のポイントとは?・・・エンジンボトムの作業を優先したところだ。無論私的には辛くなるけれどオーナーの将来を鑑みベストだと判断した上での事だ・・・エンジンとはボトムの状態が何よりも大切。年老いた爺さんに血気盛んな若者を「おんぶ」させるなんて誰が出来る?と言いたい・・・トップなら何れお小遣いを貯めて作業は出来るじゃないか・・・


続いて、お手軽倶楽部で重視するのは電装系統だ。これが路上でトラブルと顧客は対応できないから最重要項目としている・・・メインハーネスを始め全てを刷新している。そして、これは発電機のステーターコイルで大切な役目を担う。で、元のモノを精査すると交換が望ましい、同時に10Aと容量を上げたルーカス社製RM21を選択した。 ※大切な電気の話はコチラ

そしてルーカス社製6CAのコンタクトポイントブレーカー、エンジンに火花を飛ばす為の指令装置、その中に有るアジャスターだ。以前の4CAに較べ各部の調整を独立して取れるようになった反面スクリュー等の数は多い。半世紀以上も経つとスクリューの痛みも進みこのように工具で廻せなくなる。


このような誰も交換しないモノを徹底して復元する辺りが正に布引流・・・以後の作業が効率的になるばかりか後世に渡り正しいモノとして維持出来る訳だ。


さあ、ここからがA65の本番だ。BSAのAシリーズを語る上で外せないのがフレーム剛性の高さ。見ての通りの強靭さはBSA社のアイデンティティーだ。


これはスイングアームのピボット部分だが当時ではあり得ない位の幅がある。両手をすぼめているよりも肩幅位に広げた方が断然モノは保持し易い。当シリーズの走りの良さの正にここが原点なんだ!


モーターサイクルの最重要箇所であるステアリング。ハンドルを離せば「・・・ストンッ・・・ストンッ・・・」と勝手に曲がり切る自由度がなければ楽しい走りは得られない・・・


この幾分丸みを帯びたスイングアームは、暗にそのバランスを語っている・・・高剛性なフレームに幾分優し気なスイングアーム・・・それに伝わり来るA65の元気なエンジン出力を受け止める時・・・現行車の高性能な話しとはかけ離れている事は無論知っている。しかし、敢えて語るがここの「シナリ」が実用速度域でどれ程の幸せを我々に与えてくれているのか・・・現行車ライダーには知る由もないんだ。


この時代のフロントフォークなどゴミだと現代人は言う・・・本当にそうかな?・・・自分の腕の無さを時代に転嫁する事はよせ・・・このカートリッジ式ダンパーは「あんたの腕次第なんじやないの?・・・」と語っている・・・


そしてエンジンをかける時が来た。オイルにガソリンを入れ、潤滑系統が機能している事を確認し火を入れる 「ズッ・・・ズドゥドゥドゥーーーーン!・・・」 充電系統の作動を確認し一旦火を止める・・・


そして再びエンジンを始動し今度はイグニッションのタイミングを調整し、最後にキャブレターの調整をとる 「・・・ズドゥドゥドゥーーーーン!・・・ズンズンズンズンズン・・・」 こうして新規検査受けの準備は整った・・・


翌日、新規検査を受ける。通常の検査ラインを通り新規検査へ出向き、そして最後に新規登録だ。今回は何時にも増して順調に事が進んだ・・・


ところで、このサンダーボルトに跨り走っていると私はいつもと違う事が頭に浮かんで来る・・・皆さんはもう聞き飽きている私の口癖「人生は一度きりなんだぞ・・・」 これを機会に本気で頭に描いて欲しい・・・


少なくとも私の店に来てくれる顧客は少なからず自分の人生と葛藤している。彼女がいて、家庭があって、仕事もある・・・全てが上手く行く訳じゃない、いや全てが上手く行かないと言った方が正しいかもしれない・・・


気がつけば何年もの時間が過ぎている事にハッとする自分に焦ってばかり・・・だけれども、男ってバイクが好きなんだ!それに嘘をついて生きるのはもうやめろと言っている。走りたければ走れよ!乗りたければ乗れよ!それが男の子の進むべき道じゃないのか?・・・自分を男だと思うなら 「人生とは一度きりなんだぞ・・・」 真面目に考えて欲しいと思うんだ・・・


こうしてサンダーボルトに跨る時、私は違う人間になれる。何にも関わらなくてもいい自由な時間が私を強烈に守ってくれる・・・それが本当に嬉しくて、その為に走っている気がする・・・


これでSさんの為の「布引お手軽倶楽部偉いぞ堂々の200万円コース!」車体価格170万円の枠の中、私も精一杯に尽力した。電装系統を刷新し、車体を整備し、エンジンのボトムを中心に出来得る限りの作業を施した。ビギナーがデビューするにあたって見た目も中身も十二分なモノを用意したつもりだ・・・


そしてサンダーボルトにもう一度命を吹き込めた事・・・これが私は何より嬉しい・・・どうだい?この凛としたA65の雄姿を見て欲しい・・・遠くアメリカから強制的に連れて来られ不安に怯えていたサンダーボルトも今は明るく笑顔を取り戻した。その走っている横顔を見ながら私は言ったんだ 「・・・おーいっ!ずっと一緒だぞっ!・・・」 すると 「・・・うん、ついてくーっ!・・・」 そう風の中から聞こえたんだ・・・ 


そして、今回は試運転の報告はしない。生粋の2スト乗りだった私が24才の時に心動かされた思い出のモーターサイクルであるA65・・・それが如何に魅力に溢れたマシンなのか別の機会に報告したいと思っている・・・ 2019/07/23 布引クラシックス 社長 松枝

試運転コースは以下です。


参考記録
一般道走行距離・・・・・・・・298.1km
高速道路走行距離・・・・・・23.2km 
総走行距離・・・・・・・・・・・・321.3km

使用燃料(プレミアム)・・・・12.72L
燃費・・・・・・・・・・・・・・・・・・25.3km/h
燃料タンク容量・・・・・・・・・約9L
リザーブ容量・・・・・・・・・・・約1.5L
航続距離の目安・・・・・・・・約185km
  

Posted by nunobiki_classics at 23:24作業完成報告 BSA

2019年07月20日

1958NORTON DOMINATOR 長野県Tさんプチ報告その3


布引クラシックスとは悪徳商会ではござ~ません。出来るだけTさんにリーズナブルな価格にて修理を完工したい、本当のところです。但し、このドミ、やってもやっても不具合箇所が連鎖反応的に出て来て、結局こんな姿になってしまいましたよ・・・


モーターサイクルの要であるステアリング。動きが固いのと動き方が不自然だし、ハンドルが右だけ大きく切れてタンクに当たってるし・・・バラしたくないけどバラしました。
(※お願い・・・今回も各部オイル汚れでドロドロのダラダラ・・・写真は全て洗浄後のモノですから念の為・・・)


ドミは元々ボール式であるものの、以前に交換されている。これはアンギュラーボールベアリングと言って一定方向からの力に対応し易い。これは非常に良い選択なんだけど、動きがゴキゴキ・・・どんなに良いものでもメンテナンスはしなきゃならない。


御覧のように力に対して方向性があるので取り付けには注意して欲しい。間違っても反対に着けてはイケない。


こうして十分に給油して取り付ける。すると今まで「ゴー・・・ゴー・・・」だったものが「スッコン・・・スッコン・・・」と、なってくれました。この素早い動きが路面への追従性へとつながる・・・古くても新しくても全てのモーターサイクル共通の話なんです。


これはステアリングストッパーで、転倒等によって激しく曲がると同時に一方のストッパー部分が欠損する程になっている。これが右と左の舵角が違う原因だ。


厚い鉄板を曲げ直しストッパー部分を溶接で肉盛りし脱着を繰り返して位置を調整する。左右が均等に、更に他のモノに干渉しないように・・・些細な事かも知れないが、止るモノがしっかりと止るって事は大切なんだ。


ステアリングを取り外すって事はフロントフォークも取り外す訳で・・・そこはさらりとシールとゲイター交換で済まそうと思いきや・・・


・・・英国車の常、オイルが入ってない。恐らく10年単位で見てない感じ。ボトムにあるダンパーのボディーもすっかり錆びだらけ・・・こんなに底部まで錆びるなんて・・・


で、この大切なダンパーロッドの丁度大切な場所に大きく酸化腐食が・・・これはですね、重要な機能である伸び側のダンパー効果ゼロを表していますよ。シール交換だけでサラリと済ませるはずだったのに・・・


で、見てみぬ振りしてたリアショックアブソーバー・・・絶対何もしないと決めていたものの「いい加減しろよ!こんなんで走れるかよ!・・・」 男マツエダ怒り爆発です・・・、こんな大切な場所がこれでイイんか?・・・もうこのドミ、説明するの疲れました。見て分かる人だけ理解してください。つづく・・・ 松枝



  

Posted by nunobiki_classics at 21:46作業中車両のプチ報告

2019年07月15日

1958NORTON DOMINATOR 長野県Tさんプチ報告その2


Tさんからゴーサインを頂き始めたドミの修復作業・・・これがですね、めちゃ危ないんですこの車体。競技に出たかどうかは知りませんが、レース用としての自己流加工を随所にしてくれているんです。で、わたくし競技の世界ってのはちゃんとツボを押さえているつもりです。レースの世界が如何に厳しいモノなのか知ってます。しかし今回のこの仕事ぶり・・・こんなんじゃかえってアブネーヨ!公道には公道の、サーキットにはサーキットのやり方ってものがあるだろうが・・・


皆さん、写真ではキレイに見えますけどね、とにかく汚い!ヒドイ!ドロドロでダラダラ・・・こんなレーサーってありますか?ノートン系エンジンでこんなにオイル漏れるモノありますか?・・・競技車両ってのはどこもかしこもピカピカのツルツルで一点の故障も見逃さない!・・・これが常識中の常識じゃないか。


アーシングかなんか知りませんがこんな事ばかりに気を遣って燃料ホースにスタンダードよりも小径のモノ使うって有り得ますか?


このリアブレーキのロッドはホンダかなんかの流用でそれは良しとしても斜めにグイグイっと引っ張って取り付けて、スイングアームにキコキコ干渉しても平気って、なんで?


フットレストはあさって向いて、スターターレバーはユルユルに緩み軸は大きく歪んでて、シフトリンケージはそこいらに干渉してる・・・電装に、ブレーキに、車体に言い出したらキリがないくらいに不具合箇所があって問題山積!


普段は愚痴などこぼさないわたくし仏の松枝も、今回ばかりは怒り心頭!レース気取りのテメーらを叩き切ってやる!・・・


・・・と言う事で、安全走行の基本はホイールから。ノートン系のホイールベアリングは片側単列式でもう一方が複列式が基本。


で、スタンダードでは開放型となりますが、今回は全個数シールド付きに交換します。青いものは複列式のシールドタイプですね。


これはフロントのハブの中に有るアクスルシャフトのスペーサー&ガイド。その三角のガイドが外れている。


競技では無くても良いとは言うものの、公道上ではあるべきだ。もう一度修正して圧入して元の戻してやりますよ。


バッリバリにヒビの入った古いタイヤも交換。当初、立て溝系のクラシカルなモノを勧めたら「エイボンのアレにしてください!・・・」 このAM26はTさんからのリクエスト。 


フロントもこうしておニューになりました。タイヤってのはゴムなんでとにもかくにも鮮度が命。ゴムは新しくなきゃイケないんです。


このバランスドリムは英国製が王道であるものの競技に使う場合は精度の高い日本製を使うのが日本人。しかし、国産の場合、適当に組まれている場合のなんと多い事・・・「おいっ、このホイール組んだ奴、ふざけるなよ!リムとハブの穴の方向がこれだけ合ってないのに無理やりスポーク通しやがって・・・おまけにキンキンキン・・・って張り過ぎだよ!・・・」


まぁこんなレベルは素人にしかできませんよ・・・出来ないんなら業者に頼めっつーの・・・(写真では分かり難いけど酷いんです。)


で、このフットレストの向きってなんだ???・・・こんなので運転できるんか?・・・分からんわ・・・


フレーム側のブラケット修正して、ホールディングタイプのバーを溶接で肉盛りして向きの調整する・・・


こうしてもとに戻して、幾分の角度を残してやるのがミソ。荷重がかかったりヘタリでフラットの方向になるので、ここでフラットにせず後の調整で辻褄合わせる・・・


ドロドロのリアブレーキのリンケージ一式と取り外してやり直す。誰かが一生懸命作ったとは思うけど・・・


これはホンダかなんかのミリサイズのロッド・・・誰かがやって傷の残るロッドをちゃんと必要な箇所に必要なだけの曲がりを作り直す・・・


斜めに通されスイングアームに干渉していたブレーキロッドもこうして力のかかる向きに相対させどこにも干渉しないように位置させる・・・そんな当たり前の事を怠るとレースの世界では命取りになる・・・それ位みんなサーキットでは神経尖らせてやっているのに一体なんなんだよこのレベル・・・もう怒りが収まらんわ!・・・
って事で今回は「仏のマツエダ怒りの心頭節」を聞いて頂きました。このように走る事も危険なドミが公道仕様として一体どのように変身するのか?皆さんにも是非見守って頂きたいと思います、つづく・・・ 松枝






  

Posted by nunobiki_classics at 21:07作業中車両のプチ報告

2019年07月07日

1958 NORTON DOMINATOR 長野県Tさん 作業のプチ報告その1


遠くは長野県から修理の依頼を頂いたTさんのドミネーター、作業に着手致しましたよ。御覧のようにドミレーサースタイルにカスタマイズされた風体はやっぱりカッコイイ・・・


今は少なくなったものの、その昔はこのドミ系レーサーも沢山やりました。私もマシンは違いますがサーキットガンガン走ってましたよ(そう見えないでしょ・・・)。


エンジンを分解していくと過去にいろいろとスペシャルな加工がされている、フムフム・・・


但し、外部の作業のレベルが低く良い状態とは言えないなぁ・・・まともに走らせるには正確な作業をしなきゃ危険過ぎるし・・・


その他いろいろと調べ上げ、パーツをピックアップしオーダーする・・・Tさんが颯爽と走らせるイメージを頭に描き作業は進むのでした・・・つづく
  

Posted by nunobiki_classics at 20:52作業中車両のプチ報告

2019年06月30日

作業中車両オーナー専用ページ 「秘密の小部屋」へようこそ・・・


・・・お知らせ・・・
作業を依頼中のオーナー様専用個室「秘密の小部屋」 「秘密の小部屋 PartⅡ」へ移行しました。引き続きのご愛読よろしくお願い致します。

「秘密の小部屋 PartⅡ」コチラ 

「2019年度お預かり車両の作業待ち状況」コチラです。

作業へのお問い合わせ及びご要望はお気軽に以下までお寄せ下さい。
メールinfo@nunobikiclassics.com
電話 079-557-1203
携帯 090-8466-9959
担当 社長 松枝  

Posted by nunobiki_classics at 13:02作業車両 オーナー専用個室

2019年06月29日

1965 TRIUMPH T120R プチ報告その1

1965 TRIUMPH T120R BONNEVILLE 布引お手軽倶楽部最上クラスHさん

Aさんからオーダー頂いた1965年のボンネヴィル、納車に向けた整備を始めましたよ。


先ずは外装を取り外し、状況判断を始めようと・・・遥か遠くアメリカはオレゴン州からやって来たボンネヴィル・・・なんだかオレゴン州ってだけで愛着湧いてます(笑)


その他諸々、段々と骨組みが見えて来る、今回は「お手軽倶楽部最上クラス」故に極力やる事を抑えたい「ん・・・フムフム・・・」


しかし、前後のマッドガードは汎用品が着いていたぞ・・・取り外したタンクやシートやホイールもイマイチか? 


オイルタンクにサイドパネルにいろいろ・・・「あれ?・・・なんでもかんでもガンメタリックに塗られている・・・」


皆さん、ご覧ください。これが1965年製のルーカス社製メインハーネス、正真正銘の1965年製・・・


取り外すとこんな感じ。製造当時の風情が漂いいいんだけともう使えない・・・って事は全てやり替えるって事?


以前この車体は良品だと言いましたがウソでした訂正します・・・全てガンメタリックに塗られた外装・・・状態の悪いフレームの塗装・・・機関の整備に加えてペイント作業も加わる事に。そして電装系統は全てと・・・そう、結構やりがいありそうです、本気でやらなきゃならなくなりました、あれ~頑張りますよ!松枝

Hさんのプチ報告その2はコチラ  

Posted by nunobiki_classics at 21:18作業中車両のプチ報告

2019年06月23日

布引クラシックス 「軽作業」 只今受付中です!



布引クラシックスでは作業の効率を図る為、以下に区分けし作業を進めています。

・「契約済み車両整備」・・・布引クラシックスで購入頂いた車両の納車に向けた作業。
・「販売用車両整備」・・・布引クラシックスが販売する為の車両整備。
・「一般重整備」・・・レストア作業、エンジン分解修理など大掛かりな作業。
・「軽作業」・・・車検や不調など比較的軽度な作業。

で、只今「軽作業」枠に空きが出ましたのでご案内致します。


「整備頼みたいけど聞きづらいなぁ・・・」 そんな事はありません!担当マツエダは仏のような優しい対応で有名、特にビギナーには優しいと評判なんですよ。 車検整備・・・エンジンの不調・・・オイルやタイヤの交換・・・どんな些細な事でも構いません、遠慮せずに尋ねてください。


「こんな事聞くの、恥ずかしくないかなぁ・・・」 何も背伸びはしなくて結構。大事な事は愛車が元気に走れるようになる事!辛いのは愛車なんです。どんな風に?何処にポイントを置いて?予算はどれくらい?・・・大丈夫、如何なる場合にも真面目に貴方の話を聞くのが布引クラシックスの流儀なのです。

布引クラシックス作業状況のご報告は→コチラ
布引クラシックス自社便による納車引取は→コチラ
問い合わせ先は以下です。
布引クラシックス 079-557-1203又は090-8466-9959
info@nunobikiclassics.com
皆さんの問い合わせ、お待ちしてます!担当マツエダ
  

Posted by nunobiki_classics at 12:04お知らせ

2019年06月20日

1968 BSA A65T 大阪市S様 作業のプチ報告その4


ちょっと巻き戻します・・・この車体は過去にプロップスタンドのつけ根部分を破損したかなんかで、取り外した上に溶接している・・・


しかし、それが適当な作業でスタンドがあさっての方向を向いて使えない。なので改めて切り取りやり直す・・・


緩衝の具合を確かめつつ位置決めし正しく溶接する・・・


これは発電用のステーターコイル、お手軽倶楽部なら再使用が基本。しかし、交換の必要がある・・・で、新品のRМ21を取り付ける事に・・・


これは点火装置のコンタクトポイントブレーカーでLucas社製の 6CA 。左右のタイミングとポイントのギャップを分離して調整できるようになる4CAの発展型。


しかし、過去の作業によってスクリューやアジャスターの頭の痛みが酷い。布引クオリティーとしては如何なる場合も的確な調整が出来るように改善する・・・


左が元のモノ、右が新しいモノ・・・


正しい点火装置の調整にはパーツの状態を先ずは整える、如何なる場合にもこれが基本・・・
で、ここで皆さんに実践して欲しい事は、ボルトやスクリューの扱い方に意味を持って欲しい。径の太いモノと細いモノ、ピッチの粗いモノと細かなモノ・・・それぞれに理由があるから、馬鹿力で何でも絞める事は無知の証。このような小さなモノなら指先の力で十二分に締結できるんだ。なので、これからは径やピッチや強度など得られる情報の範囲内でいいから是非頭を使った整備をやってみて欲しい・・・


エンジンを始動し・・・一通りの調整を行い・・・そしてエンジンと止めてサンダーボルトを休ませているところ・・・この時間ってのは自動車整備士にとって大切、何台作り上げても感動の瞬間でグッと込み上げて来るモノがあるのです・・・
さて、この後は新規検査と登録を済ませ試運転へと出かけたいと思います。完成しましたら是非ブログ読んで下さいね。松枝

  

Posted by nunobiki_classics at 21:08作業中車両のプチ報告

2019年06月07日

1960TRIUMPH TR6 神戸市N様 車検整備致しました。


プリユニットモデルオーナーの中でも親しくさせて頂いている神戸市N様所有のトロフィーを車検整備させて頂きました。


このトロフィーは以前に私がレストアし(レストア作業はコチラ)、更に2代目オーナーのNさんに引き継いだ時に幾分のモディファイを行った上質な車両(モディファイの作業はコチラ)。


同じ買うならこうした良質なモノを買うべきだという典型的なモノ。1960年辺りのプリユニットモデルとは本来ことごとく傷み切っているモノだと皆さん知るべきだ。


だが、預かった車体を見るとリザーブ側のぺトロールタップが開いたまま・・・そしてエンジンはかからない。


いくら通気性の高いアマル社製のキャブレターと言っても長期間ぺトロールタップを開けたままだと常時ガソリンが供給され、結果内部に酸化腐食が起こる。


全てを洗浄し、各部を組み直し快調を得る・・・因みにこのモノブロックタイプのキャブレターをコンセントリックタイプに交換する事がベターだと言う者がいる。何を根拠に言っているのか私には理解出来ないが、モノブロックはモノブロックとして正しく走る・・・


そもそもこの時代の車両にモノブロックを継承する事は「らしい」走りを堪能できるからに他ならない。モノブロックモデルにコンセントリック入れて「これでOKだぜ!・・・」 ってのは、正に英国車的ナンセンスの極み、最悪の勘違いだと言っておく。


で、オーナーのNさんに苦言を呈しよう。フロートバルブを使うキャブレターの場合、タップを閉める事はオーバーフローの危険性からも英国車乗りの基本中の基本、火災の可能性も有るのだから今回は大きく反省してもらいたい。(写真は他の車体)


この時代のモデルに乗るにはこのルーカス社製の各電装部品のオリジナリティーが重要だ。このリアブレーキのスイッチとてひとつのこだわりの部分となる・・・しかし、これが時代的完成度の低さを露呈している。とにかく敏感過ぎてやり難い、ブレーキペダルを調整するとスイッチの作動に即影響が出て扱いづらいったらありゃしない・・・


月日が経てば何をしても導通しなくなる。指示しているのは接点で真っ黒に腐食している、左にある相手側の接点も然り。分解して磨き給油もする。そして、ユニットモデル等に使われる後のスイッチを取り付けて「この方が良いんだよ・・・」などというオーナーに成り下がってはいけないぞ。不便でもやり難くてもこだわるべきところは絶対に譲らない!見栄を張りつつ使い続ける・・・それが布引流英国車乗りのわきまえだ。


全てのオイルを交換する。布引クラシックスでは「ブラッドペン」コチラを使用する。違いが分かるから、皆さんも是非使ってみて欲しい。オイルの話Vol.1コチラ、Vol2コチラ、Vol3コチラです。で、その他各種の作業を行った上で検査受けを済ませた。


1963年までのトライアンフに乗る魅力のひとつにこのクロノメトリックがある。機械式の作動の仕草にこの時代の微笑ましさがあって誰しも幸せになれる・・・そして、プライマリーチェーン近辺の存在を感じながらエンジンをかけ試運転に出掛けた・・・


「ズンズンズンズンズンズン・・・ズッウォーーーーーーン・・・」プリユニットモデルの走り出しは豊かだ。ユニットモデルの硬質な感覚との違いは明白・・・


「ズンズンズンズンズンズン・・・ズッウォーーーーーーンッ!・・・チャッ・・・ズッウォーーーーーーン!・・・」ユニットモデルよりも幾分の重さを感じながらも爽快に走りだす・・・


おっさんバイクなんかじゃないぞ!一度スロットルを大きく開ければ・・・「ズッウォーーーーーーンッ!・・・チャッ・・・ズッウォーーーーーーン!・・・」 「オーッ!キモチイイー!・・・」 


「ズンズンズンズン・・・チャッ・・・ズッウォーーーーーーン・・・・・・ズバッバッバッバッバッバッ!・・・」 ギアをサードに下げ徐々にスロットルを開けて猛然と加速を始めるスポーツ性能・・・この感覚は言葉で言えない正にプリユニットモデル特有の感覚。走るのか走らないのかと言えば「何言ってんだ、走るってば!・・・」 熟成されたスカッチのように角のとれた豊かさと言う表現がピタリとあてはまる。


車体の感覚はユニットモデルに比べると総じて柔軟で、股の下に三つの箱の存在を感じながらストローク感のある動きを見せる。1959年モデルまでの低剛性感を継承しつつ、逆にユニットモデルにはない「ほんわか感」よろしく「ズンズンズンズン・・・フワッン・・・フワッン・・・フワッン・・・」と来て、時に「ズドドドドドンッ!・・・」と荒い路面の衝撃をモロに伝える素晴らしい低衝撃吸収性能(笑)。


だが、ハイウェイに上がっても何も心配ないらない、積極的に走ればいい。「ズンズンズンズンズンズン・・・ズッウォーーーーーーン!・・・」 何処にでも行ける絶対的な安心感。そして1インチバーを握れる事の優越感も合わさって俄然強者の想いも湧き立ってくる。


結局のところ、トライアンフに於ける1960~1962年モデルの意味とはなんだろう?・・・素人が言う「英国車は絶対に鼓動感ですよね!・・・」モノを何でも一元化してしまうそんな薄っぺらなモノじゃない。


それは、「走る楽しみ」 「鑑賞する楽しみ」 「労わる楽しみ」 この三つが絶妙なバランスを見せる。リジットモデルのように人間の負担が大きく共に傷みを分かち合う阿吽の呼吸的乗り物の要素?・・・ユニットモデルのように硬質で攻めのモーターサイクルライフを堪能できるモノ?・・・それは双方の良質なDNAをしっかりと奥底に潜ませつつ、走る事、観る事、労わる事、そのいずれにも「愛」のオーラが漂い高いレベルで常にオーナーを飽きさせない。要するにオーナーになったならそこで車種選びは終焉を迎える・・・そんなモーターサイクルなんだ。


それを迎えるオーナーにも相応のレベルが必要だ。「鼓動感ばかりを気にする素人など一昨日来やがれ!」 シングルからツインモデルを、リジットモデルからユニットモデルを、多くのモーターサイクルを実体験し、その上で我がプリユニットモデルの存在感を正しく認識する。真面目にモーターサイクルを考えて走って来た者のみぞプリユニットモデルの意味が分かる。


懐の深さの無い者には選んで欲しくない。モノを愛する感覚の無い者に乗っては欲しくない。ここまで生き長らえて来た尊いプリユニットモデルにもう一度幸せな人生を与え、共に生きて行こうとする心を持つ者にこそ辿り着く境地・・・長く走り続けても負担に感じさせず、ずっとずっと快感を感じられる上質で微細な鼓動感は、そうした者にしか分からないんだ・・・ 2019.06.07 布引クラシックス 松枝






  

Posted by nunobiki_classics at 15:38作業完成報告トライアンフ編

2019年05月26日

布引ファミリースパルタツー行ってきましたよ。


いつもブログでやってる布引流英国車講座、今回は実技編として実施。「英国車の性能を更に引き立てる走り方とは一体なんぞや?」・・・少数精鋭の布引ファミリー対象にいつもと違ったツーリングをして来ましたよ。(布引流英国車講座 ビギナー編中級者編上級者編実技編)


前回の淡路島ツーでは「モーターサイクルってのは後輪で旋回するんですよ!」…「前輪ってのは後輪に追従するんであって決して前輪で曲がるんじゃないんですよ!」…「だからこそ後輪を支配できる位置にしっかりとお尻を置かなきゃイケないんですよ!」…これを学びました。 淡路島ツーはコチラ


参加はトロフィースペシャルのМ氏とT90SC(500改)のH氏。もう教える事ないくらい上手に走れるお二人ですがそこは原点回帰。基本に立ち返って頂きました。


H氏のお尻の位置…分かりますか?この位置がコーナーでの旋回性に寄与する。タンクにへばりついてイキガッテいる貴方、次回からコーナーが見えたらここですよ!世界が変わります・・・


М氏の場合、エキゾーストパイプが股の間にあるのでスタイルが制約される。彼の場合は長身で足も長いからまだ良い方。足の短い人は、自分を良く考えてルックスを選択しなきゃいけませんね。


今回のコースは兵庫県民であるマツエダが楽しいコーナーのある道を厳選致しました。出来るだけ旋回時間の長いコーナーを選びましたよ。


ここは生野銀山のおひざ元、銀山湖。対向車に気を配り、その範囲で楽しませてもらうには絶好の場所。春の新緑、秋の紅葉…モーターサイクリストを楽しませてくれます。お近くの方、是非一度訪ねてみては…


そして、今回のお題は…「フットレストワーク!」 折角後輪寄りに移したお尻でも、只単にドテッと座ってるだけじゃ不安定極まりない!・・・それはフットレストワーク、皆さんの足の裏を如何にして使うのか?…お尻よりも分かりにくい足の裏…実はこれが楽しいライディングのカギなのです。


「いいかお前たち!コーナーの旋回ってのは足の裏だっ!そして内ふくらはぎ!ヒザ!肘の感覚!でマシンをホールドしろっ!・・・要するに下半身で支配するんだそ!…」 「ドデンッと座る奴があるか、中腰だぞチュゥゴシッ!」  マツエダが熱くゲキを飛ばし皆を促します。「フットレストを踏む???…こうか?…こんな感じか?…中腰ってこんなのか?…」 コースの途中でコーチングです。


H氏の足の裏が強くフットレストを意識している事が分かりますか?・・・そうです、コーナーを旋回する時に皆さんはシートをお尻で強く押し付けようとします・・・それは最終的に間違いです。強く押し付ける場所は「フットレスト!」、そしてお尻は中腰で下敷き一枚スッと入る程度に浮かし気味にし、あくまでフットレストに強く載せ車体の重心を下げる事が本当なんだ。


こうしてコーナーの手前になると後輪側に着座しフットレストに体重を載せる意識を持ち身構える事が大切。安全に楽しく走る為の基本です。


で、「布引流英国車上級者たる者、クレバーになれ!」・・・ここからがミソです・・・これはトライアンフのユニット650の車体の中枢部分、スイングアームの取付部です。プリユニットモデルならこの状態のまま、メインチューブに十字型についているだけの華奢な構造…ユニットモデルになってここに補強するプレートが着いて剛性を補うようになるものの、ボルトで締結する事が主な低剛性フレーム。


先の補強用にプレートはそれ故にボルト穴に密に接触する専用の穴とボルトを使う事と配慮され、プリユニットモデルから劇的な性能アップを遂げた。


そのプレートの管理はユニットトラの所有者の知るべき大切な場所。写真のボルト&ナット類が正規のモノで布引製のユニットトラには正しく取り付けられている。それは穴との接触面にネジ山の無いフラットな面がある正規品、更にはこれらの向きにも意味がある。1965年辺りではこれが正しい取り付け方だ。


トライアンフのユニットモデルでは、きつめのコーナーや段差など比較的低い速度域で症状が出る。スイングアームはもとよりメインフレームとリアフレームの締結部に捻じれが出る。


そして、剛性の極端に低いフロントフォークは曲がり、元々の動きの悪さと無いに等しいダンパー性能故に路面からの衝撃とはチグハグな動きとなり暴れだす。


更に、制動性能も低く前後のバランスを上手く取り損ねると俄然停まらなくなるから違う意味の緊張感も要る・・・現行車からすれば製品化さえ全くもって難しいレベルだけれども、こうした一連の動きが悪いと言うのならとうの昔にトライアンフなど消滅している…世界中に愛好家が絶えないその理由とは、この軽量且つ低剛性さが実用速度域で限界を見せてくれる事…且つ一般人にこそ扱い易いシロモノである事…それによって忘れていたモーターサイクル本来の醍醐味を呼び覚ます事が出来る事…そしてその根源とは細いパイプにボルトで締結された弱いフレーム、要であるスイングアームの取付部のモロな貧弱さ等による低剛性設計からもたらされていると知って欲しい。


対してこれが A65の同じ場所。歴代のBSAの車体構造は溶接(又はロウ付けもある)で強固に接続され幅の広いメインフレームにスイングアームがガンッと取り付けられる高剛性フレーム・・・トライアンフとは全く対照的な構成に思想。一見なんて事ない景色に見えるが…


そのA65の走りとは・・・これがトライアンフとは全く違った景色を与えてくれる。剛性の高いエンジンを剛性の高いフレームに積むが故に走りの神髄が見えて来る。自分のスロットルワークが見事なまでにリアタイヤの接地面と直結するかの如く支配できる。ゴールドスターに始まるBシリーズにこれらAシリーズが目指した共通のコンセプト。・・・しっかりとしたエンジンに車体、いやがうえにも着座位置を後方に取らせるその車体レイアウト。一度スロットルを全開にした時には「オーッ・・・なるほどーっ!・・・」高いレベルの上級者であればある程、断然納得できる世界がそこに広がっている…


皆さんが考えている以上に低剛性なトライアンフ、皆さんが気がついていない超高剛性なBSA系フレーム。どちらが良いとか言ってる訳じゃない。トライアンフは低剛さ故の至福の時がそこにはあり、スロットルワークの妙がA65にはある。結局のところモーターサイクルってのはどんなモノでもそれぞれに良さがあって、どれも楽しいモノなんだと言いたいんだな。


で、今回のおさらいを致しますよ。「モーターサイクルとは後輪で旋回するモノだ!」 これ前回の淡路島ツーで言いました。そして今回は「コーナーリングとはフットレストに体重を載せ中腰で旋回するべし!」 先にも言ったように今回の話は分かりづらい。けれど、このレベルの高い二人ならソロで走っている時にも「はっは~この事か…」と何れ気が付くはず。その時の礎になる日が今日なんだ。


では、皆さんにもお願いしよう…ルックスに気を配る事も大切だけど、自分の愛車をもう一段深く見つめ直すことも必要じゃないかな?…「フレームは他とどう違うのか?…エンジンってどう積まれているのかな?…フレームがボルトオンと溶接の違い…電気溶接とロウ付けって…スイングアームの取り付け方も違うのか…」 


私はそもそも愛車を溺愛しろ!と皆に強く言っている。その中には洗車も保管もあるけれど愛車の得意不得意を把握してやる事も含まれている。人間にも得手不得手があるように英国車にもそれぞれの特徴がある。トライアンフの強い部分に弱い箇所、A65の強い部分に弱い箇所…古いモーターサイクルだからこそ愛車の不利な面は守ってやり、得意な部分を共に楽しませてもらう…それがクラシックスモーターサイクリストの基本中の基本。自分勝手に走っちゃイケないといつも言ってるだろ?


どうだい?次の休みには愛車を磨いている合間に少し構造を理解してみては?ブリティシュが好きだと口だけで言う人間にはなってはイケない。隅々の特徴を理解した上で積極的に走らせる事…それを愛車は待っているんだ… 「布引流英国車上級者たる者クレバーになれ!」是非お願いしたいと思いますよ…2019/05/26 布引クラシックス松枝



  

2019年05月16日

京都越畑「まつばら」さん 美味しいお蕎麦屋さんです。


「行くとこないなー・・・」とマンネリ化した貴方。山里目指して美味しいお蕎麦屋さんを訪ねてみませんか・・・?


細い々峠道を越えたら山里に・・・暫く行くと「まつばら」さんはあります・・・ここは正面玄関、引き戸を開けると「いらっしゃいませー!」っと地元のおばさんが元気よく迎えてくれます。(※・・・途中の峠道は細いです。対向車には十分注意してください。)


メニューは「ざる」と「おろし」の二本立て。それにそれぞれ天ざるセットとかあります。


地元産のそば粉を使った蕎麦は細めの十割そば。固めに茹でたそばは腰があって私好み。量も普通の人なら十分ですが大盛りもありますよ。
(※・・・窓の外の景色と一緒に楽しみましょう・・・)


こうした山菜の天ぷらって、蕎麦を食べる時にどうしても食べたくなるのは私だけでしょうか?・・・添えられた抹茶塩で食べると風味抜群です!


ここは四角いテーブル席、掘りごたつ風に足下さがってます。囲炉裏見ながらってのも風情ありです…


食後のデザートに「蕎麦プリン」。そば粉の粘りが蕎麦屋さんで食べるプリンを主張していて、ちょっと気に入ってしまいましたよ。


これは「ぜんざい」 真ん中のは蕎麦がき…走りに疲れた心身を癒してくれる、そんな意味でも絶品でした、プリン共々お薦めです!(ない時もあるみたいです…)


店内は靴を脱いで上がるのでブーツは脱ぎますよ。只、トイレは外にあって靴を脱いだ後の店内からでも、靴を履いたままの時は店外からも入れますのでバイク乗りにとってはありがたいですね。(左奥のガラスの向こうに見えるのが外にあるトイレです。)

まとめです・・・
ここは地元の皆さんでやっておられるお店、特に今日対応してくれたおばさんが元気で良かった。「折角来てくれたんだから美味いそば喰わさなきゃ・・・」って雰囲気プンプン!20周年と長く続いている理由が分かりましたよ。皆さんも美味しいお蕎麦を求めて軽く愛車を走らせてみませんか?・・・布引クラシックス 松枝

※補足その1・・・9号線方面に行かれる方、峠道を抜けた後 「棚田」 ありますよ。
※補足その2・・・国道477号線及び府道50号辺りに通行止めが多発しています、要確認ですよ!(2019/05現在)

「まつばら」さんの詳細はコチラ、地図はコチラ
  

Posted by nunobiki_classics at 11:45ツーリング向けグルメガイド

2019年05月14日

1968BSA A65T 大阪市S様 作業のプチ報告その3


前回、エンジンのボトムの完成まで進んだKさんのサンダーボルト。今回は車体にエンジンを搭載して更に整備が進みましたよ・・・


完全に整備されたプライマリーチェーン系統。けれどA50/65系のクラッチはトライアンフとの共通部品も多いが故に非常に弱いって事も言っておかなくちゃイケないね。


キャブレターはアマル社製928/4・・・これは1968年に装着されたオリジナルである証。ちょっとした宝物なんだな…


A65のエンジンのデザイン性及び整備性は高く、ボルト類の露出を極力避けたデザインはMVアグスタ的であり、ちょっと誇らしい…


ステアリング、スイングアーム、フレーム本体の修復作業も終わりそれぞれを組み立ててますよ。簡単に聞こえますが大変なんですよ・・・


特に動きの不可解だったステアリングの整備は、今回最もやって良かったと思う場所。オーナーの爽快感に直結する大切な場所なんだ。


この年代のフォークには二種類ありこれはサンダーボルト側のモノ。御覧のようにダンパーがカートリッジ式であることが分かる。


これはボトム側のブッシュでツバが輪っか状に割れているのが分かるかな?これはBSA系のこのフォークの設計的な特性。只単にナットの締め過ぎにより破損を助長している場合もあるので注意が必要だ。


この後、電装系統、コントロール関係、エンジン少し・・・と、いよいよ佳境を迎えました。作業が進展した時点で報告致しますよ、では・・・松枝
  

Posted by nunobiki_classics at 17:56作業中車両のプチ報告

2019年05月05日

1968BSA A65T 大阪市S様 作業のプチ報告その2


チラッと報告したSさんのA65Tのエンジン。結局のところボトムまで作業する事に・・・


クランクシャフトの振れの計測並びにオイルラインのクリーンナップとか・・・


計測するとジャーナル部分の摩耗は限度内で再使用可能であるからラッピング加工の上シェルの交換を・・・


コネクティングロッドの曲がりもなく至極健康的。スモールエンドのブッシュを交換する・・・


ドライブサイドのメインベアリングのアウターレースを打ち換え・・・


シャフトには新しいローラーベアリングを圧入し・・・


対するタイミングサイドのメインベアリングはブッシュとなり、新しいモノを打ち換えた後、擦り合わせによりクリアランスを調整する。


A65のカムはスタンダードとスピットファイア系の二種類、双方ともに元々性能は出せているので変更の必要なない。仮に、競技用として上の回転に振る場合はクランクシャフトの加工とセットでなければ意味を成さないから注意が必要だ。


ケースに仮組するクランクシャフトにカムシャフト・・・「お手軽倶楽部」では異例のエンジンボトムの完全整備だ・・・

  

Posted by nunobiki_classics at 11:31作業中車両のプチ報告

2019年05月03日

1959 TRIUMPH T110 東京都W様 修理作業 プチ報告その3


このT110の修理作業・・・そう、各部にデッドストックのパーツがある外装部品の修復・・・これらがこのワンテンの修理の大きな山場だ・・・


この時代の外装部品は殆どがデッドストックで手に入らない。しかし、オリジナル品にはリプロ品にはないキレがあって簡単には交換したくない。よって何が何でも修復する。


激しく追突され大きく歪んだマッドガード・・・全体を板金作業で大胆に成形した後、個々の修復作業に移る。ここは過去の修復の跡と今回の損傷で「シボリ」だけではもう直せない、なので切り取って修復する・・・


パイプを楕円に絞り、マッドガードの曲線に合わせてアールをつけ・・・


切り欠きの曲げをこうして再現する・・・


同じ板厚の鉄板を切り取る・・・


こうして同じ形に成形し、はめ込む・・・


極力内側から溶接しそこそこの形を出す。後は成形しフラットな面を出せばOKだ。


テールの後端部分は過去に数度の損傷があって傷みが激しい。使えない部分を最小限に切り取り、こうして内側に貼り付ける「アテ」を作る・・・


これも極力内面から溶接する・・・


このマッドガードの後端とは皆さんの背中に有るから何とも思っていないが、実はエンジンや車体の振動が集中し激しく振動している。こうしておけば強度も増すし幾らかの振動防止にも寄与できる。


このマッドガード上部の固定用のブラケットは、追突に寄る衝撃でちぎれてしまっている。


伸び切ってしまった部分を一旦切り取って、新しく鉄板を溶接し修復する。写真は位置合わせ中・・・


歪に変形していたマッドガードだが、アウトラインがキレイに出ているのが分かると思う・・・まぁ・・・リプロ品に交換すればボルト穴の位置の修正程度で作業は終わり簡単で作業も速い。しかし、オリジナルのマッドガードを簡単にゴミ箱に捨てるわけにはいかないんだ・・・


そうした考えは以前に作業したイギリス人も同じで幾多の修復の跡があって、観察するとその作業の状況が良く分かる。上手く直す者も居れば四苦八苦している者も居る。こうした状況は結構楽しくて、これも時代の変遷として受け入れほほ笑む事がクラシックモーターサイクルの世界だと思うんだな・・・そして、次はフロントのマッドガードにぺトロールタンクへと作業を進めよう・・・松枝


  

Posted by nunobiki_classics at 18:07作業中車両のプチ報告

2019年04月24日

TRIUMPH TROPHY SPECIAL 車検整備 大阪堺市M様 


布引ファミリーМ氏のトロフィースペシャル。この度車検整備致しました。


トライアンフのフロントフォークのゲイター・・・これは経年変化による劣化は避けられず定期的な交換が必要になる。4年持ったのも長い方、2013年にフルレストアしたМ氏のトロフィースペシャル。それでも中のスタンチョンにスプリングの美しい事。さすがはブルジョア倶楽部仕様でございます。


リアのライセンスプレートの上の取付部は振動による破損が多い。この車体後半の部分は特に振動が共振し激しく振られている。


で、溶接したものの、金属疲労を考え今回は交換する事に。この時、転写デカールのロゴマークを丁寧に貼ってやる事が大切。


今回、訳あってリアにFirestoneのなんとかって言うタイヤ入れてみたもののアウト。タイヤ単体は格好良いけれど、車体全体とがミスマッチ!バランス崩れちゃってます。


やはりこれですね。前はダンロップトライアルユニバーサルの3.25-19。リアは同じくダンロップのK950-19。皆さんもお試しを・・・


その他、基本的な整備をする事で事なきを得る・・・彼のトロフィースペシャルのようにフルレストアするなどして高いレベルで完成されたモノは6年経っても殆ど想定内に作業が収まる。走る時には常に出動できる、これは英国車を嗜む上で重要な要素なんです。


で、わたくしの愛車のシボレーK1500に積んで車検受けに行きます。


神戸の陸事です。因みに同じ大阪のTさんのホンダも一緒に車検受けました。このホンダGB500TTも、もう立派な旧車なんですね、しかしメチャ速いんです、コーナーもスパッと決まるし・・・モーターサイクルの楽しさに国境などない!分かりますね?


納車の後、布引ファミリーツーリング淡路島へ一緒に走りましたよ。となりはこちらも大阪のH氏のBSA A10。二人とも走るの上手なんです。大人のモーターサイクルライフ・・・イイ感じのふたりです。ツーリングの模様は→コチラ


このように、布引クラシックスでは車検に於ける定期的な点検整備作業を重要視しています。トラブルを起こしたくないなら必ず車検はレベルの高い店で見てもらう事が大切なポイント・・・皆さんが来てくれるオイル交換も単に交換するだけじゃない。 「なんとかさん、ここヤバイよ。直さなきゃ危ないよ・・・」とか言って皆さんの愛車の状態を隈なく観察し些細なトラブルをも防いでいるんです。トラブルから解放されない英国車難民の皆さん、本職の自動車整備士の意義を一度は考えてみては如何でしょうか・・・松枝

過去の作業→コチラ、過去の試運転→コチラ

  

Posted by nunobiki_classics at 21:41作業完成報告トライアンフ編

2019年04月21日

2019春の布引ファミツー「春の淡路島」行って参りましたよ。


今年最初の布引ファミリーツーリング・・・当日は兵庫北部が雨模様のため、再び淡路島に変更致しました。


今回は早めに昼食をとり、午後の走りに備える作戦・・・もうおなじみのあわじ市大磯港にある「渡船食堂」さんへと向かいました。


そしたら、なんと「本日解禁!あわじ名物生しらす丼」 って事になってました・・・朝一に行ったにも関わらず大勢のお客さんが来られてましたよ。


大衆食堂には欠かせないおかずの棚、好きなモノ選んで「チンッ!」します。(ここから3枚は2014年の淡路島ツーの時の写真です。)


都会の京阪神地区に住む我々の食卓には無い新鮮な魚はやっぱり美味いですね!


但し、店内狭いのと、女将さん声デカくて怖いのと上から目線的営業方針が・・・でもこれでイイんです、この荒々しさがまたイイんですよ。渡船食堂さんはコチラ、以前の渡船食堂さんはコチラ


今回の布引ファミツーのメンバーは、トロフィースペシャルのМ氏。ガンガン走る切り込み隊長。彼の作業はコチラ、試運転はコチラ


プロダクションレーサーのH氏。彼も走ります、放っておけばスクリーンに身を伏せてズッドーン!っと行ってしまいます。彼の作業はその1その2その3、試運転はコチラ


BSA A10RTのH氏。高級住宅街の帝塚山で大きな顔してる彼も走ります。「噂の全開ライダー」おとなしいA10に鞭を打ちこちらも勝手にズッドーン!と行ってしまうのです。彼の作業はコチラ


今回初登場のコマンド750SのМ氏。彼も乗り物好き、コマンド以外にも二輪四輪共にいろいろ持っていて、とにかく走るの好きなんですね・・・彼の作業はコチラ


そして最後にマツエダの5名。真ん中のが松枝のスペシャルコマンド。理不尽なアーリーコマンドを松枝のノウハウを随所に投入し楽しく走れるモノとなってます。エンジンは「ズッドーン!」 車体は「ズドゥーン・・・ズドゥーン・・・・・・シャーん☆彡・・・・・・ズバッズバッズバッズバッ!・・・」 だけれども英国車らしさはドンと居座っている・・・一見すると全くのスタンダードなんだけど、超快感マシンとなってますよ。(内容は㊙)
このような少数精鋭のハイレベルなメンバーで構成される布引ファミリー・・・走りも大胆且つ繊細なジェントルマン達・・・質の高い一日を過ごしました・・・

という訳で、皆さんも是非近場のショートツーリングとして兵庫県民の青春の島・・・淡路島を訪ねてみては如何でしょうか?・・・

※・・・次回は5月24日(金) 青い海を見に行きますよ。詳細はコチラ。では・・・2019年4月19日 布引クラシックス 松枝




  

Posted by nunobiki_classics at 13:21旅をして来ましたよ!